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私は沢田くんを助けたいの、そのためにはどんな危険も恐くない!
そのためにはクロームちゃんの力が必要。
フランの力も必要、だから──!
びっくりした顔でこっちを見てるフラン。
でも今は呆然と立ち尽くしてる場合じゃない!!
廊下を闇雲に走り回って足音から逃げる。
逃げる、けど・・・・・・・
後ろからも大勢の廊下を走る音、前方からも黒い服が姿を現す

「はさまれたっ・・・!」
「これだから一般人はいけませんねー」

前を走っていた@@@の一歩先に進み出るフラン
不敵な笑みを浮かべる横顔は妙に楽しげで、いつもより頼りになりそうで。
フランが指輪を嵌めた途端、床に亀裂が走った
びきびきと音を立てて廊下が割れて、これって・・・

「美姫!見ちゃ駄目!!」
「う、わっ」

パッと目隠しをされて何が起こっているのか全く分からない
足元がぐらぐら揺らついて、クロームと共に地面へ座り込んだ。
フランの話でいくと私は幻覚を目にするとそれを無効にしてしまう能力があるらしいから
きっとその影響のせいだろう。

「行きますよ」
「美姫っ」

グイッと両手を引っ張られて・・・っ!!
この浮遊感は最近味わったことのある、飛び降りだ!
風を感じる、それはもう全身で。
このままの勢いで落下すれば確実に叩きつけられるはずなのに
やっぱり着地はふわりとしたもので先程の速さが嘘みたいだ。
上を見上げれば黒服も窓の冊子に足をかけていた。

「い、急ごう・・・!!!」

東館の土地勘があるフランを先頭に校舎の外を逃げ回る。
あの角を右に曲がって突っ走れば、確か東館の校門に出るはず
一般道路を挟んで本館だから下手に黒い服たちも手が出せない!
これなら、撒ける!!

「何やってんだよ、カエル」

あの角を、あの角を曲がれば・・・・
さらりと揺れる光を集めたような金色の髪にティアラ。
全身で王子だと物語る風貌の男子生徒がフランに向かってナイフを投げた。
その速さが尋常じゃなくて、私が目で追えたのは奇跡に等しい。
そしてそのナイフはフランの背中に音を立てて刺さった。

「な、大丈夫フラン!?」
「心配ないですよー。この人も分かってやってますし」
「チッ。やっぱし死なねー」

カエル、と呼ばれていたところやフランの反応を見るとお互い知り合いのよう。
一体この人は何者なんだろう?
平然とナイフを投げつけるような人だ。
気を抜かないことに越したことは無い、たとえ意味が無かったとしても

「で?お前何してんの?」
「ミーは不本意ながらここに居るんですー」
「ししっ、ボス殺しの罪がかかってんのに余計疑われるぜ」

ボス殺しってザンザスさん誘拐事件に関係あるんだろうか
って、殺しってどういうつもりなの!?

「まっ、俺もお前がそんなことしたなんてこれっぽっちも思ってねぇけど
 スクアーロが言うには保険だってよ」
「なーるー。でもそれにしてはあの監禁はひどいですよー
 精神異常を起こしてもおかしくないですー」
「──!隠れてろ」

いきなりそう言われ急いで茂みに飛び込む。
先程の追っ手がきたのだろうか?
黒服たちは王子様チックな人の前で一斉に整列して跪く。
頭を下げているし、本当に王子様なの・・・?

「ベル様!フラン様は2人の侵入者と共に脱走されました!
 今、追跡を続けているのですが・・・・」
「見失ったんだろ?俺が殺るから帰っていいぜ」
「ハッ!・・・え、」

無言の王子様、有無を言わせないその様子に部下であろう黒服たちはしぶしぶ去っていった。
もしかして見方?とか
でもさっき“殺る”って・・・・

「どういうつもりなんですかー」
「俺に隠し事してんだろ」
「そりゃー人間隠し事くらいあるじゃないですか」
「うっししし!俺も混ぜろよ」
「え、は?」

(切り裂き王子が味方に加わった)