夜空の下。月光に晒され煌めく銀色の髪を持つ少女、抜け忍であり罪人であり現在は脱獄者にまでなったカナは、とある場所で足を止めていた。
火の国に因んだその形に、"火影"と書かれた石盤。かつて木ノ葉の長であった者たちが眠る石碑。
夜闇の中、カナは黙ってその石の前に立っていた。睫が瞳にかかり、口元は固く結んでいる。いつしかカナはその石に向かい、深く礼をする。様々な想いが籠った行為だった。
『本当にいいんだね?僕と一緒に楽に脱出しなくても』
『......はい、どうぞお先に』
『じゃ、お言葉に甘えて。のんびりしてて見張りに見つかるのも馬鹿みたいだしね』
丸眼鏡をかけた銀髪の男、カブトはそう言って簀子から立ち上がった。再びフードを目深く被り格子の戸を抜ける。
だが、もう一度 格子のカギを閉める前に、『あ、そうそう』とカブトは何かを思い出したように懐を探り、カナに向けて何かを放り投げた。反射的に受け取ったカナは眉根を寄せていた。
『......これは?』
『ニオイ消しスプレーさ。君も知っているだろうけど、木ノ葉は追跡に犬をよく使うからね。一応あげとくよ』
施錠され、再びカナは格子の中、一人になった。その視線はスプレーに向けられたまま。
"自分の道"を疑うわけではなかったが、その時のカナの脳裏に過っていたのは、二日前のナルト、サクラ、カカシの...そしてアスマの声。
『迷うのかい、カナ』
『......いいえ。心配しなくても、行きます』
格子の向こうからの問いにカナは応え、ぎゅっとスプレーを握った。精一杯感情を押し殺した声は果たしてカブトには効果があったのか。歩き出したカブトは、小さく口元を歪めていた。
『いいことを教えてあげようか』
『...?』
『キミを捜しにこの里に入るついでに色々と情報を集めてたら、面白そうな話を聞いたんだけど......』
カナは怪訝気な目をカブトに向けていた。ーー予感はないわけではなかった。
カブトの口から淀みなく流れてくる情報を耳に、カナは歯を食いしばって、殊更強くスプレーを握っていた。
そしてカナは今、地下牢から脱出して地上を駆けていた。
歴代火影の眠る石碑を後に、民家の屋根の上を跳んでいく。今度こそ目的は里からの脱出。向かう先は、大門。
だが、カナはここ三年の間で、今が最も心穏やかになっていると自覚していた。心地よく寝静まっている里が懐かしく、今もまだ安穏と平和を過ごしている木ノ葉に安堵していた。里を抜けていながら、いつまでもここが平穏であることが、カナの心底からの願いだった。
「......!」
その時、カナは視界を何かが霞めた気がして、咄嗟に顔を向けた。
「お......お前!」
ーーー第三十話 再会/際会
彼女が里から消えたと聞いた時、私はただただ呆然とするだけだった。
彼女が里抜けした本当の理由を聞いた時、私はただただ涙を流すだけだった。
どちらの時も、私は受け身だった。何か行動を起こすすべを見つけられなかった。そんなの仕方がない、と皆は言った。けれど、私にとったらそれだけで済ませられるはずもなかった。涙は後から後から零れ落ちて、枯れるまで泣くということをしたのは、きっと初めてだった。
他人を支えるばかりで、自分のことはほとんど話さなかった彼女は、こんな私を想像できるかな。彼女はいつだって他人のことばかり気にして、自分に先に目を向けるなんてことはしなかったけれど...。
みんなが思ってるんだよ、気付いて欲しいんだって、わかってほしいんだって。みんながみんな、友達として、仲間として、この里の"家族"として。
カナちゃんが独りでじっと痛みに堪えてるのが、みんな、何より哀しいんだってこと。
「ほ、火影様......?」
「......」
「火影様......綱手様!!」
