しりとり。意外と単純な遊びだが、単純が故にひとつでも特別な《遊び心》を混ぜたくなるものだ。

 秘密基地のソファーで、一針一針、ただの布切れが素敵な作品に姿を変えていく様を見つめながら。銀色の針と、黒いフレームの眼鏡の先。深紅の瞳を暇とばかりにじっと見つめる藍色の瞳。
 いつものことなせいか気にもとめず裁縫の手を休めないルビー。相手にしてもらえている布切れが妬ましい。なんて、普段は思わないのに、今日に限って思ってしまうのはフィールドワークが忙しかったせいだ。

「ルビー」

 声をかけて気を引いてみるが気の抜けた適当な返事がくるだけだった。久しぶりに会えたのに嬉しくはないのだろうか?

「しりとりしよう」
「うん」

 駄目元で聞いてみれば、すぐ返事をされたので少し嬉しくなった。

「しりとりの《り》から始めるとよ。りんご」
「ごま」
「まー」

 目の前にいる、「マイペース」。皮肉たっぷりにいってやった。それでも眉ひとつ動かさないルビーは裁縫に夢中だ。ひとつも面白くない。いつもなら文句のひとつを吐かれてもおかしくないというのに。サファイアは頬を膨らませて怒っていた。
 促すように膝を握りこぶしで殴ってやった。痛みの声を上げないなんて憎たらしい。もう一発、膝の同じ部分を殴ろうとしたとき。平然とした表情で口を開いた。

「好きだ。だから、キスさせてください」
「い、い、い……?」
「いいよね? ねえ? 遠慮なくキスさせてもらうから。楽にしてて」
「ちょ!?」
「サファイアの負け」

 針山に刺された銀色の針。意地悪な笑みを浮かべたルビーの顔が近づいてくる。今から自分はキスをされる。緊張してまぶたをきつく閉じるサファイア。緊張を解くため、ひとつ目のキスがまぶたに、二つ目のキスが鼻に落とされ、三つ目のキスがゆっくり唇に落とされた。
 柔らかな感触を楽しむルビーは何度もサファイアの桃色をした唇にキスを落とす。こんなに唇にキスをするとき、決まって宥められていることが多い。今日も何かあるらしい。サファイアは自分の顔とルビーの顔との間に手の平の壁を作り、キスの嵐を遮った。

「なに企んでるとね」
「なにも。もうすぐキミのバンダナが出来るから待ってて。あ、服も変えどきだね」
「?」

 バンダナを外されて目の前で広げられた。

「あ」

 広げられて分かった。よく見ると泥で汚れていたり、木の枝で擦ったような傷みがある。自分が気がつかなければいけないものにいち早く気がついて用意してくれる優しいひと。

「ありがとう、のキス!!」

 今までのお返しとばかりにキスを返してやった。近いうち、お礼の木の実でも取りに行こうと思う。



(珍しい。キミからキスだなんて)
(なんね。たまにはよかとでしょ?)
(うん。まあ、たまにはあっちもキミから……なんでもない)
(ちゃんと最後までいうてみいよ)
(分かった。今夜ベッド空いてる?)
(なっ!? なにいうとっとか!!)


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神山さんから一万ヒットのお祝いを頂きました^^
嬉し過ぎるサプライズにドッキドキ!
可愛すぎるルサには始終ニヤニヤしっぱなしです!
ルサルサにされました´`*
神山さん、本当にありがとうございました^∀^


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