Affection and jealousy


俺の日課は朝の掃除から始まり、馬の世話等もあるが、最近新たにひとつ増えた。

「ナマエ……」

声を掛けると、黙って俺の横に来る……最近班長に昇格したばかりのナマエは、俺の恋人だ。

付き合い始めて3年経ったが、班長になった事で忙しくなった。それに加えて面倒見の良さや人の良さもあるのだろう、俺と過ごす時間が大幅に減った。

面白くねぇ……

班長として、慕われ人望があるのは悪い事じゃねぇが……悪くはねぇが……

……俺も構え。

「リヴァイ、どうかしたの?」
「あぁ、ちょっとな」
「今から、温室に……花の世話をしに行こうと思ってたんだけど……」
「俺も行く」
「ん、じゃあ、一緒に行きましょ」

裏庭に出ると、人も殆ど居ねぇ。ナマエはそっと腕を絡めて歩く。

……落ち着くな。

そう、俺の日課は『ナマエの補給』だ。
それまでは、仕事中も夜も……暇さえあればナマエは俺の所に来ていたのだが、最近なかなか来れない。ならば……と、俺が出向く様になったのだ。

「ナマエ……」
「んっ……」

誰も居ねぇのを確認して、キスをした。ナマエが背中を叩くと止めてやるのだが、今日は少し長めだった。

「リヴァイったら……」
「あぁ、お前が忙しいのが悪い」

さっきも、俺が呼ばなきゃいつまで話に付き合わされていたかわからねぇ。
やる事は沢山あっても、時間内には終わる量だが……ナマエが毎日遅くまで掛かっちまうのは、質問だ何だと話がしたいだけの奴等にまで、付き合ってやるからだろう。

「どうせ、今夜も来れねぇんだろう?」

そうは言ったが……俺の機嫌は少し回復していた。

「ごめんね、明日は行ける様に頑張るね」
「あぁ、だが、無理はするなよ」

言ったところで、無理するんだろうがな……

暫く温室で花の世話をするナマエを見ていたが、俺も最後まで付き合える程は暇じゃねぇ。

「またな……」
「リヴァイ、ありがとう」
「あぁ」

温室から出て歩くと、別な方向から新兵の男が温室の方へ走って行った。

チッ、アイツは……

仕方ねぇなと言いながら、俺は温室の方へ戻った。ガキとは言え、男だ。

「何してやがる、クソガキが……」
「へ、兵長!」
「リヴァイ、誤解しないでね……走って来て、躓いちゃったみたいなの」
「……そうか?」

俺がクソガキに訊けば、何度も頭を縦に振った。

「す、すみません……」
「なら、いつまでそうしてるつもりだ?」

バッと離れた二人に、溜め息を吐いた。

「言い忘れたんだが、明日は泊まるつもりで来い。帰してやれそうにはねぇからな……」
「り、リヴァイ……」

赤い顔をした新兵は俯いた。

「返事は?」
「はい」
「あぁ、楽しみにしてる」

何もこんな時に……と、言いたかったのだろうが、こんな時だからだ。そこに居るガキはナマエが好きだと言っていた。牽制は必要だろう?

今度こそ、仕事に戻るべく……俺は温室を後にした。




その夜……暇を持て余した俺は、酒でも拝借するかと食堂へと向かった。会議と称して飲みながら話したりする時の為に、良い酒がある。

食堂に着くと、灯りが漏れていた。

消灯はとっくに過ぎてるが……?

そっと覗くと……こちらを向いて座っているのはナマエだった。背中を向けているのは……どうやら昼間のガキの様だ。

懲りねぇ奴だな……

すぐにでも、部屋に戻れと蹴り飛ばしてやろうと思ったのだが、男の癖に泣いていやがった。

先日、初の壁外調査で、残念ながら新兵は7割の被害が出た。精神的にはかなりのショックを受けただろう……そう思えば、多少の事には目をつぶってやろうと、俺にしては甘い事を考えた。

だが……

「班長、お、俺を男にして下さい!」

オイ、それがベソかいてるガキの言葉かよ……?

「そうね、出来る事はしてあげるわ」

ナマエ? お前は何を言っている?

耳を疑う言葉に一瞬呆然としたが、ガタンと立ち上がったガキは、ナマエの前に立って抱き着いた。

「そこまでだ」

派手に入口のドアを開け、ゆっくりと睨みながら近寄れば、ガキはガタガタと震え出した。

「俺だって我慢してるんだがな……」

お前は、人の女に何頼んでんだ?