この三人と一匹は、何てことない任務から帰還した直後だった。出迎えは、何故かこの里のトップだった。
五代目はただの用事で大門に出向いていただけらしかった。とにかく、一同はそれまでは、さしたる疑問を持ち得るには至らなかった。胸騒ぎの一つも起ころうはずがなかった。
ーーーだが、共に火影邸に戻ったタイミングは、最悪だった。
「どういうことなんですか!?風羽ってカナちゃんの、何で今その名前が!それに、収容って!!」
「お、落ち着けヒナタ!!」
「お前もだキバ、声を荒げるな」
「クゥン...」
日向ヒナタ、犬塚キバ・赤丸、油女シノ。
脱獄者・カナの同期の三人だからこそ、最悪の状況だった。
思案するように口を閉ざしている綱手に、常日頃の穏やかさも忘れて詰め寄るヒナタ。なんとかそれを抑えようとするキバも動揺を抑えきれず、シノが重ねるようにチームメイトを嗜め、赤丸は心細そうに耳を垂れるばかり。
牢獄で勤務中だった二人はようやくハッとし、その場でひざまずいた。
「申し訳ありません五代目様!!」
「我々看守が二人もいながらこの失態!罰は十分にお受けします、しかしその前に我らで脱獄者を再度捕らえる許可を頂きたい!」
「......いや」
綱手はかなりの沈黙のあと、一言だけ返した。予想外の返事に看守二人は「は?」と声を合わせて顔を上げる。
だが既に綱手は二人から視線を外していた。厳しい目で貫かれているのは、今や"罪人"風羽カナの友人たちだった。
「悪いが、今はお前らに事情を話せない」
それは、三人を突き放した言葉だった。
シノはそのフードで隠れている眉間に深く眉を寄せる。キバはギリッと歯ぎしりした。だが、普段 一番おっとりしているはずのヒナタだけは、自分を制する事は叶わなかった。
「何故ですか!!」
ヒナタの声が火影邸に響く。抑えていたシノ、キバ二人のチームメイトの手も振り払うその姿は、必死だった。ヒナタの頭の隅によぎるのは、あまりにも穏やかに笑う大切な友人の姿だった。
「風羽の者っていうのがカナちゃんだってことは否定なさらないんでしょう!?なら、どうして私たちに教えて下さらないんですか!!」
「ヒナタ、少しゆっくりと呼吸を...」
「止めないでシノくん...!どうしてなんですか火影様!!なんで私たちに隠そうだなんて...!!」
心臓の高ぶりは異常だった。熱くなった頭をヒナタはどうしても抑えきれなかった。だが、一気に言おうとして、酸素が足りなくなり大きく咳をする。赤丸が心配そうに尻尾を垂らし、ヒナタの手を舐めた。キバもシノも、こんな姿の仲間を止められるわけがない。何せ、心中では二人ともヒナタと同じ思いなのだ。
何から何までわからないこの状況で、冷静に落ち着いていろというほうがおかしい話だった。
「......キバ」
ーーしかし、綱手の視線はヒナタにでなくキバに向けられていた。
言葉に詰まったヒナタは俯き下唇を噛む。悔しさが滲み出ているその姿をキバは一瞥し、遠慮がちに綱手に向き直って「なんスか」と低く唸った。
綱手はすぐには何も言わなかった。だが瞳は真剣そのものだった。
「今回の小隊長は、三人の中でお前が一番適任だ」
「......は?」
「敵情視察のようなデリケートな任務であれば、常に冷静を維持できるシノが好ましい。だが、今回のようなケースは程々に熱くなれる者のほうがいいだろう......かといって、今のヒナタに任せてしまうと先走りが予想され、任務失敗の可能性が高くなる。三人とも、今日の任務で使った無線は持っているな?それを使い、互いに連絡しあって任務成功に努めろ」
「ちょ、綱手様?なんの話だか、」
