「あ・・・あれは・・・さ・・・沢田殿!」
「あんな所で炎を放出して・・・・・・・・・何のつもりだ・・・・・・・・・?」
「炎をムダにたれ流すのは命とりだぜ、コラ!!」
「フハハハ、勝ち目がないと見てヤケになったか」
「ちがう・・・沢田殿はやる気だ!」
嘲笑っていたXANXASだが、ふと顔色を変えた。ノッキングするような不規則な炎。覚えがあるのだ。まさか、あれは。
「死ぬ気の零地点突破!!」
XANXASの顔が歪む。
「零地点突破?修業してた技か!」
「XANXUSの顔付きが変ったぞ!」
「なんであいつが知ってんだ?」
「させねえ!」
急降下したXANXASに、ツナは飛び上がって回避する。
「逃がさんぞ!!」
しかし、一瞬で肉薄したXANXASがツナを拳銃で殴り付けた。さらに、バランスを崩したところで銃を放つ。
「ぐあっ」
寸でのところで直撃は免れたものの、脇腹をかすめ、ツナは苦しげに声をあげた。
「今までとはスピードが段違いだぜ!!」
「やべーな。これじゃ集中できねえ」
「そこまでして阻止したい零地点突破ってのは一体・・・!」
着地したツナは荒い呼吸を繰り返しながらも、再び零地点突破の体勢に入る。しかし。
「消えろ!」
XANXASがツナに向かって銃を連射する。
「あれでは!」
「当たる!」
「沢田殿ーー!!」
ドドンッ
大きな爆音が響く。
「・・・・・・どう・・・なった?」
シャマルが恐る恐る、という感じで呟いた。
パッと、モニターに映し出されたのは―――
「・・・・・・あ!!」
「死ぬ気の炎が・・・・・・」
額とグローブの炎はすっかり鎮火し、ぼろぼろな有り様のツナが、ぐったりとグラウンドに倒れていた。
「・・・・・・・・・・・・!!」
「くそっ」
タン、と軽い音をなさらしてXANXASが地面に降り立った。
「ふっ、死んだか・・・。バカなカスめ。てめーの死期をてめーで早めやがった。くだらねーサルマネしやがって。ふっふっふっ。よく考えりゃ、カスごときにできるわきゃねーのにな・・・」
そう言って嘲笑うXANXASを、璃真は平然と眺めていた。
―――言うわりに、やけに饒舌だ。
どちらかといえば無口な彼が、これだけペラペラと言葉を紡いでいる。それだけ、焦ったのだ。そして、その事をこうも大々的に周囲に晒している。晒していることに、彼自身気づいていない。気づけるだけの余裕がないのだろう。
「カスはカスらしく灰にしてやる」
そう言ったXANXASが手に炎灯そうとした、まさにその時。ブオッとツナの額が勢いよく燃え上がり、ドッと大きな炎を放って起き上がった。
「なに!?」
「リボーンさん!!」
「ああ、成功だな。死ぬ気の零地点突破」
「え・・・・・・?」
成功・・・・・・?アレが?
璃真は首を傾げた。“姫”として受け継いだ記憶にある初代の零地点突破は、姫の能力と同系統―――氷雪系の技だ。
わからずに小さく声を漏らした璃真に気づくことなく、周囲の面々は会話を進めていく。
「どーなってやがる。確かに・・・ツナは直撃をくらったはずだぜコラ」
「XANXUSの憤怒の炎を中和したんだ。死ぬ気の逆の状態になってな」
「死ぬ気の逆?」
「ああ、マイナス状態とも言うけどな」
死ぬ気の零地点突破とは普段のニュートラルな状態を0地点、死ぬ気になって炎が出ている状態をプラスとした場合、それは逆のマイナス状態になる境地のことだ。
「マイナス・・・・・・?つまり何もしてない時より、更に死ぬ気が空っぽってことか?」
「そーだぞ。そして空になった分は敵の炎をうけても、吸収してダメージをなくしちまえるんだ」
「だが、なぜ不規則に瞬くような炎になるんだ?」
「あーやってプラス状態と0地点を行き来して、マイナスになるタイミングをはかってるんだ」
「・・・・・・それが初代が使ったという死ぬ気の零地点突破か」
「そうだ」
「ぷふ・・・ふっふっふっ・・・・・・ぶっはっはっは、こいつぁケッサクだぁ!!!」
「!?」
「誰に吹きこまれたかは知らんが、零地点突破はそんな技ではない!!」
シニカルに笑い、XANXASは断言する。
「本物とは似ても似つかねーな。考えてもみろ。腐ってもボンゴレの奥義だぜ。使い手がそれほどダメージを受けるチャチな技なわけねーだろ!!」
「知ったようなことを!!」
「いや、確かに奴の言う通りだ」
「!!」
「リボーンさん!?」
「死ぬ気の逆とは強制的に生命力を枯渇させる危険な状態である上に、敵の攻撃を受けるタイミングを間違えれば直撃をくらう」
「で・・・・・・ですがリボーンさん!!拙者達はこの技を目指して修業してきたんじゃないんですか!?」
「そうだとも言えるが違うとも言えるな・・・」
「!?」
「死ぬ気の零地点突破は初代が使った"技"という印象が強いが、正確には技を導くための死ぬ気とは逆にある“境地”のことだ」
「境地?」
「もしツナがその境地に達していたとしても、あみだされる技は初代とちがう可能性がある」
「そっ、そんな・・・。では失敗なんですか?沢田殿は何のためにあれほど厳しい修業を・・・・・・」
「終わりだカス。灰になるまで撃ちこんでなるぞ」
「しっかり狙えよ」
「なに?」
「次はうまくやってみせる」
構えを変えたツナが、静かにXANXASを見据える。
「!?」
「沢田殿・・・?」
「