fragola
雲雀夢/少陰夢


Since:2010/08/01
Removal:2013/04/01



大空の戦い


不満そうな表情を露わにした璃真は屋上のフェンスの外に腰をかけて、向かい側の校舎の屋上にいるチェルベッロを見やった。


大空戦は命ある守護者は強制招集と、チェルベッロから連絡を受けたのは夕方に差し掛かった頃。

当然ながら、重傷の彼らを引っ張り出すような真似に反論した璃真だったが、チェルベッロは許可しなかった。

したがって、大至急ランボのための酸素ボンベと、ルッスーリアのための可動式ベッドを手配したのだが、それでも彼らの体調が気にかかる。




ガッと沸いた熱風に、璃真は視線を落とした。


XANXASを始めに、両側の守護者が次々と集まってきている。



「強制招集をかけたのは、他でもありません」


「大空戦では、6つのリングと守護者の命をかけていただくからです」


「リングと守護者の命をかける・・・・・・?」



ツナが呆然と呟いた。それに「そうです」と事も無げに告げるチェルベッロ。



「何言ってんの?ランボはケガしてるんだぞ!?」


「状況はヴァリアー側も同じです」


「そーよ、ガタガタ言わないの!招集がかかったらどんな姿だろうと集まる。それが守護者の務めよ!」


「その通りだよ。僕もXANXUS様の怒りがおさまって力になれる機会をうかがっていたのさ」


「ししし、よっくゆーよ。つかまったけど殺されずにすんで、饒舌になってやんの」


「ムッ」


「お黙り、ベルちゃん!!」



バカにするように笑ったベルに、ルッスーリアが怒声を上げる。



「スクアーロは・・・・・・・・・?いねーのか・・・?」


「雨戦の顛末はご存じのはずです」


「スクアーロの生存は否定されました」


「・・・・・・・・・」



チェルベッロの言葉に、山本は悔しげに唇を噛んだ。



「では、大空戦を始めましょう」


「えっ、ちょっと待ってよ!まだ納得は・・・・・・」


「できなければ失格とし、XANXUS様を正式なリング所持者とするまでです」



ツナを遮ってチェルベッロが告げる。そう言われてしまえば何も反論できず、ツナは言葉を飲み込んで引き下がった。



「ではまず、守護者のリングを回収します」


「なに!?死に物狂いで取ったこのリングを、返せというのか?」


「真の守護者であるならば、心配する必要はないでしょう。最終的にボンゴレリングは必ず持つべき主人の元へいくものです」


「・・・・・・?」



意味深なチェルベッロの言葉にツナ達は首を傾げた。

屋上で話を聞いていた璃真はいぶかしげに眉根を寄せた。


“必ず持つべき主人の元へいく”

チェルベッロの言うとおりなら、ボンゴレリングに相応しい守護者はツナ達以外に考えられないと璃真は思う。

初代ボンゴレの姫であるセラの記憶を受け継ぐ者として。


なら、チェルベッロは争奪戦に肯定的で、まるでXANXASさんを贔屓するかのような発言ばかりする?


そこが納得いかない。まるでツナ達を戦わせることが目的みたいだ。



璃真があれこれと思案している間にリングの回収も終わり、大空戦のルール説明に入った。



「大空戦も、他の守護者戦同様、リングを完成させる事が勝利条件の1つとなります」


「ただし、フィールドは学校全体」



広いな。

璃真は向かいの屋上に目をやり、次にグラウンドを見下ろした。

どちらも中央に高い台が設置されている。

この分だと、雨や嵐の守護者戦のあった校舎内や、霧戦のあった体育館にも設置されているのだろう。

晴れ戦のあった所にはあのステージがなくなり、そこにポールが置かれていた。



「広大なフィールドでの戦いを観戦できるよう、観覧席と各所に小型カメラと大型ディスプレイ、そして守護者の皆様にはカメラ搭載型モニター付きリストバンドを用意しました」


「では守護者の皆様はリストバンドを装着し次第、各守護者戦が行われたフィールドに移動してください」


「ぬ?フィールドだと?今更どういうことだ?」


「質問は受け付けません。従わなければ失格となります」



レヴィの問いを淡々と切り捨てるチェルベッロ。



「では、やるなら今しかないか・・・」



ゴホンッと咳払いをして、了平が笑う。



「え?」


「円陣だな」


「気合いいれましょう!」


「!そ・・・・・・そうだね」


「お前達はそこにいればよいからな。10mルールに改訂したからよいんだ!」



やはり円陣に混ざろうとしない雲雀とクロームに、了平は言った。



「10mルール?」


「10m以内の者は円陣に入ったとみなす極限ルールだ」


「なんじゃそりゃ!!?」



了平らしい豪快なそのルールに、璃真は屋上で一人、クスリと笑う。


そのルールでいくと、チェルベッロまで円陣に入っていることになる。



「沢田ファイッ!!」


「オーー!!!」




いつもより、一際大きな声。


円陣を組み終えた守護者達は、綱吉に一声かけて、持ち場につく。



「いよいよだな」



そこにやってきたのは、シャマルとコロネロ。



「骨拾いにきてやったぞ」


「野次とばしにきたぞ」


「(感じ悪!!!)」


「全員、各フィールドに到着したようです」


「璃真様も観覧席へ移動してください」



チェルベッロが上を、屋上にいる璃真を見上げた。


璃真はおとなしく従い、飛び降りた。白雪を開いて風を起こし、減速して優雅に着地する。



「各フィールドに設けられたポールの頂上には、フィールドと同じ種類のリングが置いてあります」


「リング・・・まさかまた奪い合えってのか・・・・・・?」


「ってことはさ――オレ達も戦えちゃうわけ?」


「どうぞご自由に」


「え!?」


「ただしできればの話ですが」


「・・・?」



どういう意味・・・?

チェルベッロの言葉に怪訝そうに眉をひそめた璃真は、一瞬遅れて聞こえてきた呻き声に、バッとモニターを仰ぎ見た。


全員が地に伏せり、もがき苦しむ様は尋常ではない。




- 1/2 -


prev | next 





×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -