時刻は夕方。
この時間になるとそろそろ家に帰らないといけない。サファイアと並んで歩いていたルビーは太陽の光を反射する海の輝きに瞳を細めた。
眩しい。深く、蒼く、碧い海の色が沈んでいく太陽に染められて紅く、紅く変わっていく。
視界が紅に変わっていく中で隣で歩くサファイアを見た。
自分よりも少しだけ背の低いサファイアは夕日の色にうっすらと染められていく。
紅い色がゆっくり、ゆっくりと浸透していく。そんな事を考えていると不意にサファイアに服の袖を掴まれた。

「…行かんで」

「サファイア?」

「な、何でもなか」

驚いてサファイアを見るが、当のサファイアも驚いたのだろうか。はっとした表情をすると何でもないのだと主張を曲げない。
こうなった彼女は頑固だから何を言っても無駄な事を知っているルビーは溜息一つ吐いて諦めた。
それよりも、と先程考えていた思考を思い出し、サファイアに声をかける。

「ねぇ、サファイア」

「何と?」

「夕日が、綺麗だね」

「…そうたいね」

「景色全体が紅色に染まっててさ」

景色へと逸らしていた視線をサファイアに戻し、そっと柔らかなその頬に触れた。

「キミの瞳も夕日の色に少しだけ、染まってる」

「!!」

「あ、顔が夕日の色になった」

「…か、からかわんでよ!」

「えー?本当の事じゃないか」

「うるさか!」

「耳までまっか」

「しつこかー!」

「耳元で叫ばないでよ。本当にキミは女の子らしくないんだから」

「女の子らしくなくて結構ったい!ってなしてついて来ると!?」

「だってさっきまで一緒に帰ってたじゃないか」

「知らん!あたしは一人で帰るったい!」

「えー。待ってよー」

先頭を走るサファイアは知らない。
自分の前を走るサファイアをルビーが優しげな瞳で見つめている事を。
ねぇ、サファイア。
知ってる?この紅色の景色の中でボクの色に少しずつキミが染まっていく事の嬉しさを。
その紅色の中で唯一輝く海色の瞳が自然の海と同様に夕日の色を映しながら輝くその美しさを発見した時の喜びを。
…きっと、サファイアには分からないんだろうなぁ。

*********

久しぶりの更新です。
何年ぶりだよっていう。
数えるの怖いから数えないけど。
これを書いたのも結構前で、確か同い年でお隣さんで一緒に成長していくなら、置いて行かれる気分になったりするかもなぁ…なんて思って。
ちょっと不安になる気持ちとか、それ以上に隣に居られる喜びとか、そんなものを表現してみたかった筈。
説明下手くそなんですけど、伝わるといいなぁ。
またいつかリベンジしたいですね。



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