如月 冴雪 【28歳】 (きさらぎ さゆき)
元警視庁捜査一課・巡査部長 頭の回転が早く、冷静沈着。立場等関係なく意見をはっきりと述べるタイプだが柔軟性はある。淡々としているので色々と勘違いされやすいが正義感は人一倍で仲間思い。 とある事件での上司(主任)のミスを押し付けられ、神南暑に異動させられる。
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「は、異動ですか?うちに?」
安積の言葉に金子課長は唸って難しい顔をする。 何故、急に呼び出されたのか不思議だったが、金子課長の話に自分の耳を疑ってしまった。
「うーん……。彼女、どうもだいぶ大きなミスをしてしまったみたいでね、本庁からこっちに異動させられたんだよ。」 「…そうなんですか。でもいささか信じられません。彼女は捜一の中でもかなり優秀な人材でしょう?」
金子課長の言葉に安積は心底驚いた。 今話題に上がっている人物は、安積も顔見知りの警視庁捜査一課の女性。彼の知る限りでは、彼女は頭の回転が速く、冷静に物事を判断でき、なおかつ慎重な性格だった。詳しく知っている訳ではないが、合同捜査の時に一緒に仕事をして彼女の人間性は分かっていた。だからこそ大きなミスをしたと言うことが信じられなかったのかもしれない。
「まあ、私も詳しくは聞かされてないから何とも言えないんだけどね。」 「……そうですか。」 「まあ、とにかく明日から安積班に彼女、ーーー如月冴雪が配属になるからよろしく頼むよ。」
ぽん、と肩を叩いて去っていた金子課長を安積はただ呆然と見送った。
感情が読み取れないような顔で建物を見つめる女性が一人。すらっとした背丈で黒のパンツスーツを着こなしている彼女は、世間では美人と分類される側の人間だ。 彼女の名前は如月冴雪。今日からこの神南暑に異動になった元警視庁・捜査一課の巡査部長だ。 冴雪の視線の先には【警視庁神南警察署】の文字。しばらく立ち止まって見ていたが、彼女は前髪をかき上げて一つ深呼吸した後に警察署の中に入っていった。
「おお、来たか!待ってたよ。」
暑内に入り、受付に向かおうとした冴雪に声がかかる。声をかけてきたのは神南暑強行犯係のハンチョウである安積だった。
『ーーー安積さん。お久しぶりです。』 「久しぶり。」 『今日からお世話になります。』 「堅苦しいのは無しにしよう。うちに異動になった話は詳しくは聞かされてないんだが、まあ今日からよろしくな。」 『はい。よろしくお願いします。』
軽く挨拶を交わしたところで、安積は冴雪を強行犯係に案内する。今日も変わらず強行犯係の部屋からは楽しそうな5人の声が聞こえてきていた。
「おはよう!」 「「「おはようございます!」」」
安積が部屋に入るなりいなや、5人は挨拶を返す。ただそれだけのやり取りだけで、この安積班の仲の良さや絆の深さが伝わってくる。
「あれ?ハンチョウ、後ろの方は?」 「ああ、紹介するよ。今日からうちに配属になった如月冴雪巡査部長だ。」 『如月です。よろしくお願いします。』
黒木の言葉に安積は冴雪の前から少し退いた。注目の的となった冴雪は軽く頭を下げて挨拶をしたが、あまりにも無表情のうえに淡々としすぎていて安積班の面々の中で戸惑った空気が流れた。 しかし、そんな彼らを気にすることなく、冴雪は安積に自分のデスクの位置を聞いて椅子に腰掛けた。そして鞄の中からノートパソコンを取りだし机の上に置き向かい合った。
「……な、なんか、嫌な感じの人っすね。」 「まあ、な。」
桜井がこそっと呟けば、隣にいた須田も同意するように返した。
「そうだ、水野。如月は神南暑に来るのは初めてだから暑内を案内してやってくれ。」 「え、私がですか?」 「同性同士のほうが如月も気が楽だろう。」
安積はそう言ってちらりと冴雪の方を見た。すると、今までパソコンから外さなかった視線を安積にむけ、それから水野を見た。
「どうだ、如月。」 『では、お願いしてもいいですか?水野さん。』 「ーーーわかったわ。」
冴雪は椅子から立ち上がってありがとうございますと軽く頭を下げれば、水野は少しだけキョトンとした。そしてふっと笑う。なるほど、思ってたより悪い子じゃないのかもしれない。 そんな水野を見た安積は、優しく笑った。
「お前達、あからさまに態度に出しすぎだ。」 「「「…すいません。」」」
冴雪が出ていったのを見計らって、村雨が須田・黒木・桜井にそう言えば、彼らはばつが悪そうに謝った。しかし、3人も思うところがあるのか、謝ったのは良いものの不満そうな顔は崩さない。
「でも、あっちがあんな空気を作ったら、そりゃあこっちだって嫌な気分になりますよ。」 「須田さんの言うとおりです。」 「ぼ、僕もそう思います!」 「……………ったく、お前達は。」
須田の意見に賛同する黒木や桜井に村雨はため息をついて頭を押さえる。 子供みたいなことを言うな、と言いたかったが自分も初めて彼女と会って話したとき彼らのような意見を持った事を思い出し、口を開くことを止めた。 その時、宥めるように安積が須田の肩を叩いた。
「まあまあ、そんな風に言ってやるな。それに、思ってる以上に如月は良いやつだよ。」 「……はあ。」 「ははは、いずれ如月の事が分かってくるさ。なあ村雨。」 「時間はかかると思いますがね。」 「お前がそうだったようにか?」
ニヤッと笑った安積に村雨はひくりと頬がひきつった。 明らかにからかっている。ハンチョウは記憶力がいいからいつまでもネタにされるんだろうな、と村雨は諦めに似た乾いた笑みをこぼした。
「て言うか、なんでハンチョウと村雨さんは彼女の事知ってたんですか?」 「それは、如月が本庁の刑事だからだよ。」 「お前達はまだ会ったことは無かったか。」 「「え?……ええええ!」」
安積と村雨の言葉に驚きを隠せない3人だったが、先程の冴雪の態度を思い出して、どこか納得した。
「確かに本庁の奴らとどことなく雰囲気が似てますね。」 「だから、そんなに毛嫌いしてやるなって。」
安積はくしゃりと黒木の頭を撫でた。
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久しぶりにハンチョウ見て書きたくなりました。感情が表に出にくくて、勘違いされまくりのツンデレ主になればいいなあ。続き書く予定はありませんが(笑)
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