「何を考えてるのかな」
璃真がつぶやいた言葉は、誰の耳に届くこともなく、戦場の喧騒に掻き消された。
軽い挑発に乗るほど、XANXASさんは短気でも浅慮でもないと、思うんだけどな。
目前で繰り広げられる雲雀とXANXASの攻防戦を見て、璃真は訝しげに眉をひそめた。
恭弥の挑発に反応したかのように踏み込まれたXANXASさんの足を、恭弥は難なくトンファーで受け止めたが、XANXASさんはただ、足が滑った、と答えた。
その行動はどう見ても恭弥を挑発し返すものだったが、その言葉はわざとらしくそれを否定していた。
恭弥の肩から落ちた学ランが、所在なげに風に靡く。
「そのガラクタを回収しにきただけだ」
動く度に地面に埋められた爆弾が爆発する。
「オレ達の負けだ」
「ふぅん、そういう顔には
見えないよ」
見下すような笑みを浮かべるXANXASに雲雀はトンファーで攻撃を仕掛ける。
動き回る中でガトリングの射程範囲内に入りあちこちから銃弾が飛んでくるが、2人はそれらを悠々と避けていた。
「安心しろ。手は出さねぇ」
「好きにしなよ。どのみち君は咬み殺される」
言葉の通り、XANXASただ雲雀のトンファーを避けるのみ。
そんな雲雀のXANXASに対する態度にレヴィが憤りを露わにする。
「おのれ〜〜!!ボスを愚弄しおって!!」
「まてよ、ムッツリ」
「ムッツリ!?」
「勝負に負けたオレらが手ーだしてみ。次期10代目への反逆とみなされ、ボスともども即、うち首だぜ」
「ではあの生意気なガキを放っておけというのか!?」
「なんか企んでるぜ、うちのボスは」
楽しそうに口角をあげて、ベルが言う。
それに気づいたのはベルだけでなく、璃真も険しい表情でXANXASを見ていた。
「・・・・・・・・・・・・」
今の所、XANXASさん自身に不審な動きはない。
だけど彼は一体・・・・・・
「!?何を・・・だ・・・・・・?」
何を企んでいるのだろうか。
「知らねぇよ」
「な・・・」
「マーモンかスクアーロなら知ってたかもね」
とは言っても、争奪戦に敗れた彼らがここを去った今。
XANXASの企みを知る者は、本人以外には存在しないのだった。
しばしの攻防が続き、ついに避けられなくなったXANXASは、とっさに右手に炎を灯し、トンファーを受け止める。
「手・・・・・・出てるよ?」
「あやつ、ボスの動きをとらえているだと!?」
「アンビリーばぼー」
「くっ、チェルベッロ」
「はい、XANXUS様」
「この一部始終を忘れんな。オレは攻撃をしてねえとな」
「・・・?」
何だろう・・・その妙な念押しは・・・・・・
そう思った、次の瞬間。
突然どこからか放たれた攻撃が、雲雀の左太ももを掠めた。
掠めただけなのに、肉がえぐれ、血がとめどなく流れ出る。
雲雀は思わず、その場に膝をついて、悔しそうに傷を睨みつけた。
「っ!!」
恭弥、と喉まででかかった声を飲み込む。
私は中立・・・なんだ。
でも恭弥が・・・血が・・・
・・・ううん、恭弥はこれくらいでやられるような人じゃない。
わかってる、だけど・・・
心の中で自家撞着を繰り返していた璃真は数回深呼吸をして、前を向き直した。
雲雀恭弥VS.XANXAS
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