fragola
雲雀夢/少陰夢


Since:2010/08/01
Removal:2013/04/01



転校生


「イタリアから来ました、沢田璃真です。よろしくお願いします」



“花が咲いたような”


そんな形容が付く笑顔で挨拶をした、璃真。



「沢田の席は丸井の隣。アソコだ」


「はい」



軽やかに歩く璃真の姿を、ただ見つめるばかりのクラスメート。


男子はもちろんのこと、女子も微かに頬を赤らめている。



「初めまして、沢田璃真です。よろしくお願いしますね、丸井君」


「お、おう!シクヨロ!////」


「シク・・・ヨロ?」


「お、う・・・////」


「ふふ、はい、シクヨロです」



天使のような、季節外れの転校生。



それが俺、丸井ブン太の、沢田璃真に対する第一印象だった。










****



「沢田さん!髪は染めてるの?

ってか、璃真ちゃんって呼んでいい?」


「なんでこんな半端な時期に転校したの?」


「どの辺りに住んでるの?」



転校生を質問攻めにするという、お決まりのパターン。


廊下は沢田を見にきた奴らで溢れかえっている。



「もちろん、お好きなように呼んでください。

髪は地毛なんです。


本当はもう少し早く来る予定だったんですが、引っ越しの手配などに手間取ってしまって。

今は、ここから10分くらいの所に住んでます」



嫌な顔1つせず、ニコニコと答える璃真に、周りの男子は頬を朱色に染める。


女子にも、好感度は高いようだ。



「(・・・マジで可愛いすぎだろぃ・・・////)」



机に伏せて、腕の間から隣を伺う。



ニコニコと笑う彼女は、100人が100人、可愛いと答えるだろう。



「沢田さん!」


「はい?どうしましたか?」


「〜〜っ////」



ふわりと笑う彼女を見て、心臓が痛いくらいに脈打つ。


どうやら、俺は不覚にも“一目惚れ”というヤツをしてしまったらしい。



周りの野郎共がデレデレと鼻の下を伸ばしているが、仕方ないと思う。


だって可愛いし。


綺麗だし。


沢田の纏う雰囲気は、不思議な安らぎを感じさせた。



「ブンちゃん」


「に、仁王・・・!!」



いきなり声をかけられて、俺はビクッと体を起こした。



「な、なんだよぃ!」


「いいや?ただ声を掛けただけじゃが?」



そうは言うが、仁王はニヤリと笑みを浮かべている。


これは、何か企んでいるに違いない!


警戒して軽く睨むが―――



「仁王君」


「久しぶりじゃな、璃真」


「・・・・・・・・・え?」



―――2人の予想外な発言に、持っていた警戒心は彼方へ吹き飛んだ。



「え・・・・・・ええっ!!?知り合いなのかよ!!?」



今日来たばかりの転校生と、いつの間に!?



「はい。仁王君・・・というか、一部のテニス部の方達とは先週お会いしまして。


編入のことで学校に来た時にお世話になったんです」


「世話というほどでもないがの」



どことなく得意気な仁王の顔がムカつく。


さっきからニヤニヤしてるのは、こういう事かよ・・・。




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