12月31日 朝方、普段よりも早く目覚めたリヴァイは、早く寝たからだろうかと起き上がった。 (此処は……何処だ……?) 寝たのは自室だった筈だが、見た事も無い部屋だった。そして……横で眠っている人物に驚いた。 (何故だ? 昨日は置いて帰った) そんな関係になった覚えは無い……のだが、ナマエもリヴァイも服を着ていない。これは何だと焦るリヴァイだが、全くもって記憶に無い。 (昨日はそこまで飲んでもいねぇ……) 素っ裸であるが、リヴァイはベッドから降りると……カーテンを少しだけ開けて外を見た。そこには、見慣れぬ景色が広がっている。 「一体……どうなってやがる……」 思わず声を漏らしてしまう程、リヴァイは驚いている。それもその筈だ、周りはどこまでも続きそうな平原で、巨大樹が遠くに見えていた。 (此処は……壁外なのか……?) 寒さにブルッと身震いしたリヴァイは、ベッドに潜ろうとしたが……そこに寝ているナマエにやはり記憶は無いと考えるが、答えなど出ない。 だが、そこで漸く……これは夢ではないのかと、しっくりと来る答えを思い付いた。 (そうか、そうだよな。それなら……取り敢えず、また寝ちまえばいい) 次に目覚めれば、きっとそこは自室で……見慣れた景色が見れるのだろうと考えた。 モゾモゾと抜け出したベッドに潜り込んだリヴァイは、ナマエに背中を向けて目を閉じた。 「ん……リヴァイ冷たい……」 後ろから、抱き締める様に身体を密着させて来たナマエに驚いていると、背中にキスをしたナマエの手が、リヴァイの胸や腹を暖めようとしているのか、撫でている。 「っ、オイ……」 段々と下がっていく手……だか、肝心な所を素通りして太股を撫でる手に、リヴァイは小さく抗議した。 (変な期待させやがって……勃っちまっただろうが……) と、思った次の瞬間、期待通りの場所に手が添えられた。 「ココは熱いね……」 耳のすぐ近くで囁かれ、同時にぐっと握り込まれたリヴァイは背を反らした。 「っは、おまっ……」 まるで自分の手の様に、的確にイイところを刺激され、促される感覚には慣れていない。先から溢れ、塗り広げられながら押し潰される様にされると、腰が引けた。そして、その手に今度は押し付けようと前に出す。 「ぁ……くっ……」 このまま身を任せてされるがまま……放ってみたい……と、思考と感覚を交替させようとしたが、リヴァイの期待は離された手と共に何処かへ行ってしまった。 「何故……」 追い縋る様な声を発したリヴァイは、引き倒されて仰向けになった。 「リヴァイの真似……」 ふふっと笑ったナマエは向きを変え、リヴァイの臍の辺りに舌を這わせた。ゾワリとした感覚に次いで、期待がドクッと脈打つ。 温かく柔らかい感触に、引き継がれた感覚は一気に駆ける。翻弄されている事にはやはり慣れず、リヴァイも近くにあったナマエの下肢へと手を伸ばした。 「なんだ……期待してるじゃねぇか……」 平静を装うリヴァイが意地悪く言えば、ナマエの動きが速まった。突き上げたい衝動を誤魔化す様に、リヴァイもナマエを刺激する。 (クソッ……もたねぇ……) こうなると、互いに耐えながら……事態は我慢というバトルの様相を呈する。最後の手段といったところか、リヴァイがナマエを引き寄せて吸い付いた。 これにはナマエも派手に仰け反り、リヴァイのモノから離れてしまった。 慌ててナマエも口に収めると、反撃と言わんばかりに深く沈めては、絡ませて吸い上げる。 そんな風にされては、リヴァイも流石に限界を感じながらも、小刻みに収縮を繰り返すナマエに追い討ちを掛けた。 「っはぁ……っ……」 「んぅ……んんっ……」 ……どうやら、このバトルは引き分けに終わった様だ。 ゴクリと喉を鳴らしたナマエが苦しそうに噎せている……リヴァイは近くにあったタオルで口元を拭ってやり、自分も拭いてから、引き寄せて抱えた。 (本当に……夢……なのか?) そこで、リヴァイは将と気付いた。 