Road of the full moon 9


暫く黙って抱き締めていたリヴァイだったが、腕を緩めた。

「勝手な事をしてすまなかった……」

だが、二人きりのこの時間は、神官達から俺への贈り物なのだろう……と、リヴァイは言った。
どうにもならない想いを抱え、それでも、無事に用が済めば自分の世界へと帰らなければならない。そんな自分への、気遣いなのだろうと思っている。

何も言えずにいたナマエから、名残惜しそうに手を離し……リヴァイはソファーへと戻ろうとした。

「違います!」

するりと抜けていくリヴァイの腕を、再びナマエが掴んだ。

「これは……私の為に……」
「……?」
「リヴァイさんがただの男だと仰るのであれば、私も……叶わぬ恋をしてしまったただの女です」

掴んだ手を胸に押し付けるようにして、ナマエが振り返った。

「わかり……ますか? 胸が……壊れそうです」

ナマエにしてみれば、かなり大胆な行動だろう。だが、言葉にならない……出来ない想いを伝えようと必死なのだ。そして、言葉に出せないのはリヴァイも同じなのだろう、ナマエの手を片方掴んで自分の胸に当てた。

互いに想っている、それを直接言葉にしてしまったら……離れ難くなるのはわかっている。
だが、鼓動で……見詰め合う瞳で、想いを伝え合っている。

(もう……充分だ)

想いは……同じなのだ。

しかし、本来ならば女神とこうして向き合う事や想いを通わせる事など有り得ない。

(共に寄り添い、生きる事は叶わない)

ならば、受け取った想いと己の想いを抱いて役目を果たし、リヴァイはナマエの居ない世界で生きていく覚悟を決めた。

ナマエもまた、自分の立場を考えればこれ以上どうする事も出来ない。しかし、リヴァイをこのまま帰してしまったら後悔するのはわかっている。

その時、ナマエは神官達の言葉を思い出した。

『女神様だからって、無理に我慢する事は無いんですよ』
『時には、我が儘を言っても良いんです』
『私達は、いつでも、どんな時でも……ナマエ様の味方です』

言われた時は、何の事を言っているのかわからなかったナマエだが、今ならわかる。
静まり返った二人きりの部屋で、ナマエの鼓動がまた落ち着きを無くした。

「リヴァイ……さん」

強く強くリヴァイの手を抱き締めたナマエはゆっくりと目を閉じ、小さく息を吐いた。

どうかしたかと訊こうとしたリヴァイだが、大きく開かれたナマエの目が、熱く強く映したリヴァイを捕らえた。

「お願いがあります」
「……あぁ、俺に出来る事なら」
「リヴァイさんにしか、言えません」

恥じらう様に少しだけ目を逸らしたのを見て、リヴァイは胸にあるナマエの手を……早く言えと急かす様で、それでいて祈る様な気持ちで握った。

「今夜だけ、今だけで良いのです……」
「……」

声を……身体を震わせ、必死に言葉を探すナマエに、リヴァイは"望んでくれ"と願いながら次の言葉を黙って待った。

「リヴァイさんを独り占めしたい……」

それは、どんな意味なのか?
リヴァイはそっと握っていた手を離すと……その手でナマエの頬に触れた。

「もう……してるだろう? それから、どうしたいんだ? 思ってる事を言えば良い」
「でも、あの……」
「このまま一晩、こうしていれば良いのか?」

それでも良いと思うナマエであったが、断られても当たり前だと思えば、言わずに後悔するならば……と、顔を見られるのは恥ずかしいのか、ナマエはリヴァイの肩に頬を寄せた。

「リヴァイさんと、身も心も……ひとつに……」

震える声は小さいが、静かな部屋でははっきりと聞こえた。リヴァイはナマエの背中と腰に手を回すと、先程よりも力を込めて抱き締めた。

「お前が……望んでくれるなら」

神官の言葉は、こういう事なんだろう……と、耳に触れそうなところで囁いた。

「リヴァイ……さ……ん、んっ……」

願いが叶うのかと、ナマエが驚いて顔を上げて呼べば、リヴァイはナマエの口を塞いだ。言葉で説明するなんて、もう……無理だったのだろう。

頬や額に触れるだけのキスしかした事の無いナマエにとって、言葉を発する為に開いていた口の中までリヴァイが入ってくるとは思ってもいなかった。
驚きと戸惑い……ナマエは咄嗟にリヴァイの背中へと手を回し、確りと服を掴んだ。

