ババ抜き最弱王は誰だ

※兼さんと伽羅ちゃんとたぬきが打刀になる前のお話です

なるべく足音を立てないように私は同田貫達の部屋に向かう。
「同田貫、入るぞ」
と一言断りを入れ襖を開ける。
「あん?どしたよ?」
「主?何?」
同田貫と獅子王がこちらを見る。
和泉守はトランプとにらめっこ中だ。
「短刀達とかくれんぼ中だ、身を隠す場所が欲しい」
「構わねぇけどよ」
「主もやろうぜ、ババ抜き!」
「あー…どれだ?どれがババだぁ?」
和泉守は目の前のトランプに必死だ。
「じゃあ一戦付き合うから押入れ貸してくれ」
「聞いたな和泉守、仕切り直しだぜ?」
「勝ち逃げかよ同田貫よぉ」
などと言いながらトランプを切り始めた。
4人で1回ずつシャッフルして配る。
こうしている間にも鬼の秋田が来るのではないかと気が気ではない。
幸いにして私の手持ちは4枚。
ババもない。
私が獅子王のカードを引き、同田貫が私のカードを引く。
獅子王が相手ならまぁ楽だろう。
この子は結構表情に出る。
最初に抜いたカードはペアにならなかった。
同田貫が私のカードを引く。
これもペアにならない。
和泉守が同田貫のカードを引いた。
それはペアになったようだ。
獅子王が和泉守のカードを引く。
一瞬表情が凍りついた。
なんてわかりやすい子なんだ。
さて、これからは気をつけねば。
私がカードを引く番。
持っているカードを1枚ずつ引こうとして反応を見る。
さすがにもう表情を変えるような真似はしなかった。
というよりも、ひきつった笑みを浮かべたままなのだ。
極度の緊張状態がそうさせるのだろう。
ええい、ままよ!
ついっと1枚抜く。
なんとそれがババ。
もう、獅子王が露骨にほっとした顔をするからバレバレじゃないか。
私はカードをシャッフルしてにっこり笑う。
ババを持ってるのがバレてるなら、笑ったまま表情を変えなければいいのだ。
だが同田貫もなかなか手強い。
こいつは単純そうに見えて食えない勝負師だ。
さぁ、来い。
しかし同田貫が抜いたのはババではないカード。
しかもペアになった。
うぬぬ、やるな。
順繰りに回りその間に和泉守がペアを作り、獅子王もペアを作った。
おいおいやばくないこれ。
私含め各人順調にカードを減らした。
そして獅子王から引いたカードがペアになり私も1枚カードを減らす。
さぁ、どう出る同田貫。
同田貫は私の表情を観察している。
1枚、また1枚とカードにその手をかけて。
なるべく表情を変えないように。
さぁ、ババを引け!
願いが通じたのか同田貫はババを引く。
よっしゃあ!
内心ガッツポーズだが、まだ勝負は終わっていない。
同田貫の顔が険しくなる。
それで和泉守も察したのだろう、3枚のカードとにらめっこを始めた。
「私がかくれんぼ中だと言うことを忘れないでくれ」
「へぇへぇ、わかってますよ」
どーれーにーしーよーうーかーなー?と神頼みを始めてしまった。
君達だって神様でしょうに、と突っ込みを入れたかったが。
「ほらよっ!」
と、引いたのはどうやらババであったらしい。
和泉守もわかりやすい。
獅子王が引いたカードはペアになる。
それを私が引くと、獅子王が上がりだ。
「やっりぃ!」
ペアにならなかったので同田貫にカードを引かせる。
それがペアになった。
…やばい、負けるかも。
和泉守が同田貫のカードを引いて、私と和泉守の一騎打ち。
どっちだ…どっちなんだ…。
右手のカードについと手を伸ばす。
表情は変わらない。
左手のカードに手を伸ばすと、少し動揺したように見えた。
…これはブラフか?
引くのは…右手のカードだ。
えいと引くと、それはババではなかった。
ペアになったカードを捨てる。
…なんとか最下位は免れた。
「あああああ負けたあああああ!」
「和泉守わかりやすいな」
「だろ?いいカモなんだよ」
と同田貫が言う。
「この中だと一番勝率がいいのは同田貫か?」
「いや、獅子王だ」
「同田貫が一番勝負事に強そうに見えるがな」
「獅子王の場合運が良いんだ」
「なるほど、わかる気がする」
「ぶっちぎりの最下位が和泉守なんだ!」
獅子王が楽しそうに教えてくれた。
「楽しそうでいいな」
「まぁなぁ、時々御手杵や国広も来てババ抜きするのさ」
「それの中でも和泉守が一番弱そうに見えるのは何故だろう」
「…主容赦ねぇなぁ、間違っちゃいねぇんだけどよ」
「主さんよぉ、こっちに向かってくる足音が聞こえるが…」
「何?!同田貫ありがとう!じゃ!私は隠れるから知らぬ存ぜぬでよろしく!」
それだけ言って慌てて押入れに逃げ込む。
漏れ聞こえる声。
あれ?秋田じゃない?
「ねぇ、主知らないかな?」
この声は光忠だ。
出て行こうか迷っていたら光忠は続ける。
「見かけたら、かくれんぼ主の勝ちでいいからおやつの時間だよって伝えて」
そう言って光忠は去って行った。
もそもそと押入れから出る。
「…お前達も食べるよな、おやつ」
「あぁ」
「もちろんだぜ!」
「おやつ何だろ?俺みたらしがいいなぁ!」
そうして私達はおやつが待ってる厨房に向かったのだった。
ちなみにおやつはずんだ餅でした!
美味しかった!さすが私の光忠!
短刀達もかわいいけど、太刀達もかわいいなと思ったのは内緒だ。

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