生まれながらの半喰種さんの女の子。 人肉しか食べれないよ。エトさんみたいにお父さんが喰種でお母さんが人間。
せっかく両親からもらった命を奪われたくはないから、殺されたくないから、喰種にも人間にも深入りしません。傍観に徹する子。感情的にならないように、左右されないように、悲しみとか苦しみとかとうの昔にポイっと川かどっかに捨てました。
『んふふ、どっちが化物か分かんないね〜。』
くすくす、笑えば頭の中で「そうね。」と"彼女"が返してくる。 死闘を繰り広げる白鳩と喰種をビルの屋上の鉄柵に座って見下ろす。最高の特等席。観客は私だけ。
また、一つ二つと命が消えていくのを私はただ黙って見ている。だって、死ぬのは嫌じゃない。誰だって一緒なの。だから私は見てるだけ。助けになんていかない。 たとえ今戦っている喰種が"親友"と呼ばれる人物だとしても。
ただ、最後まで見届ける。 その命が終わる、最後まで。
『………あ、』
また一人、喰種が死んだ。 "彼女"の同胞がまた一人世界から消えた。 たった一人の私の親友が消えた。
ほろり、流れた一滴の涙は"彼女"が流したのだろうか。"彼女"は喰種のくせに優しい。人間の私なんかより、よっぽど優しい。私はなにも感じないのに。
親友は最後、何を思って死んだのだろう。 親友を殺した白鳩が使っていたクインケは、親友の妹の"モノ"だった。 絶望のまま死んだのだろうか。それともやっと妹の元に行けることを喜んだろうか。私には分からない。分からないままの方がいい。 だって分かってしまったら、白鳩を殺したくなる。そしていつか親友や同胞のように殺されてしまう。そんなの嫌だ。私は死にたくない。
この世界は理不尽だ。 たまたま人間に生まれただけで、綺麗な道を歩くことができる。たまたま喰種に生まれただけで、修羅の道を歩くことになる。 人間が牛や豚、他にも沢山の生き物を食べなければ生きられないのと同じように、喰種も人間を食べなければ生きていけない。何が違うのだろう。他の生を奪って、生きているのはまったく同じなのに。
人間も喰種もおなじこの世界に生まれた生き物なのに。
「互いに理解しあうことは無理なのかな。」 『……無理だね。』
"彼女"の問いにそう返したけど、私もどこかでそれを望んでいる。私や"彼女"のお父さんとお母さんがそうであったように。いつか、いつか……。
『私は人間。でも喰種が好き。』 「私は喰種。でも人間が好き。」
『「私達はどちらも愛してる。」』
だから、干渉しない。ただ傍観しているだけ。何があっても。だって、好きな人達に殺されたくないもの。……憎みたくないから。
『ばいばい。』 さようなら、私の親友。 どうか安らかに眠れ。
『「この世界は悲劇ばかりだ……。」』
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