光を見出す者
ふわふわ
ゆらゆら
暖かい。
この感覚は―――・・・?
「ぁうーー!」
え!!?
「ぅあうー!?(なっ、何これっ!?)」
小さい手が、眼前に揺れる。
私、赤ちゃんになってるの・・・?
夢・・・じゃない?転生でもしたの?
え、死んだ覚えが無いのだけれど・・・。
あ、でも何か急に胸が苦しくなったような・・・?
病気が悪化したの?
でも何でいきなり赤ちゃんに?
転生ってありなの?
というか、それなら何で前世の記憶が・・・?
「理紗は元気が良いのう」
ふわりと抱き上げられ、優しい目をした老人が目に入った。
“理紗”―――それが私の名前・・・。
「・・・父上。私より先に抱かずとも・・・」
後ろにいた男性が、恨めしそうに老人を見やる。
「おお吉昌。すまん、すまん」
そう言い、父親と思われる男性に私を渡した。
顔を綻ばせるお父さんの後ろに目をやると、青い髪の男性と鳶色の髪の男性、金髪の女性、朱髪の男性、黒髪の少年の姿があった。
「うあー?(あなたたち誰?)」
大家族とか・・・?
・・・全然似てないけど。
その人たちの方へ手を伸ばすと、お父さんとおじいちゃんが驚いたように目を丸くした。
「ほう・・・凄まじい見鬼の才じゃな。隠形した神将が見えるとはのう」
ケンキ・・・?
オンギョウ・・・?
それに“見えるのか”って・・・・・・?
え、普通見えないの?
まさかお化け?
それにしても皆さん端正なお顔立ち・・・・・・じゃなくて。
私はとりあえず、見えると言うことを伝える為にシンショウ?に笑い掛けた。
「ほっほっほ。理紗は、この安倍晴明の後継に成りうる器かもしれんのう」
ええっ!?安倍晴明・・・って・・・
あの安倍晴明?
入院中に色々な本を読んだけど・・・。
確か、平安時代にいた大陰陽師。
ならシンショウって神将のこと?
十二神将?
安倍晴明が配下に置いていた、神様。
というか私、平成の世に生まれたはず・・・なんですけど・・・?
なぜ時代が戻っているのか。
「女にするには惜しい才ですね」
お父さんが困ったような笑顔を浮かべる。
それなら、男として生活しても、別に構わないけど。
そんなことより重要なのは、この身体が健康か否か。
未熟児じゃないみたいだし、前世よりは健康なのかな。
「ふむ。まぁ、その話はまたにしよう。
それより・・・さて。誰に子守をさせるかのう」
ふ、と視線を後ろに向ける晴明。
「・・・よし、青龍。お前に任せるとするか」
「「なっ!?」」
言われた青龍も、理紗を抱いていた吉昌も、驚きの声を上げる。
てっきり、天一や白虎だと思っていた。
福助をつかさどる青龍に、何の不満も無いが、彼の性格を考えると、子守など・・・・・・。
吉昌はそう思った。
「天一や天后、白虎でいいだろう」
任ぜられた青龍自身も、吉昌と同じ考えだ。
「あぅああー?(なんの話?)」
えっと、この蒼いお兄さんが青龍・・・?
状況がわからない理紗は吉昌の腕の中で、ただ首を傾げる。
「まぁ、ふたりとも。理紗を見てみろ。こんなに神将がいるにも関わらず、泣かない所か笑っておるではないか。
つまり、理紗は神気に脅えておらん」
そう言って、晴明は吉昌から理紗を奪って青龍に押し付けた。
あくまで優しく。
青龍は微かに焦燥の色を浮かべ、理紗を抱えて固まっている。
「・・・・・・おい」
「はぁ・・・仕方がないのう。六合や。お前も理紗のお守りに付け」
あまりにも焦る青龍を見て、溜め息をついた晴明は六合に命じた。
六合は目で頷き、理紗を抱いた青龍に近寄った。
青龍は六合に理紗を渡し、大きく息をついて姿を消した。
「まったく。青龍はいじり甲斐があるのう」
(・・・うわぁ・・・・・・)
晴明の発言を聞いた皆がそう思っただろう。
優しそうな目をしていながら、その実なかなか腹黒いようだ。
理紗は晴明への認識を改めた。
青龍さん・・・私のせいでごめんなさい・・・・・・。
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