街に着いて飯を食った後、俺は雑貨屋などを回っていた。 カップや歯ブラシ、タオルも新しい物を何枚か買い、後は何かと考えた。 「菓子も買っておくか」 他にも幾つか買い物を済ませ、荷物を抱えて歩いていると、見知った顔のガキ共が娼館の前で彷徨いていた。 「何やってんだ?」 普段なら素通りする場面だが、そういえばと声を掛けた。 「へっ、兵長?」 「教えていただいたので、来てみたのですが……」 「入り辛くて……」 お前等だったか。まぁ、気持ちはわからなくもないが…… 「そうやって彷徨いてる方が、人目につくと思うが……」 この程度の事で狼狽えてどうするんだと言っても、足は動かない。 「……ほら、入れ」 ドアを開けてやれば、慌てて入った。 「客を連れて来たが、全員店は初めてだ。手取り足取り教えてやってくれ」 店主にそう言えば、「兵長さんは」と訊かれたが、俺は案内係だと断った。皆を奥へと連れて行くのを見て、店を出ると自室へと歩いた。 上手く出来りゃ……良いがな。 店の女達がリードして、そこは問題無いだろうが、ガチガチに緊張していた顔を思い出し、思わずクッと笑っちまった。 ……何事も、経験だ。 足取りも軽く戻った俺は、買って来た物を整理して新しい本を開いたのだが…… 間違えた……みてぇだな。 タイトルを見て買って来たのだが、中身は恋愛小説だった。仕方無くもう一冊買った方を読んだ。 終業の鐘を聞いて、私はゆっくりと空を見上げた。 綺麗な色…… 夜の色と夕焼けの色が、幾層にもなって混ざっていく。 こんな気分で空を見たのは久し振りだと思いながら、夜へと移ろうのを見ていた。 「どうしよう……」 お風呂を済ませ、食事をしてから兵長の部屋へ行こうと思ったけれど、この時間は人も多い。シャツの中を覗けば、まだ確りと痕は残っている。こんなのを他の娘に見られたら、間違い無く訊かれるだろうと思う。 上手く誤魔化せるとも思えないし…… 人が少なくなる時間を待てば、遅くなってしまう。悶々と考えていると、空はいつの間にか夜の色になっていた。 ここで考えていても、時間の無駄だと戻って着替え、食堂へ行けば……兵長も食事をしていた。 今……私を見た? 周りに人が居なければ、向かい合って座っている様な状態では、顔を上げる事が出来ずに黙々と食べた。 兵長が立ち上がるのが見え、顔を上げると……目が合った。フッと目を細めて私を見ると、兵長はそのまま出て行った。 『待っている』 そう言われた様な気がして、急いで食べて食堂を出ると、少し先の方で壁に凭れた兵長が見えた。 一般の兵士と幹部の部屋は、建物が別れている。人気の無い方へと歩き出した兵長を離れて追う様に歩けば、建物の入口を入ったところでまた、兵長は壁に凭れて待っていてくれた。 「お疲れ様です」 「あぁ」 会話はそれだけで、部屋まではまた、黙って兵長の後ろを歩いた。 ここを通れば人に見られる事も少ないだろうと、案内する様に……ナマエを気にしながら、なるべく人の通らない通路を歩いた。 部屋に入っても、ナマエはドアの前に立ったままで、俺の言葉を待っている様にも見える。いきなり、今日はこれをするというのも変だろうと思ったが、話す事があったとソファーに座らせた。 「飲め」 紅茶を淹れ、俺も座って飲み始めると、漸くナマエもカップを持った。 「朝話した件だが……」 「はい」 「エルヴィンの許可が出た」 「……そ、そうなんですか?」 「あぁ、明日辞令が出る」 驚いた顔をしているのを見て、気分が上向いた。たかがこんな事で"どうだ"と思う俺もどうかと思うが、「ありがとうございます」と言われれば、気分が良い。 「時間が惜しい……」 飲み終えたのを見て、俺は立ち上がった。慌てて立ち上がったナマエの手を引いて寝室に入り、ベッドに乗せた。 下着だけにすれば、痕はまだ残っていた。邪魔だと下着も取ろうとすると、そこでナマエが僅かだが抵抗した。 「すみません、お風呂に入って無いのですが……」 「あ?」 ……そんな事か。 「問題ねぇ、後で使えば良い」 先ずはどうするかと考えた。咥えて幾ら、突っ込んで幾らと細かく設定してある。とすれば、出来るだけ色々ヤればナマエの稼ぎは増える。 先ずは……と、俺も全部脱いで座っているナマエの前に立った。 「しゃぶって勃たせろ」 目の前には普通の状態の兵長の***がぶら下がっている。しゃぶれというのは、口でという事だろうと口に含んで舐めたり吸ったりしていると、だんだんと大きくなってきた。 何で、こんなに変わるの……? 大きくなれば、苦しくなる。それでも、喉の奥まで届くのも我慢して続けた。 「そこまでだ」 声が聞こえるとすぽんと引き抜かれ、出るまでじゃないのかと顔を見上げれば、トンと押されて後ろに倒れた。 「声は我慢するなよ?」 「は、はい……」 「気持ち良ければ、イイと言え」 「は……い」 言いながら、兵長は胸を掴んで先をこねたり潰したりしている。 「んっ……」 声を我慢するなと言われても、どんな声を出せば良いのかわからない。