雲外蒼天-天女編- | ナノ


▼ とあるくのたまの告白-01-


突き刺さるような痛い視線がなくなり、その代わりに堂々と武器を向けられるようになり早数日。
俺の心労は減ることは無く、どんどんと積み重なっていくばかりだ。

「蓮夜さーん、」
「お待たせしましたぁ〜。」

ぱたぱたとかけてきた久作と怪士丸から熱々のお茶を受け取る。ありがとう、と一言返してずずっと飲めば体の芯から暖まった。

『なあ、きり丸の様子はどうだ?』
「あー……、まだ本調子ではないみたいですけどあいつらがついてるし大丈夫だと思いますよ。」

久作の言葉にふうっと息を吐いた。
ああ、全く。天女様の頬を一発叩くだけじゃ足りなかった。そう簡単には割り切れないよな。過去のトラウマをかき乱されたのだから。

「……きり丸のことも心配ですが、でも僕は蓮夜さんの方が気掛かりです。」
「……っぼ、僕もです〜。」

向けられた眼差しはとても真剣な色を帯びていて、俺はふっと口角が緩む。本気で言ってるんですよ、なんて少し怒る久作達に俺はごめんと謝るが、自然とどんどん口角が上がっていくのは止められなかった。

だって嬉しいんだ。

こんなにも殺伐とした学園の中で、挫けず輝く光が目の前にいる。苦しくても、辛くても、泣いても、諦めずにまた前を向く。この子達の真っ直ぐな想いが、いつだって俺に癒しと力をくれるから、

『ありがとう。大丈夫だよ。』
今日も頑張ろうと思えるんだよ。

「全く……。」

貴方って人は、と悲しそうに呟いた久作の言葉は俺には届かなかった。届いたとしても現状を変えることはなかっただろう。

「あ、そういえば…!」
『どうした?』

ふと、思い出したように声をあげた怪士丸に俺は首を傾げる。
くのたまの子からの伝言を預かってたんだ、と言った怪士丸にますます疑問が浮かんだ。この間の天女様との一件に関してなら、既にくのたまを統括している6年生の学級委員長から謝罪と御礼は聞いたんだけどな。

「くのたまの5年生の人が、…蓮夜さんとお話がしたいって、ユキちゃん経由で乱太郎から聞いたんです〜……。」

くのたま5年、か。
特別仲が良い子はいないけれど、一体誰だろうか。それに話とは何だろう。考えてもどうせ埒はあかないし、さっそくユキちゃんに会いに行くかな。



『ユキちゃん発見。』

すたんっと廊下に降りた先にいたユキちゃん、トモミちゃん、おシゲちゃんは突然の俺の登場に可愛らしい悲鳴を上げた。

「「蓮夜さん!?」」
「びっくりしたでしゅー!」

そんな3人に俺は可愛いなぁ、なーんて心の中でにやにやが止まらない。本当に、女の子は可愛いし愛くるしいし目にいれても痛くないんじゃないかな。
ああ、天女様は別ね。あんな醜くて汚くて卑しい奴はこの子達に似ても似つかない。もはや、"女の子"と言う部類にすら入れたくないね。

『ねえ、ユキちゃん。俺と話がしたいって言ってる5年生がいるって聞いたんだけど。』
「ああ、そうでした!藤香先輩が2人で会いたいって凄く真剣な顔で言ってたんです……。」

くのたま5年生の藤香ちゃん、ね。
知ってるって言えば知ってる。でも関わりは忍たま達よりなかったはずなのに。突然2人きりで会いたい、か。一体どうしたのだろう。



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