言葉にはしなくとも、そのくらいはわかるのだろう。怯えた目で見ているが、それをナマエが庇った。

「リヴァイ、この位の事でそんなに怒らないであげて?」
「このくらい……だぁ?」
「強くなりたいって……でも、まだ甘えたい年頃でしょう?」
「は? お前は……危機感を持て」

俺は昼間同様に引っ付いたままのガキを掴んでぶら下げた。

「……見てみろ。ココを鍛えて欲しいって言ってんだよ、このガキは」
「りっ、リヴァイ?」

ナマエの前には、ズボンの前を膨らませたガキがぶら下がっている。

「甘えたいガキだ? それでも男なんだよ……なぁ?」
「す、すみません……」

ポイッと床に投げ、お前は甘過ぎるんだ……と、ナマエを見れば、呆然としている。まぁ、そりゃそうかも知れねぇが、ったく……

「俺は今、すげぇ怒ってるってわかるか?」
「はい……」

ナマエに寄って顔を覗き込むと、怯えた顔を見せた。

「わ、悪いのは俺です! ナマエさんは……」
「一丁前に庇ってるつもりか? だがな、ナマエは俺の女だ。悪いようにはしねぇが……躾直さねぇとな。なぁ、ナマエ?」
「いっ、今……?」

は?

気が動転してるのか、ナマエの言葉に俺が驚いた。部屋に連れ帰ってと思っていたのだが、何だ?

「そうだな、此処でヤるか?」

本気でそうは思ってねぇが、どす黒い感情はナマエもガキも甚振(いたぶ)ってやれと唆(そそのか)す。

「ガキの前で、お前を躾るのも悪くねぇな」
「あ……許して……」

ナマエの揺れる瞳が堪らねぇ……

「てめぇは見たそうだよなぁ?」
「い、いえ、そんな事は」
「あ? ココは正直だがな?」

爪先で股間を押してやれば、情けねぇ声を上げやがった。

そんな趣味はねぇが……

妙な興奮を覚えたが、このまま続ける訳にも行かねぇ。

「リヴァイ、やめてあげて……?」
「なら、どうするんだ? お前がコイツの分も背負うのか?」

終わりにしてやろうと思った……そこでまたナマエが庇うのを聞いて、苛立った。

俺は、ナマエの髪を掴み……片手で取り出したモノを口に突っ込み、横から見ているガキにも、てめぇで出してしごけと命令して、ナマエの羞恥を煽る。もっと奥まで咥えろと押し込み、引き……俺はナマエの口を犯す。
一度吐き出し、それでも収まらねぇモノを、ナマエの下だけ脱がせ、自分で挿れろと、俺の上に座らせ……

……っ、やべぇ……

出来もしねぇ妄想しちまった。

「ナマエの思い遣りに感謝しろ」

俺はガキを見て言った。

「次はねぇ……その時は、ただじゃ済まさねぇぞ」
「も、もう……しません」
「嘘じゃねぇな? なら、とっとと失せろ」

逃げる様に食堂から出て行くのを見て、ゆっくりとナマエに視線を向けると、何とも言えない顔で俺を見ていた。

「お前は……なんて顔してやがる」

思わず頬を撫で、額にキスをした。

期待する様な、熱を孕む瞳に気が緩んだ。そっと頭を抱えると、ナマエの腕が腰に回って顔を腹に擦り寄せた。

「心配……させるな」
「リヴァイ……」
「お前をこうやって、閉じ込めちまいたくなるじゃねぇか……」
「ごめんなさい」
「あぁ……」

嫉妬……俺の沸点は低いのも自覚しているが、いつかそれがナマエを壊しちまうんじゃねぇかと思う事もある。だから、頼むから、俺を不安にさせないでくれ……

ナマエを連れて部屋に戻ると、何もせずに抱き締めて眠った。
不安そうにするナマエには「何もしねぇのが今回の躾だ」と、期待していたのかと笑ってやった。

翌日の夜、着替えまで確りと持ってやって来たナマエを……甘く甘く蕩けさせ、心行くまで堪能した。




その後も、俺の日課は変わらねぇ。
だが、何を思ったのか、新兵のガキが俺に付き纏う様になった。

「兵長、女を躾るというのは、何をすれば良いんですか?」
「あ?」
「俺も、兵長みたいになりたいです!」

そりゃ、意味が違う気もするがな……

「その前に、一人前の兵士になれ。その後で、そいつがいねぇと生きていけねぇと思うくらいの相手を見つけろ」
「はい!」
「そうしたら、いつか教えてやるよ」
「はい!」

……そうだ。想いが強ければ強い程、そのくらいでと思う事にも我慢が出来ねぇんだ。

無邪気に、挨拶だろうが、ナマエの肩や背中を叩いて通り過ぎる同期の奴等や、ナマエと腕を組んで歩く女にすら……俺は嫉妬する。
それは異常と言われようが、それが俺の愛し方だ。

「ナマエ……」

そろそろ返しちゃくれねぇか……? と、今日も俺はナマエを呼んだ。

End



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