(私が溶けてなくなりそう……)

心が、身体が……喜びに震えている。気が遠くなりそうな、このままふわりと何処かへ行きそうな感覚に身を任せようと思った途端、リヴァイがナマエから顔を離した。

「は、っはぁ……っ」
「ナマエ……息は止めなくて良い……」

何となく様子がおかしいと感じたのか、離して正解だったとリヴァイは眉を下げた。大きく……止めていた間の分まで息をするナマエは、知らなかったから……と、恥ずかしそうに笑った。

「ベッドに……」
「はい」

向きを変えて歩こうとしたナマエだが、ひょいと抱き上げたリヴァイが、2、3歩の距離だが抱えて歩いてナマエを寝かせると、額に、頬に、唇に……限られた時間ではあるが、リヴァイはゆっくりと甘く口付けた。

「服を……脱いでくれ」

キスをしながら脱がそうと思ったのだろうが、見た事もない服はどうなっているのかわからなかった様で、ナマエを引き起こすと、恥ずかしかったのだろう……背中を向けて自分も脱ぎ出した。

(綺麗……)

さっさと脱いだナマエは、リヴァイの背中に見惚れていた。堪らずに手を伸ばして背中を撫でると、リヴァイが驚いて身体を跳ねさせた。

「っ、何を……」

更にナマエは、首に背中に何度もキスをして、後ろからリヴァイを抱き締めた。

「女神の加護と……纏う護りを……」

そう……ナマエが見つけた文献には、こうして直に触れながら、護りの鎧を着せるのだと書かれていたのだ。

「横になって下さい」

仰向けに寝かされたリヴァイはまた、肩や胸に口付けられながら、これは儀式なんだろうと思いつつも、刺激に跳ねるモノを手で隠そうと必死になっていた。

(他の奴が戦士でも……こうしてやったのだろうか……?)

ゆっくりと爪先まで唇で触れたナマエが、隠していたリヴァイの手を退かした。

「此処も……」
「なっ、オイ……そこはっ!」

止めてくれとも言えず、両手で掴まれ、先へと顔を寄せていくのを……止めようと思えば止められた筈だが、リヴァイは動けずに見ていた。
唇を押し当てる様に触れると、リヴァイは身体を震わせた。

(……? これは……?)

先へとキスをしたナマエは、肌の感触とは違うものに触れた。ゆっくりと離し……それが何かを確かめようと思ったのだが、光の筋がリヴァイとナマエを繋いだ。

(光って……?)

当然、リヴァイもその光景を見ていたのだが、何も知らないナマエは神秘的だとうっとり見ていた。
リヴァイはナマエと繋がったそこに向けられた視線に、熱が集まるのを感じていた。

「拭け……」

リヴァイが堪らず大きく跳ねさせると、二人を繋ぐ光の筋はプツリと切れた。そこで漸く拭くものを……と、咄嗟に自分のシャツをリヴァイが差し出した時には、ナマエは舌で唇を拭っていた。

「大丈夫……です。で、では……続けますね」
「あ、あぁ……」

続きと聞いて、リヴァイは一瞬だが……ナマエが口に含む想像をしてしまった。
しかし、恥ずかしさを隠す様に目を閉じた。これが終わらなければ、リヴァイが期待する"次"へは進めないのだろう。

(これを……入れれば良いのよね……?)

ナマエは掴んだままだったモノを確認する様に見て、一旦離すとリヴァイに跨がる様に足を開いた。
再び掴むと、そこへと腰を落として行った。

(今度は何を……?)

再び掴まれ、恐る恐る目を開けたリヴァイの目に映ったのは……驚くべき光景だっただろう。続けて押し付けられる感覚に声を発した。

「待て……」
「すみません。これで最後なんですが、上手く行かなくて……」

挿れようとしている……のはわかるが、そのまま挿れたらどうなるか、リヴァイは身震いして起き上がった。

「待てと言ってるだろう?」
「ダメです! こうしないと……」
「だから、止めろとは言ってねぇ……寧ろそうしてほしいのは山々なんだが、そのままじゃ駄目だ」
「……?」
「こういう事をした事は……」
「あ、ありません……」
「なら、少し待ってくれ」

起き上がったリヴァイは、そのままナマエを後ろに倒して寝かせると、どうして良いのかわからないのか……足を開いたままのナマエへと手を伸ばした。

「何事も、準備ってもんが必要だ……」
「すみません」
「謝ることはねぇ……お前が大変なだけだ」
「……? あっ、な、何を……」
「このままじゃ、挿れられねぇ」

力を抜いて少し我慢しろと言いながら、リヴァイはナマエのナカへと少しだけ指を差し挿れた。

(やはり、これじゃな……)

