約束*喜八郎のバヤイ-01-
すぅっと意識が浮上する。
それと同時に俺の部屋に近づいてくる気配を感じた。
気配の消し方からして4年生か。
こんな早くからどうしたのだろう。
俺は上半身を起こし、くあっと1つ欠伸を溢してから布団から抜け出す。
布団を畳んでいれば、近づいていた気配が俺の部屋の前で立ち止まり戸を軽く叩いた。
「蓮夜さーん、入りますよ。」
声の主は、俺が返事をする前に戸を開け部屋の中に入ってきた。
『まだ許可はしてないんだが、喜八郎?』
もうどんな反応したらいいか、お兄さんはわかんないよ。はあ、とため息をついても喜八郎は素知らぬふり。
…あれ、スルーかよ。
「今日は約束を果たして貰うためにきました。」
『約束?』
「髪、弄らせてくれるんでしょう?」
うん、したねそんな約束。
しかしその為にこんな早朝から来るとは思わなかったよ。
『はあ、しょうがない。とりあえず着替えるからちょっと待ってな。』
いつもの忍装束に着替えようと寝間着に手をかけるが、そんなに見つめられたら着替えにくいんですけど。
いや、恥ずかしいとかはないよ。
ないけどさ、なんか着替えにくいでしょ。
『喜八郎〜。』
じと目で睨めば、ふぁ〜いと気の抜けるような返事をして少し目線を反らした。
ん、わかればよし。
「じゃあ座ってくださーい。」
着替え終えれば喜八郎が自分の座っている隣をぽんぽんと叩いた。
…なんか年下扱いされてない?あれ、気のせいなのか!?
『はあ、もういいや。』
なんか気にしたら負けな気がするよ、これ。
指定された場所にちょこっと座れば、喜八郎が俺の背に回った。そして下ろしている俺の髪に櫛を通していく。
「やっぱりさらさらで綺麗ですねー、蓮夜さんの髪の毛。」
『そうか?俺も喜八郎の髪、ふわふわで綺麗だから好きだよ。』
顔にかかった髪を耳にかけながら、ふふっと笑う。
『喜八郎〜?』
何の反応も返さない喜八郎を不思議に思い少し後ろに首を捻る。
だが、両手で頭を掴まれてぐりんと無理やり前を向かされた。
「ちゃ、ちゃんと前向いといて下さい!///」
『お、おう。』
いつもの喜八郎と少し違う少し反応に俺は吃りながらも指示にしたがった。
ってか頭いたいです、手ぇ離してー。
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