fragola
雲雀夢/少陰夢


Since:2010/08/01
Removal:2013/04/01



審判の時


あの放送の後、生徒達はすぐに移動を始め、チャイムが鳴る頃には、すでに全員が整列していた。


ステージには、大きなスクリーン。


そして生徒会長の姿。



「これより、生徒総会を始めます。


まず最初に、1年A組の永山春菜さん」



名前を呼ばれた本人はもちろん、全校生徒が反応した。



「ステージへ上がって下さい」



にこり、とその場に合わない穏やかな笑顔で告げる璃真さん。


バカな姫に、逃げ場はない、ね。


ああ、彼女を姫と表現するのは正しくないか。


永山さんが、恐る恐る、と言った感じで璃真さんの隣に立った。


ささっとパイプ椅子を用意して座らせる。


あんなのにも、紳士的な態度を崩さない璃真さんって・・・・・・。


もう、男が男に見えないよねー。


などと、美歩も、その場に合わない、暢気なことを考えていた。


璃真さんは、永山さんが座ってから、話し始めた。



「みなさん、今学校である噂が流れているのを知っていますか?」



噂・・・・・・それは、笹川京子が永山春菜を刺した、というもの。



「私は笹川京子はそんなことをしない、と自信を持って言えます」



この瞬間、この学校・・・いや、この町の全員が笹川京子側だ。



「・・・と、言っても私の勝手な思いが証拠になるわけではありません。

実際、永山さん本人に確認したところ、笹川京子に刺された、と。

そうですね?」



永山さんは、小さく、はい、と答えた。



「なので、まずは証拠が必要でしょう。

皆さん、スクリーンをご覧ください」



体育館内の照明が消えて、プロジェクターが作動した。

スクリーンに映像が流れ始める。



階段を上がり、屋上のドアが映った。


そのドアが開き、次に永山さんが映る。



「《ごめんね、永山さん・・・遅くなっちゃって・・・》」



京子ちゃんの声が聞こえた。

この映像は京子ちゃんの目線で撮影されたものなのだろう。



「《本当よ!トロいわね!》」


「《本当にごめんね・・・》」



怒鳴る永山さんの姿に体育館内がざわついた。


ステージにいる永山さんの顔が、面白いくらい蒼白になったのがわかった。


ぷぷぷ。あ、笑っちゃった、失礼。


ぶっちゃけ、君の足りない頭じゃ、仕方ないよ、としか思えなくて、同情も出来ないけど。



「《それで、話って?》」


「《・・・あんたウザいのよ!!ツッ君の周りをうろちょろして!

今後一切、ツッ君と話さないでくれる?!》」


「《・・・・・・え・・・?》」


「《だから、沢田綱吉君に近づくなって言ってんの!

あんた何かより、私のほうが彼に相応しいのよ!》」


「《・・・・・・ツナ君は、私の大切な友達だから、私はツナ君と、今まで通り、仲良くしたい!》」


「《っそう!わかったじゃあ、嫌われてよね?》」



ポケットから取り出したカッター。


みんなが、息を呑む気配がした。


ま、次にどうなるか、理解したんだろうね。


あはは、今更なんだよって感じだわ。



永山さんはグサリと自分の腕に突き刺した。




「《!な、永山さん何して・・・は、早く手当てしないと・・・》」


「《後でツッ君にしてもらうからぁ♪

きゃあぁぁぁぁぁ!!!
》」



そこで、映像が切り替わった。


生徒会室だ。



「《適当に座って。

紅茶はダージリンでいいかな?アールグレイの方が好き?》」


「《どっちでも良いですよぉ》」



璃真さんと永山さんが入ってきた。


もしかして、今日の4時間目の出来事?

もう編集したのか。

仕事早いなぁ。



「《あ、あのぉ・・・あなたは・・・?》」


「《あ、ごめんなさい。自己紹介がまだだったね。

私は並盛中生徒会会長なの。よろしくね》」



・・・違和感。


今、璃真さん、自分の名前を言わなかった。


わざと?


永山さんが“沢田綱吉”に好意を抱いてるって知ってたのか?



「《昨日の屋上の件で、ね。腕は大丈夫?


かなり深く刺したみたいだけど》』



かなり“深く刺した”みたいだけど


・・・なーんだ。

バレバレだったんじゃん?


まあ、それもそうか。璃真さんだもんね。



「《大丈夫ですよぉ?お話って、それだけですかぁ?》」



しかも、その言い回しに全く気付いていない永山さん。


バカって言うか、ここまで頭が回らないって、哀れで滑稽。


本当に、私を楽しませてくれる人だ。

ここで爆笑出来ないのが辛い。


腹筋が割れそうだ。鍛えられる。


あ、これでウエスト引き締まったりしないかなー・・・。




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