終わらない夢をみる


現実世界で、俺と土方さんは昏睡状態に陥っている。らしい。
詳しいことは知らないし知りたくない。だけど、不意に浮上した意識を、脳が拒絶した。
だから、俺とあの人は、まだ夢の中。


「ふくちょお、」

「てめえはその阿呆みたいな発音の仕方をやめれねえのか」

「んー、今は無理ッス」


此処には闇がなくて。花は散らなくて。人は二人、俺と土方さんだけ。
武州によく似た所だ、と土方さんはよく言っている。
此処では、命が消えない。
虫も、動物も、植物も、魚も、俺たちも。ずっと、ずっと生きていた。


「…この前、一瞬起きました」


縁側に座って、手を繋いで俺が言う。ポカポカ温かいこの場所は、俺のお気に入り。


「沖田さんが居てね。随分男らしくなってました」

「ほォ…?」

「局長は、いなかった。沖田さんは凛々しくなってて。色々聞きたかったけど、また此方に引っ張られちまいました」


チラッと見えた時計の日付は―――考えられないほど未来を差していた。
横に寝かされていた土方さんは昔より老けていて。
ギャップに付いて行けずに、此方に逃げた。


「此方じゃちぃっとも変わらないのに」

「…俺がジジィになったとでも?」

「まさか」


苦笑して、土方さんに抱きつく。すると、彼も俺を抱きしめてくれた。心地よい体温に、ホッと息を漏らす。


「もう此処にいろ」

「はいよ」

「愛してるから」

「…はい」

「二人だけの世界にいよーや」

「もちろん」

「…離れんなよ」

「離れませんよ」


こんな幸せな世界から誰が逃げるのだろう。
不思議なことを言う人だ、と俺はおかしくて笑った。

春の陽気な太陽の光が、俺たちを包んだ。




(終わらせたくないと言った方がより正確)
(きっと一生抜け出せない)





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