真剣にやっていたからか、そういう行為と思っていないのか、ナマエは濡れていない。そんな状態で続けていたらと思うと、リヴァイは小さく息を吐いた。
そのまま指で解してやるのを諦め、リヴァイは大きく足を開かせ顔を寄せた。

リヴァイの舌がナマエに触れると、驚いて声を上げた。だが、まるで焦らす様にそっと舌を動かし続けるリヴァイは、ナマエの声が鼻にかかり……甘い声に変わるまで黙って続けた。

(そろそろか……?)

時折腰を揺らし始め、小刻みに身体を跳ねさせるのを合図に、リヴァイは顔を上げて指を差し挿れた。

「んっ……」
「もう少しだ」

頬を染めて小さく頷いたナマエは、途端にナカで動き出した指に驚いた。

(な、何でこんな事を……? でも、リヴァイさんが必要だと言うのなら……)

身体がおかしいし変な声も出る……と、ナマエは落ち着かない。だが、早く続きをと思うより、もっと触れていて欲しいとさえ思う様になっていった。

「もう、良いだろう。挿れるぞ?」

だが、リヴァイの言葉で思い出した。

「だ……ダメっ……です……」
「……?」
「わ、私がやらないと……」

挿れりゃ良いだけなら、どっちがやっても変わらないだろうと思っていたリヴァイだが、ナマエが必死に起き上がるのを見て、後ろに倒れる様に横になった。

(これが終われば……)

上手く力が入らない身体で、それでもリヴァイの腹の上に這い上がったナマエは、先程の様に……リヴァイを宛がった。

「ゆっくり……だぞ」
「はい」

奥まで確りと包み込んで、最後の言葉を唱えれば鎧は完成する。ナマエは、それだけを考えてそっと腰を落とした。

「ん……っ、ぁ……」

リヴァイのお陰で、思ったよりも呆気なく先がナマエに入り込み、敏感になっている身体を震わせた。
その感覚に戸惑い、不安と恐怖を瞳に映すナマエだが、途中でやめるという選択肢は無い。
グッと更に沈め……痛みに顔を歪めても、そのまま最後までゆっくりと迎え入れた。

リヴァイはナマエの様子を見ながら、思いっきり締められている事でナマエは辛いのだろうと思ったが、ここで声を掛ける事は出来ないと耐えた。

「こ、この身をもって包みし……護り……っ、我が想い……命尽きるまで続く護りを……与えると誓う」

リヴァイの胸と自分の胸に触れながら唱えたナマエは、「口付けを……」と、リヴァイに顔を寄せた。頷き、迎える様に頭を持ち上げたリヴァイとナマエが触れ合うと、ナマエからリヴァイへと何か大きな力の様なものが流れ込み、リヴァイのモノがナマエのナカで膨れ上がる様にして跳ね、弾けた。

(なっ……)

抗う事も何も出来ない、これでもかと溢れ出しナマエのナカを満たせば、ナマエからも身体中に力が流れ込む。
気が遠くなりそうな快感の波が押して引いてを繰り返す。

(ナマエ……愛してる……)

もう……駄目だとリヴァイが意識を手放そうとした時、ナマエが顔を上げた。

「これで……あ、あぁっ……リヴァイさ……っん、あぁぁぁぁぁ!!」

終わりましたと言う前に、リヴァイはナマエの腰を抱き抱え、何度も奥まで突き上げた。その度に、意思に反して注ぎ込んだものが溢れ出し、掻き出し、それがもうなくなったであろう頃、リヴァイはグッと奥に押し付けてイった。

ナマエの背中や尻を満足そうに撫で、リヴァイは幸せそうに息を吐いた。
そこで漸く目を開けたリヴァイは、 腹の上でぐったりと浅い息をしているナマエに気付いた。

(俺は……)

己の想いと欲に任せ、何て事をと思ったところで取り返しのつく事ではない。
掛ける言葉も見つけられず、抱き締め、「すまない」と……小さく震える声で言った。

(愛しています……)

リヴァイの激しさに身も心も翻弄されていたナマエだが、何度も何度も胸に響いたリヴァイの想いに、やっと応える事が出来たのだろう。リヴァイの頬に触れ、想いを伝えると微笑んで眠ってしまった。



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