あー、頭が痛い。 なんだって私は巻き込まれてるんだ。喧嘩するなら他所でやってくれ。まじで。目の前で繰り広げられる一方的な口論にこめかみを抑えた。
『ねー、そろそろ帰っていい?』
てか帰らせてくれ。私関係ないじゃん。任務も終わったんだから、私は早く帰ってお風呂に入って寝たいわけ。
「ほら、ビショップが帰りたがっているぞ。」 「うるさい。大体お前はすぐに話をそらす!」 「話をそらしているつもりはないんだが。」 「元はと言えば、お前が僕の作戦を無視したからだろう!」 「咄嗟の判断だった。ああした方が上手くいった。」 「たがらって急に変えるやつがあるか!お陰で僕もビショップも戸惑った!」 「君達なら合わせてくれると思ったからだ。」
ちょっと、私のこと無視しないでよ。堂々巡りの口論は終りが見えない。ああ、いつ帰れんの。 車にもたれ掛かってまた煙草に火をつけた。足元に散らばる煙草の数で私がどんだけ待ってるのか察してほしい。というか、いい加減察しろ。
「お前らなにやってんだ?」
キキー、と派手な音をたててすぐ傍らに車を止めた彼の声はまさに今の私にとっての救世主だ。ナイスタイミングだよ、スコッチ。やっとこれで帰れる。
『ねえ、あれどうにかして。私帰りたいの。』 「ああ〜。さっきの作戦変更、相当ご立腹みたいだな。」 『スコッチなら止められるでしょ。』 「………はあ。しょうがない。」
1つため息をついて車から降りてきてくれたスコッチはやっぱり優しいわ。 因みにこの殺伐とした組織の中で、なかなか紳士的なスコッチの株は私の中で絶賛鰻登り中なんだな、これが。顔もわりとタイプだし。
前世の記憶という摩訶不思議なものがあるお陰で、スコッチが公安のノックだってことは知ってるけど、それはそれ。かっこいいのは正義だもんね。 どうにかしてスコッチの死ぬ未来変えたいなあ、とか思ったり思わなかったり。 組織に目をつけられるのは勘弁だしなー。
「バーボン、それくらいにしとけ。」 「…スコッチ………。」 「ライも煽らないでくれ。」 『そうだー、そうだー。』 「ビショップも棒読みの茶々いれない。」
ビシッと指を指された。むう、いいじゃんそれぐらい。こっちは被害を被っている側なんだし。
「今回のことはもういいだろう。その代わり次はちゃんとしてくれよ、ライ。」 「ああ、わかった。すまなかったな。」
よっしゃ、やっと帰れる。マジでありがとう、スコッチ。前世で原作見てた時から思ってたけど、バーボンのライ嫌いは酷いもんだね。スコッチが死ぬ前からこんな感じだったってのは知らなかったから、初めて任務を組まされた時に驚いたもん。
『んじゃ、ジンに報告上げて帰ろうか。』
後部座席に乗って、早くと運転席を指差した。そう、私が帰れなかった理由は今回の任務で出した車がバーボンのだったんだよね。自分の車ならライもバーボンも放置して帰ったのに。 今度からウイスキートリオと組まされたら絶対自分の車乗ってこなきゃ。私は残業しない派です。
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