私は何故ここにいるんだろう。
ずっとずっと疑問だった。
この世界は酷く息苦しくて辛くて。泣いたってあの頃には戻れない。生きるのさえ嫌だった。でも、
「ほら、葵羽。あなたの妹の貞姫よ。」きっと彼女を救うためにもう一度この世に"生"を受けたんだと思う。
***
現代から豊臣の時代に生まれ変わって早数年。
毎日が地獄のようだった。
私の瞳を見るたびに向けられるたくさんの罵声や誹謗中傷。鬼の子だと罵られ泣くことさえ許されない立場だった。
転生する前は黒だった左の瞳。ただ今は碧色に染まっている。オッドアイ、現代でも珍しすぎる症例。それはこの時代の人間にとって畏怖の対象でしかなかった。
そして、跡取りのいなかった武家の家だったために、私は父の言い付けで、女ではなく男として育てられた。
「お前はただ、私の言うことを聞いておけばいい。お前のような気味の悪い奴をこの家に置いてやっているんだ。感謝しろ。」
『父様は、私の事が嫌いなのですか?』
「ああ、吐き気がするほどにな。」
父様は、私を忌み嫌った。
「ごめんなさい、葵羽。私があなたを普通に産んであげていればこんなことにはならなかったのに……。」
『いいえ、母様は悪くありません。きっと誰にも罪はないのです。』
「ありがとう、葵羽。貴方は何があっても私の大切な子。」
母様は、私を心から愛してくれた。
そんなある日、私に妹ができた。
それは私にとって何よりも大切でかけがえのない存在になった。彼女の名は、
ーーー貞姫。
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(2|12)