創造する女


冬にしては暖かな日差しが差し込む朝だった。
午後にはマント無しでも訓練が出来そうだ、そう思いながら東の空を見上げた。

朝食を摂るため食堂へ向かった。食堂に繋がるレンガ敷きのテラスの白い椅子に寄りかかり、こくりこくりと船を漕いでいるアイツを見つけた。
そっと近づき隣に座った。
今は閉じられて確認出来ない大きな瞳の下に小さな隈が出来ていた。
それを見て、ハァっと溜息が出た。
そんな溜息に気づいたのか、大きな瞳がゆっくり開いた。

「あ、兵長・・・、おはようございます」

「おはようじゃねぇ。また徹夜か?」

「いえ、少しは眠れました」

そう言って控え目に笑った。

「あんまり根を詰めるなよ」

「はい、訓練には支障をきたさないようにします。あれ?今日は執務だったかな」

あれ?あれ?と首を左右に傾げながら言った。

コイツには頭が下がる。
コイツがサイトを立ち上げてからもうすぐ半年になる。
その間、一日も休むことなく、作品を創ってアップし続けた。雨の日も風の日も。具合が悪くて書きたくない日もあっただろう。だが、俺のためか、訪問するファンのためか、止めることをしなかった。
そして先週、40000Hitを迎えた。
どうにかして労いたい。

「朝食は済んだのか?」

「眠くてあまり食欲がないのです」

「喰いてぇ物はねぇのか?」

「そうですねぇ、ゆで卵、半熟のやつ」

甘えるでも媚びるでもなく、ただ食べたいと言うコイツが愛しい。
持ってくるから待っていろと言って、食堂へ向かった。
コックに半熟のゆで卵を頼んだ。スプーンとゆで卵を持ってアイツの所へ戻った。


アイツは何やら外を見ながら口をパクパクさせていた。
何をしているか分からなかったが可愛らしい様子を暫く眺め、パクパクが止まったところで、背中をすっと指でなぞってやった。

「きゃあああああ」

思ったより驚いたコイツの声に、俺の方が驚いた。
ゆで卵を落としちまうところだったろうが。

「もうっ。せっかく素敵なフレーズが浮かんだのに、忘れちゃったじゃないですか」

頬を膨らませて怒る姿も愛しいと思う。
だが、そうだ。コイツは一旦機嫌を損ねると、暫くはダメだ。

「ほら、ゆで卵喰ってろ。俺は食堂で喰ってくる」

ゆで卵とスプーンをテーブルに置いてから、膨らませた頬を両手で挟み、ギュッとつぶしてやった。


朝食を終えて、テラスの前を通ると、まだアイツがいた。
今度は机の一点をじっと見つめ、それから大きな瞳を上にやったり、下にやったりしている。そして時折ニヤニヤしてみたり、険しい顔になったりする。
だがそんな表情豊かな顔にも疲れが見え隠れしている。
少しでも元気になって欲しい。

「まだ居たのか。ちゃんと喰ったか?」

声を掛けるとはっとした顔をした。

「はい、ありがとうございました」

一旦俺の顔を見て、また机へ視線を戻した。
何か楽しい話でもしてやれば、元気が出るかも知れないな。
そう思い、隣に座り、ハンジから聞いた面白い話なんぞをしてやった。

始めのうちは、そうですか、と返事を返してきたが、そのうち、へーと言う返事になり、最後の頃には相槌さえしなくなった。それでも元気に笑う顔が見たい俺は、話を続けた。すると、ガタッと椅子を鳴らして立ち上がり、俺に言った。

「兵長・・・。私、兵長のことを妄想するのに忙しいので、黙っていて頂けますか?」

おい、そりゃあ、目的と手段が入れ替わっちゃいねぇか?
そう言おうと思って止めた。
俺は、悪かったな、と言って立ち上がり、その場を離れた。
じっと机を見つめる小さな背中に、いつも感謝しているぞ、と小さく呟いた。

End



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