08

ヴァリアーから電話が入った。
電話をつなぎ受話器を耳から遠ざけ代わりましたと告げる。
耳から遠ざける判断は間違ってはいなかった。
超直感、ではなく経験だ

「うお゛おぉい!!!!!」

遠ざけたこの距離でも鼓膜が破れそうな音量
もうやだ、電話切ってしまいたい。
その意思が伝わったのか、そうじゃないのか。

「よく聞、っ!!!」

プツ─・・・プープープー・・・・

一瞬にして通話はあちらから切れてしまった。
いやいやいや、何を伝えに電話したんだよ!
予想するにザンザスが何かを投げつけた衝撃で誤って電話が切れたのだろう

──嫌な予感がする

こういうときは避難しておいたほうがいい。
これも長年培った経験だ。
しばらく目立たないところでひっそりしてやり過ごそう。

電話が切れて15分ほどたって城が破壊される爆音が聞こえてきた。
まるで敵が攻めてきたかのような・・・・
まぁ味方というわけでもないんだけれど。
殲滅しにでも来たのかとつっこみたくなる暴れ具合。
避難しておいて本当に良かった、と安堵の息をついた。
うまくやり過ごして、諦めて早く帰ってくれ。
きゅっと目をつぶった直後、背後で足音がした。

「あ、すみませーん」

気の抜けたような喋り方をするローテンションな少年。
きれいな翡翠色の髪に目をやってから頭を見て固まった。
なんだあれ、罰ゲームでもしてるわけ!?

「あのー、ミーの本体はカエルじゃなくてこっちなんでー」

そう言ってカエルの少年は自分の体を指差す。
見たところどうやらヴァリアーの一員みたいだ。
げ、やっぱりヴァリアーかよ!
でも初めて見る顔だなぁ、もしかして新入り?

「ミーのセンパイたちどこ行ったかご存知ですかー?」

初めて来た可愛い後輩置いてどっか行っちゃうなんてひどいと思いませんか?
そう尋ねられ、そうだね、とあいまいに返す。
やっぱり初めてってことは新入りなんだ。

「えっと、君は?」
「つい最近霧の幹部になったばっかのフランっていいますー」

えぇ、こいつ幹部なのかよ!
話を聞くとカエルの少年を紹介しにヴァリアーは来たらしい。
どう接したらいいのか分からず、とりあえず愛想笑いを浮かべていると少年の目が光った気がした。

「逃げなくていいんですかー?」
「え・・・?」
「知らないふりしてましたけどミーだってヴァリアーですよ、10代目?」

居場所ならのんきそうな守護者の1人が教えてくれました
それに写真見たことあるんで知ってますよーと、付け加えた
ツナの顔が青ざめていく様子をフランと名乗る少年はカエル帽を叩いて報告した。

「10代目発見しましたー」

冷や汗を流しながら脱兎のごとく駆け出したツナの背中ををフランは満足そうに見つめていた。
新入りだからってナメてた!
そりゃ俺の顔くらい知ってるよね、普通に考えて!!
それにさっき言ってた守護者とか絶対・・・・!
俺が逃げてるの分かってるはずなのにしっかりしてくれよ

逃亡もむなしく10分後ツナは捕獲されたのでした

(うちの大将が1番へっぽこですねー)