昨日の今日ということもあり、男子は勿論、女子も心配そうに永山さんに近寄った。
ま、女子は上っ面だけだけどね。
だって、ここで心配したフリをしたほうが、犯人だと思われ難いでしょ?
それがわかっている私も表面上、心配する。
でも。
「永山さん、膝大丈夫?」
「痛そう・・・いつケガしたの?」
私は彼女達みたいに労りの言葉は掛けない。
「まさか、誰かにされた?」
その問いにピクリと肩が揺れた。
おーおー。
わざとらしいねぇ。
「ち、違うよぉ・・・わ、たし・・・が・・・勝手に転んでぇ・・・・・・」
イヤー!
キーモーイー!
あ、これ2回目?
ガラッとドアが開いて、沢田君と京子ちゃんが入ってきた。
あ、永山さん、顔顔!
超歪んでるよ?
嫉妬むき出し!
なんで誰も気づかないのかなぁ・・・。
あ、もしかして、私以外にはフィルターかかってんのかな?
トリップフィルターとか?(笑)
「あ、永山さん、膝どうしたの?」
本気で心配そうに永山さんに近寄る京子ちゃん。
彼女はいつだって、本当の優しさを相手に向けるんだ。
「ぁ・・・・・・京、子ちゃ・・・ん・・・・・・」
永山さんは隣にいる男子の服をギュッと握った。
これはこれは。
まさか、実は京子ちゃんにイジメられましたー!(笑)に持ち込む感じ?
「春菜ちゃん?・・・あ、まさか笹川・・・!」
「え?なあに?」
こてんと首を傾げる京子ちゃんの瞳は一切の濁りもない。
「あ、何でもねえ!悪ぃ気にしないでくれ!
(笹川がするわけねーよな!)」
男子の返事に永山さんは一瞬顔を歪めた。
あれ?今のはお気に召さない?
笹川、お前がやったんだなって言って欲しかったのかな?
「おっスー・・・って、今日も何かあったのか?」
入ってきた山本君、となぜか獄寺君。
「山本君、獄寺君、おはよう!」
「はよ!笹川」
「////」
山本君達に向けられた笑顔にも、つい顔を赤くする沢田君。
永山さん、ガン見しすぎだし!
睨みすぎだし!
「・・・んで、何があったんだよ?」
「永山さん、足をケガしちゃったみたいなの」
しゅんとする京子ちゃんも可愛いです。
たぶん、沢田君とは京子ちゃんの可愛さについて、かなり語り合えると思う。
「きょ、京子ちゃんのせいじゃないんだから!」
そんな顔しないで、って言う沢田君。
さっさと告っちゃえば良いのに。
もうっ!
本当に気に入らないわ、笹川京子!!
ツッ君は笹川京子にばっかり気を使って、私にはおはようの1つも言わない!!!!
私、ケガしたのよ!!?
何で心配しないのよ!
昨日、あんなことがあったんだから、このケガが誰かに遣られたものだって、思わないの!?
そんなはずないでしょ!?
ツッ君は、誰よりも優しい大空じゃない!
春菜は知らない。
彼がクラスの近状を彼女に伝えていたことを。
彼女が一目見て、自分のことを“異物”と判断したことを。
彼女が彼に、それを伝えたことを。
彼も、彼女と同意見なことも。
ウザイウザイウザイ!
じわじわ布石を並べようと思ったけど、もう良いわ!
笹川京子・・・もう我慢できないっ!
春菜は知らない。
休み時間、お手洗いに立った京子の後を、春菜が追う。
さすがの男子達もトイレまでついて行かない。
女子達も、所詮は上っ面だけの心配。
「あのぉ、京子ちゃぁん」
「なに?永山さん?」
「昼休みにぃ、屋上に来て欲しいんだけどぉ・・・お話が、あるんだぁ」
「うん!良いよ!」
「絶対、1人で来てねぇ?」
「わかった!じゃあ昼休みね!」