「まあ、上がれよ」
大荷物を抱えたクリスタルとシルバーを屋敷に迎え入れたゴールド。噂のポケモン屋敷には、たくさんのポケモンたちが自由に遊び回っていた。
相変わらず光景に目を奪われた。どこを向いてもポケモン、ポケモン、ポケモンの三拍子。
「とりあえず、親は旅行でいない。いない間のキッチンの使用許可はもらったから大丈夫だぜ!」
「分かったわ」
「ほれ、シルバー。俺たちはこっちで待機」
「あ、ああ」
キッチンに向かったクリスタル。シルバーはというと、ゴールドに手招きをされたのでついて行く。ついた部屋はカラフルなクリスマスの装飾をされ、クリスマスだと実感させられた。
「適当に座ってくれ。うー寒っ」
こたつに入るゴールド。こたつからバクたろうがはみ出しているが気にしてはいけない。
「おい、ゴールド」
「あん?」
「クリスの手伝いはいいのか?」
突っ立ったままシルバーは親指でクリスタルがいるキッチンを差した。
「一人でやりたいんだとよ。だから、オレたちはおとなしく待機。まあ、とりあえず座れよ」
「……」
言われた通り、ゴールドの正面に座った。こたつ中に足を入れた途端、バクたろうの横腹を蹴ってしまった。少し嫌がる声を上げるバクたろうに謝り、違うところに足を伸ばす。
――しばらくすると、エプロン姿のクリスタルが鍋掴みをして土鍋を持ってきた。
「ちょっと!? 二人とも何してるの?」
こたつから下半身だけを出しているゴールドとシルバーの姿。バクたろうも下半身だけを出していて、とても不思議な光景だった。クリスタルは土鍋をコンロに置いて不思議な光景を見下ろしている。
「いやー。こたつの遠赤外線についてだな」
ゴールドが一番に顔を出す。
「なぜ光が赤いか。それはこたつなりの優しさなんだ。暖かくなるための」
シルバーも顔を出した。二人揃って真剣な顔をして真面目なことを言っている。あとから顔を出したバクたろうは、いまいち分かっていないようで小首を傾げていた。
クリスタルは苦笑。呆れた様子で鍋掴みをテーブルに置き、エプロンを取った。
「出来たわよ」
「マジか!」
コンロの上にある土鍋に歓喜の声が上がる。土鍋の用意は整った。ゴールドは急いでクリスマスケーキ、お菓子、シャンパンなどを持ち出して広げる。
「っしゃー! やっぞ、クリスマスパーリィー!! ヤッホー!?」
どこから出したかクラッカーを盛大に鳴らし、土鍋のふたを開けた。
「久しぶりにおでんを見た」
「たくさん食べてね」
「クリス、シル公、待ちやがれ。アレの予定だろう?」
「!」
菜箸を持つシルバーと、皿を配るクリスタルの手が止まる。何かを企んでいるゴールドの口元がつり上がり、恐怖で冷や汗を流し出すシルバーとゴールド。
静かに立ち上がると、電気のスイッチに手を伸ばす。彼はどうしてもアレをやりたいらしい。
「野郎ども! 準備はいいか!」
「おー」
棒読みの返事とともに消された明かり。三人はおでんの入った土鍋に何かを入れ始めた。
そう、アレとは闇鍋だったのだ。ゴールドは二人が持ってきたものを土鍋に入れたことを確認。部屋の明かりをつけた。
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