最強のお母さんwith魔法
朝起きたらなぜか外で、怪しい格好の外国人たちが木の棒をこちらに向けていた。
ヤバイ。
現状を訝しむより先に、身の危険を感じたツバキはすぐさま全力で駆け出した。
そして気付く。
視線が低い。手足が短い。
「ぎゃあああ!!!あんたら何なの!?一対何人!?」
顔のすぐ横をすり抜けた赤い光に思わず叫んだその声は、想像より甲高かった。
「幼児化とかいらねぇぇぇ!!夢なら覚めろ私ぃっ!」
それで覚めたら苦労はない。ヒリヒリと痛み出した頬に「現実!?え、まさかのトリップ!?」と頭を過った可能性に再び「全力でいらねぇぇぇ!!」と心の中で叫んだ。
つーか、トリップするならせめて言語の通じるところにしてよ!
いきなり追われる、言葉は通じない。何これ何て鬼畜仕様?!
辛うじて英語ってことはわかるけど!
「Freeze!!」とか叫ばれてるし。誰が止まるか! 殺る気満々だろお前ら!
ちらりと振り返って見えた顔は、明らかに話し合いなんて選択肢はくれそうにない悪人面だ。
「こんないたいけな幼女に襲い掛かるとか恥ずかしくないわけ!?お前ら全員バルス!!滅びろ!!特に毛根あたりぃぃっ!?」
後ろに向かって滅びの呪文を叫んでいたら、突然の浮遊感に声が裏返った。足場がなくなった!?まさかここがラピュタだったの!?
と、思ったのも一瞬で、階段になっただけだとわかった。前方が激しく不注意だった私は、走っていた勢いのまま階段からダイブ中らしい。
これは絶対痛い。階段高いし。勢いは私の全力疾走だし。あ、前に人いるんだけど。うわぁ、超美人。顔ちっさい。背も私の本来の身長より10センチくらい低そう。しかし華奢な体のわりにデカイ胸が羨ましす。え、てかこのままだと、あのお姉さんも巻き添えになること確実じゃね?ああ、でもあの巨乳に飛び込めたら柔らかくて痛さは半減かも。でもでも関係ないお姉さん、しかも特上美人を巻き込むなんて、罪悪感が半端ない!
「全部お前らのせいだからな!絶対バルスってやるから覚えとけぇ!!」
中二集団にも負けず劣らずの悪人面間違いなしで吠えた。ちなみに、落ちてから叫ぶまでの時間は一秒以下だった。
お姉さんマジでごめんなさぁぁぁい!!!
衝撃を覚悟して目を閉じた。
が。
「ここは“親方!空から女の子が!”でいいのかな?」
私は激痛に見舞われることなく、予想通りの柔らかい肢体にすっぽりと抱き締められていた。
「・・・・・・見かけによらず力持ちですね、お姉さん」
会話が噛み合わないのは仕方ないと、思うんだ。だってこのお姉さん、私のこと片腕で抱き止めてるんだもん。
「あは、もういい年だからお姉さんなんてちょっと照れるな」
「(え、どう見ても二十代前半なんだけど・・・)」
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