fragola
雲雀夢/少陰夢


Since:2010/08/01
Removal:2013/04/01





全然知らない女について、廊下を歩く。


授業中なので当たり前ながら、廊下は静まり返っていた。


途中、遅刻してきた生徒だろう女とすれ違い、付いたのは生徒会室。



「適当に座って。

紅茶はダージリンでいいかな?アールグレイの方が好き?」


「どっちでも良いですよぉ」



紅茶の味の違いなんて、知らないわよ!


とりあえず、示されたソファーに腰を下ろす。



「あ、あのぉ・・・あなたは・・・?」



紅茶を入れ終わった女が向かいに座るのを待ってから、口を開いた。



「あ、ごめんなさい。自己紹介がまだだったね。

私は並盛中生徒会会長なの。よろしくね」



生徒会長が何の用だ。



「昨日の屋上の件で、ね。腕は大丈夫?


かなり深く刺したみたいだけど」


「大丈夫ですよぉ?お話って、それだけですかぁ?」



早くこの場を離れたいのか、永山本人は気付いていないが、そわそわしている。



「ううん。そんなことでいちいち呼ばないよ。

並中(うち)ではそれくらいのケガなんて珍しくないからね」


「じゃあ、なんですかぁ?」


「ちょっと噂を聞いたんだけど・・・


笹川京子にイジメられた・・・・・・


ねえ、それ・・・本当?」



!!!!


空気が変わった。


口元に浮かべられた薄い笑みは、この場を完全に支配している。



「ほ、本当ですよぉ・・・?」



気圧され、息をゴクリと飲んだ。



何・・・・・・


何なのよ、この女・・・?



「私、あなたや京子とは1つ上の学年でね。

京子の兄の笹川了平君と仲が良いから、私が中1・・・・・・京子が小6のころから、京子とは仲良くさせてもらってるの」


「つまり・・・私が京子ちゃんにイジメられてるのはぁ・・・・・・


嘘だと、思ってるんですねぇ?」


「うん、その通り。私、勘が良いの。目を見たらあなたが嘘をついてることくらい、すぐにわかる」



ふっと、空気が軽くなった。


再び相手に呑まれるわけにはいかない。


チャンスは今だけ。


それは、今までしてきた中で最も間違った選択。



「―――で、話ってそれ?」


「そう。嘘なら嘘って認めて欲しいんだけど」



急に変わった態度にも、璃真は全く動じない。



「ばっかばかしい!くだらないことに時間取らせないでよね!

笹川京子が何よ?邪魔なのよアイツ!」


「京子は、稀にみる良い子だよ?あの子の瞳は、いつも澄んでる。

だから、私はあの子の瞳を濁そうとする人を許さない。

でも、何か理由があるなら知りたい」



女の子に、手荒なマネはしたくないし・・・。


話し合いで済むなら、それが一番だ。



「あーっ!あんたマジでウザい!

偽善者?あんたに理由話す義務も義理も無いっつーの!」


「そう・・・残念。


じゃあ、話は終わり!教室に戻って良いよ」



私がそう言うと、イライラしながら立ち上がる永山さん。



「二度と呼び出すな!ブス!」



バシャっと口の付けていなかった紅茶を、璃真に掛けて、春菜は生徒会室を出た。


冷めてたから、熱くなかった、けど・・・。



「紅茶・・・シミになったら嫌だなぁ・・・」



そう呟きながらも、璃真の口元には、先ほどの笑みが浮かぶ。


それは、絶対的な支配者の、笑み。



「さーてと。締めと行きますか」



そう言って、璃真は棚に置いていたカメラの撮影停止ボタンを押した。


まぁ、こんなの無くても証拠は十二分にあるんだけど、ね・・・?


携帯を出して、電話をかける。



「あ、もしもし恭弥?準備オッケーだよ!

ついでに、制服代えってあるかな?

ん?ちょっと紅茶がこぼれただけ。

てっ君にクリーニング頼んどいてー」



崩壊はすぐ目の前。




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