「イタリアから来ました、沢田璃真です。よろしくお願いします」
“花が咲いたような”
そんな形容が付く笑顔で挨拶をした、璃真。
「沢田の席は丸井の隣。アソコだ」
「はい」
軽やかに歩く璃真の姿を、ただ見つめるばかりのクラスメート。
男子はもちろんのこと、女子も微かに頬を赤らめている。
「初めまして、沢田璃真です。よろしくお願いしますね、丸井君」
「お、おう!シクヨロ!////」
「シク・・・ヨロ?」
「お、う・・・////」
「ふふ、はい、シクヨロです」
天使のような、季節外れの転校生。
それが俺、丸井ブン太の、沢田璃真に対する第一印象だった。
****
「沢田さん!髪は染めてるの?
ってか、璃真ちゃんって呼んでいい?」
「なんでこんな半端な時期に転校したの?」
「どの辺りに住んでるの?」
転校生を質問攻めにするという、お決まりのパターン。
廊下は沢田を見にきた奴らで溢れかえっている。
「もちろん、お好きなように呼んでください。
髪は地毛なんです。
本当はもう少し早く来る予定だったんですが、引っ越しの手配などに手間取ってしまって。
今は、ここから10分くらいの所に住んでます」
嫌な顔1つせず、ニコニコと答える璃真に、周りの男子は頬を朱色に染める。
女子にも、好感度は高いようだ。
「(・・・マジで可愛いすぎだろぃ・・・////)」
机に伏せて、腕の間から隣を伺う。
ニコニコと笑う彼女は、100人が100人、可愛いと答えるだろう。
「沢田さん!」
「はい?どうしましたか?」
「〜〜っ////」
ふわりと笑う彼女を見て、心臓が痛いくらいに脈打つ。
どうやら、俺は不覚にも“一目惚れ”というヤツをしてしまったらしい。
周りの野郎共がデレデレと鼻の下を伸ばしているが、仕方ないと思う。
だって可愛いし。
綺麗だし。
沢田の纏う雰囲気は、不思議な安らぎを感じさせた。
「ブンちゃん」
「に、仁王・・・!!」
いきなり声をかけられて、俺はビクッと体を起こした。
「な、なんだよぃ!」
「いいや?ただ声を掛けただけじゃが?」
そうは言うが、仁王はニヤリと笑みを浮かべている。
これは、何か企んでいるに違いない!
警戒して軽く睨むが―――
「仁王君」
「久しぶりじゃな、璃真」
「・・・・・・・・・え?」
―――2人の予想外な発言に、持っていた警戒心は彼方へ吹き飛んだ。
「え・・・・・・ええっ!!?知り合いなのかよ!!?」
今日来たばかりの転校生と、いつの間に!?
「はい。仁王君・・・というか、一部のテニス部の方達とは先週お会いしまして。
編入のことで学校に来た時にお世話になったんです」
「世話というほどでもないがの」
どことなく得意気な仁王の顔がムカつく。
さっきからニヤニヤしてるのは、こういう事かよ・・・。
転校生
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