分かってる


ボテッ




中身の入ったペットボトル。



ソレは、名前の手から離れ
重力に逆らうことなく鈍い音をたて、

俺の部屋のカーペットに落ちた。




『は、はち・・・・』




「あ、名前。」



動揺を隠せない名前に、冷や汗の止まらない俺。

しかし、状況を理解していない兵助のみ
のんきにも部屋の入り口に立ち尽くす名前に視線を向けた。



「お、落ち着くんだ名前!!別に、そうゆうんじゃねぇから!!」



そうゆうんってどういうんだ。

自分でもわけの分からんことを口走るほどに俺は焦っていた。



名前は目の前の光景にただ口をハクハクと魚のように動かした。
そんな名前の姿に首をかしげる兵助は

今、俺の下にいる。


ずばり言おう。




はたから見れば俺が兵助を組み敷いているように見えないこともないのだ。



『た、確かにハチは兵助と仲が良いとは思ってたけど・・・そんな・・・まさかっ』




一応言っておくが、断じて俺と兵助は名前が思うような関係ではない。
断じて違う。



ならば、どうしてこんな状況になったのかといえば・・・


所謂プロレスごっこの成れの果てである。


「このやろ〜」


見たいな感じで遊んでただけなのだ。

ソレが不幸にも、俺が兵助に技をかけた時

バランスを崩した兵助が思いっきり倒れ、ソレに引っ張られるように俺も倒れこんだ。




兵助の上に。



そして更に間の悪いことに
そんな状況の中
家が隣の幼馴染である名前がノックもなしに俺の部屋の扉を開けたのだ。


少々妄想癖なところがある名前は瞬時に誤解したのである。




『私、全然二人のこと知らなかったっ・・・』



しまいには名前のその大きな瞳にうっすらと涙の膜がはる。


「待て待て待て!!名前誤解だって!!なんかお前すげぇ妄想してるだろ!!」



「そうだぞ名前。俺とハチが仲良いことなんて、今に始まったことじゃないだろう。」



『!?もっと前から二人はそう言う関係だったの!?』



何をそんなに驚いているんだと、

俺の下から抜け出した兵助は不思議そうに眉を寄せる。



な、なんて空気を読まない余計なことを言ってくれたんだ兵助!!



「どうしたんだよ名前。この前だって俺とハチで飯とか食いに行ってたじゃん。」

『えっ!?』


「兵助ェェェ!!頼むからお前もう何も言うなぁぁぁぁ!!!」




知らない。

知らないのだ名前は。



普通うに考えて、俺と名前は恋人ではないわけだから
誰と飯食いに行くなんて伝えなくてもいいはずだ。


しかし、その日は俺の両親も名前んとこの両親も帰宅が後れるとのことで
俺と名前の二人分の晩飯をまかされたのは名前だったのだ。


しかし、兵助に飯を誘われた俺は急遽そっちへ行くことに。

しかも、待ち合わせ時間に遅刻しそうで急いでたため
晩飯のいらない理由を名前に適当なこと言って家をでた。



別にどうってことない話なのだが、こと今においては頭を抱えたくなるほどの苦い話題である。


当たり前だ、今この誤解を生んだ状況でそんなことを口にすれば
俺が兵助と二人で会うことを名前に知られたくなかったから
伝えずに家をでていった・・・


的な展開になってしまうことは火を見るように明らかだった。


お、俺はどうすればいいんだ!!



『うぅ・・・グスッ・・・』



「えぇぇぇ!な、何で泣いてんの!?」


切実に誰かに助けてほしかった。
この状況を、誤解をといてくれ!!


『は、ハチがゲイだったなんて・・・し、しかも相手は兵助!?』


「だからちげぇってば!!」



『いくら男とはいえ、頭脳明晰、眉目秀麗の兵助に勝てるきがしない・・・』



「だから!!・・・って、・・・・は?」



『私、ハチのことずっと好きだったのにぃぃぃぃ!!兵助の馬鹿ぁぁぁ!!』




グズグズと鼻を鳴らす名前は、座り込んでポカポカと兵助の胸板を叩く。

泣きべそをかいた名前に力が入るわけもなく
まったく痛くも無い兵助も少し目を見開く。



お、お前・・・


この状況でそんな告白は・・・



「無いだろ・・・」


あんまりな状況なのだが何故か口元が盛大にゆるんでしまい
顔に熱がこもるのが分かった。

お、俺は嬉しいのか?


早く脈打つ俺の心臓は、名前への思いを告げていた。



「っ名前!!俺も!お前が!!」


『分かってる!!もう、・・・もういいよ・・・ハチ、兵助と・・・幸せにね・・・』


「あ」



名前は、少女マンガに出てくる主人公のライバルよろしく
少し目に涙を浮べたまま、立ち上がるとシャララララという効果音とともに俺の部屋を出て行った。



「ま、待てよ!!」



慌てた俺は叫んで名前を呼び止めるが


『分かってるから・・・ハチの気持ちはもう・・・』



いやいやいや!!

お前ぜんっぜん分かってねぇじゃん!!

俺はお前が好きなんだよ!!
















かってる


(分かってない!!全然分かってない!!)

[ 4/4 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -