ジュード視点
ジルニトラ


「あれが、本当にマクスウェルなのか?」

ミラたちが来てしまった。

「少なくとも私の知るマクスウェルが一人の人間に依存するなどあり得ない。」

僕なんかのために血を流して、必死に呼び掛けて、もういいよ。やめて。みんなを傷つけるくらいなら僕はっ。

「世界を思いながら冷たい決断を降す。それがマクスウェルだった。」

……ミラは。

「違うか?」

ミラはいつだって精霊と人を想っていて、平気で自分の心配を忘れて、そんなミラだから僕は。ミラのために僕は。

「変わったな。」
「えっ?」

僕を覆っていた氷が砕け、真っ暗だった世界が白に戻った。

「あれはもはやマクスウェルではない。だが、間違いなく彼女の意思は、姿勢はマクスウェルそのもの。そして、人だ。」
「人…?」
「君を思う心は人に触れ、人から得たものだろう。その心が彼女の中にあるかぎり、私は君に力を貸す。」

再び僕を覆った氷に冷たさはなく、暖かい。体の奥から力が溢れる感じがする。

「行け。アルクノアを止めろ。」

セルシウスに背中を押されるといっきに意識が浮上した。


















「目を覚ませジュード!」

ミラの声に体が強張った。体の制御はまだ完全に僕に帰ってきた訳ではないらしい。だけど、動きを止めることぐらいは出来る。

「!。手を止めるなっ、セルシウス!」

ジランドの言葉に反応する様に体が軋む。それでも、梃子でも動かない。もう僕は、仲間を、ミラを、

「ぼ、く…はっ!」
「ジュード!」

みんなが、ミラが、僕を呼んでる。
視界の端に写っていた仲間はボロボロだった。

(ジランド、セルシウスだけのせいじゃない、僕がやったんだ…。)

操られてました、ごめんなさい。そんな話じゃない。見捨ててくれてよかったんだ。僕のミスでこうなって、沢山傷つけて、沢山苦しい思いをさせて。みんなが傷つくのを見るくらいなら僕が、そう思っていた。
でも、みんなは、今僕を呼んでくれている。
謝りたい。今はそれだけでいい。
僕に謝罪の機会をください。

「っぁああ!!セルシウス!!」

氷の魔方陣が僕を包みこんだ。パキン、と砕ける音が響いた時には膝をついていた。

「っ!?」

床に転がる制御盤の欠片を見つめてジランドが二、三歩と後ろに下がった。

「制御盤を氷で覆って砕いただとっ!?ありえねぇ!何故だ!?」

乱れた息を整えて立ち上がる。みんなが息を飲むのがわかる。まだ怖くて顔をあげられない。視界の端に映るミラの足を見つめる。すっと動いた気配に強く目を瞑った。

「ジュード」

柔らかく抱き締められた。呼んだ声は少し震えて聴こえた。
たったそれだけだ。
目尻が熱くなり涙が溜まり、言葉を紡ぐ瞬間に流れ落ちた。

「ご、めん。僕は!みんなをっ」
「いい。君が無事だった。それだけでいい。だから…」

涙で濡れる頬を包まれたかと思えば思いっきりつねられた。

「みっミファっ!?いはいよっ!!」
「謝罪は無しだ。私たちの苦労を水に流されたようで癪にさわるっ」
「ごっごへんなふぁいっ!!ごめっ」

頬が解放された瞬間、今度は強く抱き締められた。首にかかるミラの吐息が熱い。

「感謝だけだ。それでいい。」

止まっていた涙が再び流れ出す。ミラの背中に手を回した。その温かさに涙が止まらなくなった。

「あ、りがとう」

それでいい。そう言ってミラが微笑んだ。









01














――――――――
ジュード君無事救出。
パラレルなのでここからの展開が本編とは完全に変わります。
お暇潰しにでもどうぞ。



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