15

扉は一つで窓はなく、外に出れるのは1箇所だけ。
今が朝なのか昼なのか、はたまた夜なのかも分からない。
あれから何時間、いや何日経った?
電波は遮断されていて充電だけが減っていく
部屋に入れられる直前に届いたメール
ただ広いだけの空間には必要最低限のものしか置かれていない
不自由なく生活はできる、できるけど、どこか窮屈で無性に虚しくて。
退屈というものは人を殺すことができるとはまさにこんな状態だろう

<私は六道さんに会う覚悟、もう出来たよ>

よし、そうなら今すぐ行こう。
そう返信したいし行動に出たい
圏外と表示されたモニターのせいでSOSは送れない。
ケータイに表示される時刻はいつ見ても00:00で止まっている
ちなみに日にちは1月1日

初期設定かよー・・・・

今日──違う。もう1日がリセットされたなら
昨日から何回ため息をついて天井を仰いだか数えきれない。

これは精神的にやられますねー。

ヴァリアーの連中はいつまでミーを監禁しておくつもりだろうか
きっとそれは、ボスが見つかるまで。
その間はどうやって師匠もどきを倒すか作戦を練り直そうかなー
ポジティブでいこう、と軽く目を閉じた



「樫原さーん」

お昼休み気まずいながらも京子ちゃんと花ちゃんとご飯を食べることになった
いや、あの空気じゃ断れなくて!
え・・・来ないの?みたいなそんな雰囲気で!
そのままズルズル居座り続けて2人の話に
愛想笑いを顔面に無理矢理貼り付けている最中だった
教室の入り口へ顔を向けるとクラスメートの1人が
おいでおいでをして立っている
その横にはクロームが隠れるようにして待っていた

「美姫ちゃん、クロームちゃんとお友達なの?」

こてん。と、首をかしげる京子は可愛らしいもので
何も知らない頃の自分なら素直に微笑みを浮かべれたかもしれない。
でも今じゃその笑顔の裏に何かあるんじゃないかと思ってしまう
うん、そうなのと、軽く会釈してからクロームの元へ駆け寄った

「どうしたの!?」
「実は・・・・・」

クロームちゃんもフランからの連絡がこないのを不審がっていたようだ。
私を巻き込むのは危ないと思ってくれたらしく、1人で調べ上げたらしい

「そんなことできるの!?」
「うん、がんばった」
「そっか!それで・・・フラン、は?」
「・・・・・・謹慎」

え、こんな大事な時期に学校で問題でも起こしたの!?
はぁ!?と、叫びたくなったが心の奥へしまいこむ

「謹慎って・・・・なんで?」
「ザンザス誘拐の罪に問われたらしくて」
「誘拐?フランが?」

ってかザンザスって誰だろう?
よく分からない話だけどフランがやばい!ってことは分かる
自宅謹慎ってレベルじゃないし。

「助けに行こう!」
「えっ・・・・」
「そりゃ、最初は私達を殺そうとしたけど混乱してた時だった!!
 だから多分悪いやつじゃないよ!そんなことしない!!」
「美姫・・・・」

一瞬悲しそうで泣きそうな顔をしたクローム。
すぐに打ち破るようにはにかんで、フランのいるだろう場所に足を進めた。

(彼の手はとっくに真っ赤に染まってるのに)