fragola
雲雀夢/少陰夢


Since:2010/08/01
Removal:2013/04/01



出逢い‐雲雀編‐


それは2年前の4月・・・


桜の花びらが舞う日のこと───










****



 ドガッ


バギッ


「う・・・・・・」


「ぐはっ・・・・・・」



飛び散った“赤”。


ガタイの良い大勢の男子生徒が、次々と倒れていく。



「自分達からケンカ売ってきたわりには、たいしたことないね」



その中心に立っているのは、黒髪の華奢な少年。


入学式の日の真新しい制服は、男達の返り血で赤く染まっている。


その細腕で、周りの大男達をあっさりと伸したのだ。


しかし、勝ったというのに、少年は機嫌が悪かった。


口に広がる鉄の味。



「(・・・・・・一発殴られたか・・・)」



たかが1発、されど1発。

こんな奴らにたとえ1発でも、殴られたことは気に障った。


今度から武器を持ってこようか。



「ぁ・・・・・・」



そんなことを考えといると、声が聞こえた。


見ると、ガタガタと震える女子がいる。


さっきの戦いを見ていたのだろう。


ジロッと睨むと青ざめた顔で、走り去った。


どいつもこいつも・・・。

弱い草食動物ばかりで嫌になる。


そのとき。



「何してるの?もうすぐ入学式、始まっちゃうよ?」



ふわーっと風が吹き、桜の甘い香りとともに、凛とした声が


僕の耳に響いた。










振り返って───




───思わず息をのんだ。



サラサラとなびく蜂蜜色の髪に、雪のように白い肌。


長い睫に縁取られた大きな瞳が、まっすぐ自分を見つめていた。



彼女自身を、

彼女の纏う雰囲気を、


不覚にも、綺麗だと思ってしまった。


胸に目をやると

“入学おめでとう”

と書かれたリボンをしている。


同い年、なのか・・・・・・。


てっきり、年上だと思った。

それほど彼女からは、余裕や落ち着きを感じられた。



「君、誰?」


「私は沢田璃真。

あなたも新入生でしょ?あと15分もしたら、始まっちゃうよ?」



倒れている男。


返り血を浴びた自分。



ここで何かあったのか、わからない訳ではないだろう。


しかし、璃真という少女は、怯える素振りを見せず近付いてきた。



「唇、切れてるよ」


「・・・・・・」



僕は返事をせずに、黙って見返した。



璃真はポケットをゴソゴソとあさった。



「はい!どーぞ」



ちょんと、手に置かれたのは、



「・・・・・・飴・・・?」



りんごの絵のかかれた袋が手の上にあった。



「これ何・・・」



何のつもり?


そう聞こうと、顔をあげると、彼女の姿は小さくなっていた。


いつの間に・・・・・・。


入学式に向かったのだろうか。


そう考えて、驚いた。


自分が他人を・・・

しかも初対面の人間を気にすることなんて・・・


今までなかったからだ。



校舎の壁にもたれて座り先ほどのアメを口に放り込む。


鉄の味しかしなかった口内に、甘い味が広がる。


暖かい春の日差しの中、目を閉じると、自然と睡魔が襲ってきた。




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