考え込んでいると、「こっちに集中しろ」と叱られ、お仕置きだと指を差し込まれ、言葉でも責められた。 「あっ……ぁ……ダメっ!」 おかしくなっちゃう…… 「違うだろう?」 止めて良いのかと訊かれ、嫌だと……もっとして欲しいならそう言えと言われ、そのまま言えば、兵長の指がナカで暴れて硬くなったところも弄られ……我慢出来ずに大きな声を出した。 「善かったか?」 「は……い……」 「今度は俺の番だ」 俯せにされ、腰を引き上げられた。お尻を高く上げた格好は……物凄く恥ずかしかったけれど、そう思った時にはグッと押し込まれ、そんな事はどこかに行ってしまう程、擦られて奥を突かれて声を上げていた。 上を向かされたり横向きになったり……今どんな格好なのかもわからなくなった頃、私のナカから兵長が抜け出した。 「今夜はこのくらいで終わりにしよう」 「はい……」 頑張ったなと私の頭を撫でると、兵長は隣の部屋に行ってしまった。 このくらいで……? って、もう、力が入りません…… やっとの事で起き上がると、風呂を使えと真新しいタオルを渡された。洗面所には歯ブラシも用意したから使って良いと言われ、フラフラと向かえば……可愛いコップと歯ブラシが増えていた。 これ、兵長が……? お風呂から出ると、入れ替わりに兵長が入った。出るまで待っていろと言われ、ソファーに横になって待った。 風呂から出ると、ナマエはソファーで眠っていた。そのままベッドに運んで寝かせてやりたいところだが、明日は仕事だ。 「ナマエ、起きろ……」 すみませんと起き上がったナマエに、今日の分だと封筒を渡した。 「こんなに……?」 「あぁ、これとこれ、後はこれの分で間違ってないと思うが……」 頷いたナマエだが、何かを考えている様だ。 また、これは多いと……思うのだろうか? 普通ならば、それこそ一晩幾らと決めれば良いのだろうが、それじゃ大して稼げないだろうと考え、あれこれやって増やしていける様にした。 慣れたら、メニューを増やしてやれば、更に稼ぐ事も出来るだろうと考えているが、そこで、今朝思った事を思い出したが……それは無理だろうと蹴散らした。 兵長が料金表を指差し、その数字を足せば貰った物と同じ金額になった。 そ、そんなに色々してたの……? されるままだった私は、驚いた。かなり細かく設定されているけれど……1回幾らという方がお得でしょうにと思って気付いた。 これは、私に稼がせるための設定なんだ…… 兵長は、自分が得する事は考えていない。それこそ、そういう事がしたいだけならば、一晩だけでもと話している兵士も多い、そういう娘の方が得というのも変だけれど、そういう方法もある。 「ありがとう……ございます」 涙が、溢れてきた。こんなに良い人はそうそう居ないと思うと、感謝と申し訳なさでいっぱいになってしまった。 「泣く様な事があったか?」 「いえ、お気持ちが嬉しくて……」 「俺は何も……」 「リヴァイさんには、何の得も無いですよね?」 「無い事はない。態々出向く必要が無いのは、楽で良い。それに、これなら毎日でも出来るだろう?」 「えっ? ま、毎日ですか?」 揃って目を大きく開いた。 「例えば……だ。娼館に毎日行くのは無理があるが……という意味だ」 これが毎日だったら、多分、私が持ちません…… 「そっ、そうですか」 「あぁ、仕事も訓練もある。無理はさせられねぇだろうが」 「すみません」 「いや、その事に関しては、俺がおかしいとわかっている」 「……?」 「別に我慢が出来ねぇ訳じゃねぇが……」 「……?」 「かなり……あれだ、性欲が強いんだ」 「……!」 思わずぽかんと口を開けて見てしまった。でも、それなら三日続けてそういうことをしているのも頷ける。 「無理な時は、言ってくれ」 「はい」 「金が足りなくてというなら、1回で出来るだけ稼げる様にしてやる」 「いえ、あの……そこまでは……」 「……そうか」 遅くならないうちに帰れ……と、石鹸を持たされ部屋を出された。 「匂いが違うと、変に思われたりするだろう? 俺が使ってるやつだ」 そう言った兵長に頭を下げ、「おやすみなさい」と背中を向けた。 来る時に通ったところを通ると、誰にも会わずに部屋まで帰る事が出来た。 ベッドに横になって大きく息を吐くと、思い出した。 性欲旺盛……なんだ。 更に、『英雄、色を好む』という言葉を思い出し、成程と思った。もしかすると、体力と性欲は同じなのかも知れないとも思った。 翌日、班長から辞令の紙を渡され、それから毎日、仕事の合間に兵長の仕事を手伝いながら、その日の予定を確認したり、終業間際に行けば、仕事が終わると口でしてくれと頼まれる様にもなった。 気遣ってくれているのか、それから3ヶ月経ったけれど、3日続けて抱く……という事は無かった。 そして、不思議な事に……私と兵長の関係については誰にも知られていない様だった。 [ *前 ]|[ 次# ] [ main ]|[ TOP ] |