「しかし誰が隊長であろうと、この任務の成功率は五十%あるかないかだ。なにせ、"相手"は強い。力づくで屈せられる相手ではないだろう。無論手の空いている暗部にも指令を出すが、それでも可能性は五分五分だと心得ておけ......それと、キバ」
その場に居る誰もが放心している中、綱手は懐からある物を取りだした。
「これをお前に渡しておこう」
きらりと光る、傷一つないそれ。
それを目にした時、ようやく全員が理解していた。綱手が何を言わんとしているかを。
「察しのとおりだ。これはアイツの額当て。これを一度、お前らに預けるぞ」
■
「お......お前!!」
その人影を見つけ、カナは瞬時にその背後に回り込み、口を押さえ付けていた。
緊張に硬直する男の背で息を押し殺し、風を以て周囲を伺う。まだ差し迫るような気配はないことを確認してから、ようやく男からそっと手を放してやった。
「すみません。追われてる身なので......少し手荒なことをしました」
「......いや」
木ノ葉病院、その屋上。そこに咄嗟に下りていたカナは、自身が押さえ付けた人物と既に面識があることをわかっていた。しかし長居する理由もなく、軽く会釈し、男から離れる。
だが、「待て」と背後から声が聴こえ、カナは立ち止まらざるを得なくなる。
火ノ寺の僧侶・庵樹は、冷や汗を額にしながら、強い瞳でカナを睨みつけていた。
「行くのなら止めはしない。だが、オレの質問に答えてからにしろ」
「......私には、あなたの言う事に応える義理はありません」
「ならば大声を出して人を呼ぶぞ」
「今度こそ殺されてもいいんですか」
ザッとカナは振り返る。庵樹はごくりと唾を呑み込んだ。
無論 庵樹とて、カナがその気になれば一瞬にして殺されるだろうことはわかっていた。カナの瞳の色に、庵樹は数日前のあの惨劇を思い出す。
だが。
「あの時、お前はオレを助けた......そんな義理もなかったはずだ」
今度はカナが眉をひそめる。庵樹はなるべく強い語調で言い放った。
「お前、人を殺せないだろう」
静寂が落ちる。夜風が吹いて銀色を揺らしていった。苦渋の色がカナの瞳に広がる。迫られた二択は軽いものではなく、しかしカナが選べるのは一つしかなかった。苦々しい顔でカナは小さく溜め息をついた。
「......それで、何をお聞きしたいんですか」
「何故オレを助けた」
その質問内容は至極単純だった。しかしその理由を語るには、あまりにカナの内情にまで深く関わったものとなる。
カナはきゅっと下唇を噛んだ。その様子を見ていた庵樹は、また口を開く。
「気まぐれだなどと言うなよ。オレは確かに聞いたんだ、木ノ葉へ行け、というお前の声を。......木ノ葉に変事を知らせるためにオレを助けたのか?もしそうだというなら、何故......!」
庵樹は最初、ただ外の空気を吸いたくなって病室から抜け出してここに来ていた。まさかそこでカナに遭遇するなど思いもしなかった、ゆえに何の心の準備もしていなかった庵樹の心臓は今、どくりどくりと大きく波打っていた。しかし緊張が重いとはいえ庵樹は引き下がれないのだ。
庵樹の瞼の裏に、あの日 意識を取り戻した直後に見た、破壊の数々が甦っていた。
「何故、地陸様や他のヤツらじゃなく、他でもないこのオレを選び助けたんだ...!!」
「...!」
無念だった。
あの時の庵樹には、カナの声通り木ノ葉へ行くことしか考えられなかったが、落ち着いてきた今となっては、庵樹の胸に蔓延るのはあまりにも強い痛みだった。死にたかったわけではない。しかしあの惨状を思うと、庵樹は生をも堪え難かったのだ。
その苦悶の表情は偽りではない。
カナはぐっと拳を握った。
「......他言をしないと誓うのなら」
「しない。......僧侶としての......"私"が誓う」
真っ直ぐな瞳を前に、カナは僅かに俯いた。自分の不甲斐なさが身にしみるようだった。
