15.5

時折思うのだ。
サキは何故こうも私に従順で、行為に対し積極的なのか?と。
以前、私に「捨てないで」と言って泣いた。
何をバカなと思ったが、だがそれが彼女がもっとも恐れていることだとしたら?
サキは私に見放されることを何よりも恐れているとしたら?
彼女は自分では気付いていないだろうが愛情に飢えた子供と同じだ。
常に私の愛情に飢えていると言っていいだろう。
だから私を喜ばせようと自分にできることは何でもしたがる。
私が多少無体を強いても拒まず受け入れる。
私は…サキのそういう従順さを利用して彼女を貪っている。
…悪い大人の見本だな。
サキを愛しいと思う気持ちに嘘はない。
だが私はズルくて身勝手な大人だ。
彼女を庇護し守ってやらねばならないのに、私はその真逆のことをしている。
罪悪感はない、あればサキの想いを受け入れはしなかっただろう。
愛しい愛しい養い子として育てただろう。
しかし…ああ、やはり抱くのではなかった…。
今更後悔しても遅いが。
彼女を愛しい気持ちと彼女を壊したい気持ちが同居している。
抱いてしまってからそれが強くなった。
愛しい…壊したい…愛しい…壊したい…。
愛しいから抱く。
壊したいから無体を強いる。
行為としては同じなのにどうしてこうも違うのか。
…ここで私は気付いてしまった。
愛情に飢えているのは私の方なのではないか?と言うことに…。
壊したい…そう思うのは彼女の愛情が手に入らないならいっそ壊してしまえ…。
そういうことなのではないかと言う考えに辿り着いてしまった。
私も自覚していなかっただけで彼女と同じか…。
充分とは言えないかも知れないがサキに想われているのにまだ足りないとは…ワガママだな。
腕の中のサキが身動ぎをした。
私は彼女の頬を撫でる。
サキは温もりを求めて私に擦り寄ってきた。
私はサキを抱き締める。
愛しい愛しいサキ。
こうして眠る彼女は私が考えていることなど想像もできないだろう。
いや、知らなくていい。
知られない方がいい。
知れたらきっと私は彼女に嫌われてしまう。
私は彼女に嫌われたくはない、彼女を失いたくはない。
私は彼女を失うのが怖い…。
もう彼女なしではいられなくなっている。
彼女がいなかった時の生活にはもう戻れない。
彼女がいなかった時の生活がどんなものだったかも思い出せなくなった。
依存しているのは私の方かもしれないな。
まったく情けない話だ。
サキに裏切られたら…考えるだけで恐ろしい。
私はサキに裏切られたらどうするだろう…?
激情に任せて彼女を手にかける…いや、手にかけることができるのか?
できないだろう…。
あの時の…雪比奈と同じように…。
だがもう同じ手は使えないだろう。
いや、それでいい。
雪比奈を切り捨てた時も痛かったのに…。
…彼女にも恨まれ憎まれるなんて…私には耐えられそうにない。
「うぅ…まさおみさん?」
どうやら寝呆けているわけではないようだ。
「起きてしまったんですか?」
「いま…なんじですか?」
「まだ夜中です、寝なさい」
「まさおみさんはねないんですか?」
「寝ますよ…だから貴女も寝なさい」
「おやすみなさい」
「…サキさん」
ややあって私は彼女の名を呼んだ。
「なんですか?」
「…いいえ…おやすみなさいサキさん」
「おやすみなさいまさおみさん」
私は言いたかったことを言葉にできなかった。
言えばきっと止まらなくなってしまうから。
私はサキの胸に顔を埋める。
サキの鼓動を子守唄にして私は眠った。

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