初代図鑑所有者の中で紅一点の彼女の言う事は絶対のものである。
例えそれがトゲチックの様にギザギザしたー…ポケモン界の権威オーキド博士の孫であり、トキワシティのジムリーダーであるグリーンであってもブルーの行動を止める事は出来ない。

同期のグリーンですら止める事が出来ないのだ。
はちゃめちゃなブルーの言う事を後輩であるゴールド以下全ての図鑑所有者が逆らえる筈もなく。

「皆良く集まったわね!」

溌剌とした声でトキワジムに集まった自分以外の図鑑所有者を見渡してブルーは満足そうに笑った。

「ところでボク達を集めてどうするつもりなんですか?」

挙手してルビーが質問を投げ掛ければブルーはルビーに視線を投じてにまりと笑った。

「んふふふふ…。プラチナ!用意は出来てる?」

悪戯っ子が悪事を企む様な表情をするとブルーはプラチナに確認をした。

「はい。手筈は整っています。いつでも出発出来ますよ」

パチン。
プラチナが指を鳴らすとバババババと空から何かが羽ばたく様な音が。

「自家用ヘリかよっ!?」

ツッコミを入れるゴールドの隣ではクリスタルが引き攣った笑いを浮かべ、シルバーとグリーンは同時に溜息をついた。
wonderfulと呟き、凄いですねー、でけーと感嘆の声を上げるのはルビー、イエロー、レッド。
機械よりポケモンの方が良か…とぼやき、あんなのに全員入んの?と呆れた目で見るのはサファイアとエメラルド。
慣れた様子でヘリコプターを見上げるのはパールとダイヤモンドだ。

「やっぱ良いわねー。あたしも自家用ヘリ欲しいわ〜。ほら、あんた達ぼさっとしてないでヘリに乗るのよ!」

ブルーに促され、図鑑所有者全員が順番にプラチナ所有のヘリの中に入っていった。

「ところでブルーさん。ボク達どこに向かってるんでしょうか?」

イエローがブルーに聞くと彼女はウインクをして高らかに宣言した。

「水族館よ!」




「流石、有名な水族館ですね…」

だだっ広い水族館の館内を見渡しクリスタルは呟いた。

「でしょー?この前パパとママと行った時に皆と来たいなーって思ったのよ」

にこにこと笑うブルーを見てレッドとグリーン、シルバーが微笑む。
長い間両親と離れ離れになって生きてきた彼女はつい最近、両親と再会する事が出来た。
最近では離れ離れになっていた時間を埋める様に彼女達は家族としての時間を刻んでいる。
ブルーが両親に再び逢う事を強く望んでいたのを知るレッドやグリーン、シルバーはブルーが今心底幸せそうであるのに胸を撫で下ろした。
ブルーと辛辣な過去を送ったシルバーからしてみたらなおさらブルーの曇りのない笑顔は眩しく見えたであろう。

「これからは自由行動なんだけど、皆1時には水族館のロビーに集まってね。そこで案内人に連れて行って貰ってショーを見るから」

「自由行動なんですか?」

ルビーが首を傾げてブルーを見た。

「そうよ。何か問題ある?」

「いえ、そういう訳ではないんですけど、先程皆で来たいって仰っしゃっていらしたので…」

ルビーの言葉に合点がいったブルーは笑って言った。

「皆で水のショーを見たかったのよ!凄く綺麗だったから」

「クリスタルさん!オレと一緒に水族館を回って貰えませんか?」

成る程と頷くルビーの耳にエメラルドの緊張した声が届いた。
驚いて周りを見渡せば所々で誰と何処を回ろうかと相談する人々で賑わっていた。

「ええ、良いわよ。何処のコースから見る?」

クリスタルはしゃがんでエメラルドが見やすい様にブルーから貰ったパンフレットを広げた。
二人きりで回れる事に喜ぶエメラルドの頬は上気して赤くなっている。

「何水臭い事言ってんだよ!オレ達も回ってやるよ。つー事で男は黙って「漢の道、焔コース」だろ!」

クリスタルのパンフレットを奪い、ゴールドは行くぜ!シルバー、エメラルド、クリス!と言って先に行ってしまった。

「ちょっとゴールド!待ちなさい!」

ゴールドを追い掛けてクリスタルが走る。

「え、クリスタルさん!」

クリスタルへと手を伸ばしたエメラルドの頭をシルバーはぽんと撫でた。

「諦めろ」

「…………はぁ……」

がくりと肩を落とし、重い溜息を吐いたエメラルドはとぼとぼと歩き出した。

「パール、ダイヤモンド。私達はどのコースに致しましょうか?」

パンフレットを広げるプラチナの両隣に並んでパールとダイヤモンドは声を揃えて言った。

「この「夜の空、プラネタリウム」が良いんじゃない/か?」

「ではそちらに参りましょうか」

暗い色の帳が掛かっている扉を目指してプラチナ達は目的の場所へ向かう。

「グリーンはあたしと、イエローはレッドと別々のコースを回りましょうねー」

「ええっ!?」

グリーンの腕を引っ張ってブルーが言うとグリーンは溜息をつき、レッドとイエローは驚きの声を上げた。

「あたし達は「草原の野生」コース回るからレッド達は別のコースに行ってね。じゃーね!」

手を振ってレッド達から離れる。
ブルーとグリーンの後ろ姿を呆然と見送ったレッドとイエローは我に返ると困った様に笑い合った。

「とりあえず、どのコースにする?」

「あ…それじゃあ、ボク「雷のカーテン」が良いです。ヘリコプターの中でブルーさんが月と星に見立てた魚ポケモン達が優雅に泳ぐ姿がとても綺麗だったと仰っしゃっていたので」

両手を合わせてイエローがにこにこと笑うとレッドはふーんとパンフレットを眺めた。

「じゃあ、行こうか」

レッドはイエローの手を取って歩き出す。
あまりにもナチュラルな行動にイエローは慌てた。

「レレレ、レッドさん!」

「ん?何、イエロー」

「……いえ、何でもありません」

イエローは耳まで真っ赤になって俯くとレッドの手をぎゅっと握って「雷のカーテン」と書かれた看板にある目印通りに歩き出した。

一同の様子を眺めていたルビーは最後にサファイアを見る。
目まぐるしく動く光景に目を奪われていたサファイアはルビーに視線を向けられた事で我に返った。

「…あ」

「さて、ボクらも行こうか?コースは「水の都」で良いかな?」

笑って手を差し出すとサファイアはうん!と笑ってルビーの手を取り握った。


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