「何のことはありません......私は、あなたを選んだわけじゃない」
カナの脳裏にもまた、火ノ寺境内で起こった殺戮が思い浮かぶ。戦闘の口火を切ったのは紛れもなく庵樹であり、それを迎え撃ったのがカナだった。
「ただ、あなたにしか手を伸ばせなかった......それだけでした。......全ては私の力不足のせいです」
「......オレはあの時、急激に意識が飛び退いていくような感覚に陥った。オレが"暁"の手にかからなかったのは、あの術のおかげなんだろう?何故それを他のみなにもしなかった!」
「......あれは、人を殺す術です」
静かに言ったカナ。庵樹は息を呑む。カナの瞳に偽りが滲んでいるわけもなく、それは本当に、一度 庵樹は殺されかけたことを意味していた。
「必要以上にゆっくりと......ですが。人はチャクラを失った時、完全に死ぬ。ゆっくりと殺されつつあったあなたは、私の中の特殊なチャクラを流されることによって、もう一度息を吹き返した。だから、あなたは今ここにいる。......でも、高度な分だけ、この術の発動条件は厳しいんです......私にはあの一族の眼がないから」
「......眼?」
「風を以てしても、私には直接額を突かない限り、あの術を発動できない......」
だけど、手はあなたにしか届かなかった。
カナの小さな呟きは、しかし庵樹の耳にはっきりと届く。いつしか俯いていたカナの表情は判らずとも、庵樹の目に映ったのは、思い切り握りしめられた拳だった。あの瞬間をぼんやりと思い出した庵樹は、今のカナの姿に同じものを見る。ゆっくりと意識を持っていかれる中、庵樹が最後に見たカナの表情は、決して殺戮者にはなり得ないだろうものだった。
「......ごめんなさい」
カナの声が夜風に吹かれる。庵樹はそれを無下にできる心は持ち合わせていなかった。
「いや......すまない、オレも少し感情的になっていた」
「......責めていいんですよ」
「落ち着いて考えれば、まんまと助かったオレが文句を言える立場じゃない。オレが本当に今すべきなのは、お前に感謝することなのだろう」
礼を言う、と続ける庵樹を前に、カナは何も返せない。一度は落ち着いていた、ちりちりと心を蝕む痛みがまた現れていた。
だがそれを『主』と諌める声が内側から響く。わかってる、とカナも心中で応えた。
止まっている場合ではない。
「......急ぎのようだな」
「!」
「引き止めて悪かったな」
カナは小さな苦笑いを返し、ゆるりと首を振る。今度こそ踵を返し、ゆっくりと歩き出した。
冷えた風になびいた銀色は、淡い月の光に照らされ、闇の中にも関わらず輝いていた。黙ってその様子を見ていた庵樹はふと口を開ける。
庵樹よりも幾分小柄な少女の背負うものが、一瞬とはいえ見えたからだった。
「......お前は、背負いすぎだ」
庵樹の口から漏れ出た声に、カナは目を丸くする。
振り返りはしない。しかし足は戸惑いを顕著に示し、歩を躊躇った。ぬるい風が吹き、二人の体を晒していた。返事を期待しているわけでもなく、庵樹はそれ以上は何も言わない。
カナも何を言う事もないーーーしかし口を開こうとした。
その時だった。
「風羽カナ、発見」
「捕獲に移る」
二名の面を被った忍を認識した時、カナはすぐさまその場から消え、暗殺戦術特殊部隊、通称暗部も持ち前のスピードですぐさまその場を立ち去っていた。
庵樹はその全てを目で追いきれることはできなかった。一瞬巻き起こった強風に顔を腕で庇い、そっと目を開けた頃には全てが終わっていた。残されたのはただ暗く重たい沈黙。夜闇は銀色を追うことを許さず、庵樹もまた、ひっそりと踵を返す。
「稀に見る阿呆らしいな、お前は......」