夢と書かれた福引の箱、『幸せな未来』と書かれた紙……これがその未来の夢なのかと。 (ならば、もう少しだけ) リヴァイは息の落ち着いたナマエを横たえ、続きがしたいと被さった。 何度も何度も……思う存分、もう無理だとリヴァイが思うまでそれは続き、抱き締めたまま目を閉じた。 (いい……夢だった) 遠退く意識に、起きれば全部夢だろうと思いつつ、ゆっくりゆっくりと沈んでいった。 ……が、しかし、目覚めたのは自室では無かった。 隣で眠るナマエ、窓の外には何も無い。そしてまた、求められて抱いている。腹も減らず、外に出る……いや、部屋からも出る事は無く、リヴァイはそれから何度眠っても……同じ事を繰り返した。 「いい加減、帰りてぇ……」 何故、こんな事になっているのか……どうしてナマエとこうしているのか、記憶も思い出も何も無い。そして、決まったように誘うだけの、中身の無いナマエを見ているのが、リヴァイは辛くなったのだ。 すると、何処からか声が聞こえて来た。 『お腹が空いて困る事も無い、襲われる心配も無い、気に入った女と二人きりで過ごしたい……最高に幸せな状態じゃないのかい?』 リヴァイは首を横に振った。 「これは、まやかしだろう? もう、充分だ」 クスクスと笑う声が近付き、リヴァイの前にひとりの女が姿を現した。 「お前は……」 「お兄さん、折角大当たり引いたのにね……帰りたいなんて聞いた事なかったのにな、勿体ないと思わないの?」 リヴァイを覗き込む様に見た女を、まっすぐに見たリヴァイが答える。 「思わねぇな……」 「もう、この夢は見れないよ?」 「あぁ、構わねぇ」 「じゃぁ、仕方ないな……本当に帰っちゃうの?」 「あぁ、幸せな気分だった……だが、俺は自分で手に入れたい」 フッと笑ったリヴァイに、女も笑った。 「きっと手に入れられるよ……」 その声と共にリヴァイは意識を手放した。 「俺の……部屋だな」 目を開けたリヴァイは、ゆっくりと起き上がり……辺りを見回した。 随分と長い時間を過ごした様に思ったが、部屋に埃が積もったりした様子は無かった。 時計は朝の9時だった。 着替えて通路へ出ると、リヴァイは食堂へと向かった。 「なぁ、今日は何日だ?」 「兵長……まさか、休みでボケ……」 「あぁ、どうやら寝過ぎたらしくてな……」 「今日は12月31日……今年最後の日ですね」 「そうか、そうだったな……」 確りして下さいよ……と、笑って去った兵士を見送ったリヴァイは、のんびりとコーヒーを飲んだ。 (あれは……夢だったんだよな) ナマエとは、昨日初めて会ったばかりだ。 だが、夢に出て来たのはナマエだった。 あれはきっと俺の願望を形にしたものだったのだろう……そう結論付けたリヴァイは、受け止めた時や宿で可愛いと思った事、本当はあのまま襲っちまいたいと思った事を思い出した。 (俺は……) その時、リヴァイの腹が空腹を訴えた。 思わず辺りを見回す程の音に苦笑しながらも、腹が減るという事に安堵の息を吐いた。 (夜はまた……あの店に飯を……いや、ナマエに会いに行こう) リヴァイは夕方になるのが待ちきれないといった様子で、1日を過ごした。 未だ何も知らない……ナマエはどんな風に笑い、どんなことを考え、どんな風に俺を見るのか…… いつか、あの夢の様に過ごす時が来るかも知れないが、それはきっと……もっと幸せな時間となる事だろう。 リヴァイは夕刻の広場の一角を見遣ると、クッと口角を上げた。 福引はもうやっていない。 だが……と、ポケットに残された紙をそっと握りしめ、ナマエの待つ酒場へと踵を返した。 『お兄さんなら、きっと本物を手に入れられるよ……』 慌てて振り向いたリヴァイだが、そこには誰も居ない。 そして、握っていた筈の……紙の感触がいつの間にか無くなっていた。 (あぁ……手に入れてみせる……) 今度はゆっくりと向きを変えて、リヴァイは真っ直ぐに歩き出した。 未来は、自分の手で……掴むのだと。 End [ *前 ]|[ 次# ] [ main ]|[ TOP ] |