たとえばの話

たとえばの話。
あたしが思い出の女の子やなかったとしても、あんたはあたしんこつば好いとう思ってくれたとやろうか。
なんてぽつりと呟いた。
そげな呟きなんて裁縫に夢中なあん人には聞こえてなかやろうと思ったとに。

「例えも何もボクはサファイアが好きなんだけど」

裁縫の手ば休めてあたしば見つめてまた裁縫ば始めて何でもなか様に振る舞うルビーはほんまに狡か男ったいね!

***********

おいていかないで

キミと再会してから何年経っただろう。

「あんたはなしてバトルばする様になったと?」

突然質問してきたサファイア、キミは本当に唐突だね。

「そうだね。闘う時には闘う事を覚えたから、かな」

そう言えばキミは益々首を傾げた。
流石、野生児。
野生の勘が働くんだろう。
でも、本当の事を言うつもりはないんだ。
ボクがバトルをする様になったのはね、サファイアを護りたいから。
そして、未来に進むキミに置いて行かれたくないからだなんて言える訳、ないだろう?

************

生き方は似ているのです

いつの日やったやろうか。
先生の恋人のミクリさんから聞いたったい。
あたしがルビーに会う為に生き方ば変えた様にルビーもあたしに会う為に生き方ば変えたこつ。
あたしとルビーは正反対の様で生き方は似とるんやなってそん時に思うたとよ。

*********

もしも魔法が使えたなら

もしも魔法が使えたなら、カチコチに固まったパンじゃなくて柔らかいパンと温かいスープみたいなそんな美味しいご飯とアタシの帰りを待ってくれている優しいパパとママの大好きな笑顔に迎えられて、広げられた腕の中に飛び込んで元気な声で「ただいま!」って言うの。
もしも魔法が使えたならそんな夢みたいな魔法をかけて、シルバーを連れてお家へ帰るのに。
そんなの妄想だって解ってるわよ。
でも、夢くらい、見たって良いじゃない。

***********

無自覚ヒーロー

「レッドさんって無自覚ヒーローですよねぇ…」

「は?」

突然妙な事を口にするイエローの言葉にレッドはぽかんと口を開けた。
何だ、無自覚ヒーローって。
例えば重い荷物を持ってくれたり、困っている時に助けてくれたりですと答えるイエローにレッドは益々訳が分からなくなった。
困惑するレッドを横目で見たイエローはくすりと微笑する。
意識しないで何気なく荷物を持ってくれたり、道路側に移動してくれたり、泣きそうな時に何も言わずに傍に居てくれたりそんなレッドさんの無自覚な行動がボクにとってはヒーローなんですとこっそり呟いた。

***********

制限時間はあと一分

かりかりかり。
シャーペンを走らせる手を休めたクリスタルはちらりと横目でゴールドを見た。
珍しく真剣な表情をしたゴールドはテスト用紙にかじりついている。
その真剣な態度の理由を知っているクリスタルは困った様に眉を下げて溜息をついた。
数日前、ゴールドにテスト範囲の勉強を教えていた時の事だ。
苦手な勉強に嫌気が差していたゴールドにクリスタルが一括を入れようとしたその時、ゴールドが提案を出した。
『なぁ、今回のテストで高得点取ったらー…』
その案に対し、始めクリスタルは抵抗したが、ゴールドの必死の頼みにより条件付きで承諾した。
その条件とは今回のテストで満点を取る事。
やる気になっているゴールドは勉学に身を励んだ。
その全力をぶつけている彼を見ていると非常に複雑な気分になる。
制限時間はあと一分だ。
期待しているのか、回避したいのかそれすらも分からずにクリスタルは人知れず頬を朱く染めた。

***********

縁のない話

昔っから真面目一徹。
ついについたあだ名は学級委員長。
その名の通り、今はクラスの学級委員長をやっています。
学級委員長を自分から立候補したのはいつまでも決まらない委員決めに苛々したから。
このだらだらとした雰囲気は耐えられない。
それからはクラスの誰からも委員長、委員長と呼ばれて私の名前を覚えてる人って居るのかなと思った。
昼休み、図書室へと向かおうと教室を出た私は隣のクラスの男子と廊下ですれ違った。

「シルバー!バスケしようぜ!」

元気良くはしゃぐ前髪が爆発した少年は赤い長髪が目立つ少年に絡みながら廊下を歩く。
あれは、確か不良という奴だ。
あんな人達と自分が関わる事はこの先多分、一生も無いだろうな。
だって、縁のない話だから。
そう思っていたのに、まさか貴方達に振り回されるなんてそんなの思ってもみなかったわよ!

***********

どんな言葉よりも

プラチナ・ベルリッツ。
それが私の名前です。
呼ばれ方は沢山あります。
プラチナ、プラチナ様、ベルリッツ嬢、お嬢様、お嬢さん。
数ある呼び方の中で「お嬢さん」と呼ぶのはただ一人。
そう、それは貴方です。
パール。
そう思って彼をじっと見つめました。
私に見つめられた彼は怪訝な表情で眉を潜めました。

「さっきっから何だってんだよ、お嬢さん?」

私の名前を呼ばれて再確認。
ああ、やっぱり。

「私はどんな言葉よりもパールに呼ばれる事が好きみたいです」

************

いつかの夢の続き

幼い頃に夢見ていた事があります。
いつか、この広い世界で幼なじみの三人と冒険の旅に出る事を。
幼い頃に読んだ書物で憧れたのです。
広い大海原に青い空、照り付ける日差しの下で自分の足で大地を歩き、時に悪をくじき、民を救う様なそんな夢物語を。

「お嬢様〜!」

「お嬢さんー!」

ダイヤモンドとパールの声が聞こえます。
もうこんな時間だったのですね。
ではそろそろ行きましょうか。
私の騎士二人といつかの夢の続きへと。

***********
ツイッターの診断でお題が出ましたので書いてみました。
多分また溜まったら更新するんじゃないかなぁ。




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -