05

電気のついていない畳の広い部屋に
ぼうっと淡く光るのは窓から差し込む月明かり
カーテンが風で揺れるたびに自分の顔も照らされる
まだ意識はまどろんでいるけど視界は狭くない
狭く、ない・・・・・
両目でしっかりと景色を見てる。
世界を、見てしまっている。
パッと右目を自身の手で覆い視界を狭めた
辺りを見渡しつつ手探りで眼帯を探す

「眼帯がないと、見えちゃう」

恐 い も の が
自分が人とは違う 変 な 子 になる
枕元においてあったのを見つけて手を伸ばした。
塞ぐものをなくした目は自分の意思とは勝手に映し出す
背後で蠢いている奇妙な影を。

「──ッ!」

思わず声を上げそうになった
喉の奥で飲み込んだ変わりに小さく息が漏れた
これは確実に人ではないだろう。
眼帯をつけてしまえば見えなくなる
眼帯をつけてしまえば分からなくなる
目で見えれば相手の出方によって防ぐことが出来る
でも姿がトラウマ級なのもいるから極力見たくない
慣れてしまえば楽なのに、それが出来ない。
大概の妖怪は見た後震えが止まらなくなるようなのが多い
振り向くのも目をつぶるのも両方恐い
どうしたら、いいのかな・・・

─タン、タン、

ビクリと肩を上下させた
下の階から階段を上る音がする
もしかしたらこれも妖怪かもしれない・・・
というかそもそもここはどこなんだろう
え、妖怪の巣窟にでも招かれた感じなの?
変に心臓はバクバクして、手は気持ち悪いくらい湿って
振り向いてぶん殴って逃げ出す勇気が無い自分にもムカついて
耳を塞ぎ目を硬くつぶって枕に顔を埋めた

もういっそのこと私のこと食べちゃってよ

そうすればこんな震えを我慢する世界から居なくなれるし
泣きたくなるものを見ることもないし
恐怖を経験することもなくなるでしょ?
シーツみたいに真っ白で何も無いところに行きたい

「目が覚めたみたいだな」

優しく問いかける口調と瞼から差し込む
電気特有の眩しさが私を包む

「こら先生!いきなり電気つけるなよ」

ごめんなって謝罪が聞こえて
温かい豆電球にぱちぱちっと切り替わった
その後なかなか起き上がらない私を心配して
肩に乗った手のひらは体温の低い人だった

(妖怪じゃなくて、人だったの?)