パラリ、パラリ。
チクタク、チクタク。

閑散とした部屋に響くのは時計の秒針が進む音と紙が捲れて擦れる音。
時を刻む音がその部屋の主であるー…ルビーともう一人ー…サファイアの耳へと滑り混む。
サファイアがルビーの部屋にお邪魔してから終始、二人の間に流れるのは沈黙による静寂だった。
サファイアが訪れるよりも前からルビーの手持ちである優秀なポケモン達の衣装を作っていたのだろう。
サファイアを振り返りもせずにいらっしゃいと声を掛けて、縫い続ける背中を眺めてからサファイアはルビーの本棚へと足を向ける。
適当に見繕った漫画を持ってベッドへ向かい、ごろりと横たわって漫画の世界へと意識を向けた。
そして冒頭に至る。
大した会話もしないけれど、それがお互いの存在を無視している訳ではないし、手を伸ばせば触れられる程にすぐ近くに互いの存在がある。
ルビーはサファイアが寝転がるベッドを背もたれにするべく移動して来て、サファイアはルビーに背中を向けながらも彼の近くへとわざと壁際ではない方へ体を寄せる。
けれど、会話は無い。
彼等の耳にはサファイアが次の頁を捲る音と時計の針が時を刻む音の二重音が心地好く鳴り響いている。
穏やかな空間。
緩やかな時の流れ。
すぐ傍に確かに感じる温度。
ああ、愛しい。
なんて愛しいのだろうか。
この瞬間が。
この空間が。
この部屋にある物が全て、全て。

「ー…好きだなぁ」

「ー…好きったい」

二人同時に呟けば、お互いに顔を見合わせる。
そして顔を逸らして。

「この空間が、ね」

「こん雰囲気が、」

似たような弁解をやはり同時に呟く。

「すき」

「すきったい」

「やっぱり君もそう思う?」

「あんたもそうと?」

「案外ボク達似た者同士なのかもねー」

「あたしはあんたみたいに捻くれてなかとよ」

「言ったな。ボクは君みたいな野蛮人じゃないぞ?ちゃんと文明の利器に精通した文明人なんだから」

「やったら、あたしはあんたみたいにひ弱じゃなかよー」

「ひ弱で結構。野性児よりはマシさ」

冗談半分に言い合って、それからクスリと笑い合う。
堪え切れずに漏れた笑いがきっかけでアハハと大きな声で笑い出す。



それでも少年と少女は満足をする。

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雰囲気を感じ取って頂ければ幸いです。としか言いようのない駄文でした。


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