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教科書と筆箱をまとめて鍵を手に持ち教室を出た
誰も居なくなってがらんとしている
このまま誰も居なくなったらいいのに
そんなことは出来ないと知ってて
現実に嫌気がさしため息をついた
カチャリと音を立てて鍵が閉まったのを確認して
科学室に向かおうとした、けど・・・
それはいずこに・・・?

ちゃんと聞いてくればよかったー!!

あぁどうしよう!と、慌てていると
背後から足音が聞こえた。
振り返れば綺麗な長い髪に鼻筋が整った
背の高い外人女性が立っていた

「あなた、サボリ?」
「えっ?あ、転校してきたばっかりで
 科学室の場所が・・・分からないんです」
「あらそうなの?ついてらっしゃい」

そう言ってフッと口元を緩める
わぁ・・・・すっごい綺麗。
本当にここの学校どうなってるの?
マフィアじゃなくて芸能人の事務所って
言われてもなんの疑問も持てないくらい!!

「私の顔に何かついてる?」
「いっ、いえ!!ただ、美人だなって」
「気に入ったわ。名前はなんていうの?」
「えっと、樫原美姫です」
「私はビアンキよ。ここで教員をしてるの」
「きょ、教員!?若ッ!!」

ビアンキ先生にはリボーンさんって言う
恋人が居るらしい
きっとこんなに綺麗なビアンキ先生の彼氏さんも
ものすごく格好いい人なんだろうなぁ
それに、話してるときのビアンキ先生は
とても楽しそうで嬉しそうで・・・・
幸せいっぱいの表情が印象的な優しい先生だった
でも、その裏に隠れた顔を私は近々知ることになる

「送ってくださってありがとうございました!」
「困ったら遠慮せずに聞くのよ、美姫」
「はいっ!!ありがとうございましたっ」

手を振りながら去っていく後姿は
大人な雰囲気を醸しだしていてとても格好よかった
私もあんな女性になれたらいいなぁ・・・・


今はヴェルデ先生の化学の時間。
先生は実習が好きでよく理科実験室い移動して行っている
そういえば・・・・樫原さんまだ来てないや。
もしかして迷っちゃってるのかな?

「おい」

煙草のにおいが鼻腔をくすぐる
この香り、この声、知ってる・・・・懐かしい優しくて怖い人
一言かけられただけなのにビクリと肩が揺れる
振り返るのが恐い、でも・・・振り返らなかったら
もっとひどいことをされてしまう・・・・
俺に迷ってる暇なんてなかった
気がついたら肩をつかまれて思いっきり引っ張られた
いきなりのことでバランスを崩し床に投げ出される
恐怖に脅えた瞳が捉えるのはやっぱりあの人

「獄寺、くん・・・・」

ニヤリと笑った表情にゾワッと鳥肌が立つ
その隣には山本も居る。
何を、たくらんでる・・・・?
今まではこんなことなかったのに。
俺たち友達だったよね?
あんなに笑顔を向けてくれたのに
今じゃその面影は、ない・・・

「今日の実験はー・・・・・」

先生が何かを言ってるのが近いのに遠くで聞こえる
俺の頭の中を通過していって全く耳に入らない
でも、獄寺くんの手に握られている液体と
先生の声がリンクして、頭が真っ白になった
たぷん、と揺れた瓶の中の液体。

「実験では危険なのでうすい塩酸を使用する
 間違っても原液を使うなよ。
 かかった瞬間、溶 け る ぞ 」

(それ、実験用具なんだよ?)