そのセリフだけをその場に残して。
■
「この任務とは関係ない話なんだけど、一つ聞いてもいい?」
暗がりの中、木々の間を移動する最中にそう言い出した上忍を横目に、中忍は「何スか」と眉をひそめた。上忍の口調は任務外のように軽かったが、その瞳は存外真剣だ。
「アイツを連行した時の状況は大体聞いた。けど、この一点だけは、キミの口からじゃないと聞けそうもないからね」
「何の事っスか」
「トボケるねえ。アイツを引きずりだしたっていう、茂みの中での事だよ」
「......良いじゃないスか、そんなの知らなくても。別に、ただアイツがあそこにいたから、無理矢理引っ張り出しただけですよ」
「今のアイツはどんな言葉をかけられても、簡単には傾かない。無理矢理、ってだけで通じるとは思えないんだよね」
身軽に跳び回りながらも、上忍の目は中忍を貫く。どうしても言い逃れできる雰囲気でないことを悟り、中忍は一言、「めんどくせーんスよ、こういうの」と吐き出した。
第十班。シカマルを先頭に、チョウジ、いのと隊列は続く。その更に前を走るカカシが、現在 シカマルを詰問するが如く詰め寄っていた。
対するシカマルとはいえば、溜め息をつきたそうな顔で応対していたものの、最終的には諦めて重たい口を開く。
「カカシ先生、アンタの口ぶりからすると意外なのかもしれないっスけど......アイツ、元より抵抗する力なんてありませんでした」
シカマルの脳裏に映る少女。腫らした瞳から涙を零していた銀色は、力無く座り込んでいただけだった。
「傷だらけの体で......泣き続けてた。抵抗しようとはしてたッスけど......カカシ先生、牢に入ったんスよね。どうだったんです」
「......うずくまってたよ......本当に、小さく。殻に閉じ篭ろうとしてたみたいだった。辛い心を隠してね」
「......オレ、今まで筋金入りの馬鹿って、ナルトのことだと思ってたんスけど」
「ま!そこがアイツの......カナの悪いところであり、いいところなんだろうな」
カカシは目尻を下げて苦笑する。カナの人前で気丈に振る舞うところは、三年前から多々見られていたことだ。カナは気付いていなかったのだろう、その陰で仲間たちが寂しく思っていたことに。目の当たりにしてきた数々の事件があのカナを作り上げた。
「オレは悪いとこだとしか思えないんスけど...」
ぼそっと呟いたシカマルは、小さくため息をついた。
「そんなことばっかやってるせいで、アイツは今、牢獄送りになってるんスから」
「手厳しいねえ、シカマル」
「......自業自得なのはしょうがないってことっスよ。それにそれでも、アイツは今は、木ノ葉にいるんだ」
「......そうだね」
「拷問は気がかりですけど、それだって情報部に頼めば長く続くことじゃない。もう、前までみたいな、暗闇ばっかじゃねえから」
ふわりと笑う三年前のカナが目に浮かび、シカマルもまた、目尻を下げて小さく笑った。
シカマルが自身の想いが叶うことよりもずっと望んでいることは、ただ、あの雲のような笑顔が戻ってくることだけだった。
■
時はもう夜明け前。木ノ葉では今、一人の脱獄者を巡って様々な情報が飛び交っていた。
罪人は未だ木ノ葉にいることだけは間違いない。しかし、木ノ葉病院にて二名の暗部が姿を確認して以来、正確な目撃情報は得られていないまま、それどころか確実に一人ずつ、報告が途絶えていた。気絶させられたのか。殺されたのか。風羽カナの行方はどこだーー。
明確な情報は何も得られないまま、最終的に情報を受け取っているこの里のトップは、歯痒い気持ちを抑えることしかできなかった。
できればあの三人の内の誰かが接触できることを、願いつつ。
「───カナちゃん!!!」