夏休み〜side ナマエ〜


「あれぇ? 行き違っちゃったかな?」

我が家で、夏休みの間だけだけど、親戚の子を預かる事になった。駅から歩いて来ると聞いて、迎えに来たけど、顔を覚えていないのは致命的だった……

「おねーしゃん……」

スカートの裾を引っ張って、上目遣い……な、なに? この可愛さは……

「ん? どうしたのかなあ?」

私は屈んで目線を合わせてあげた。目の前の顔に、思わず見とれてしまった。

「まいごになた……ここにいきたい」

ココ……と、見せるから、更に顔を寄せて覗き込んだんだけど……

「あれ? これって……うちだわ」
「あ?」
「あーっ! リヴァイ君?」
「あぁ、そうだ……」

思わず、ラッキーだと叫びたくなった。5歳の男の子なんて、鼻タレのクソガキだと思っていた……

「……つかれた」

ぺたんと座り込んでしまったのを、抱き上げた。
ちっちゃくて可愛いくて……ぷにぷにで……キャーキャー騒いでしまった。

「ひとりで来たの?」
「あぁ、にもつわさきにとどいてゆていってた」
「そうなんだ。私はナマエ、宜しくね」
「ナマエ……おねーしゃん?」

首をかしげて見る姿……ナニコレ、天使か? 完全にやられた。

家に着くと、ちゃんと挨拶をしていた。意外としっかりしてるのね。

「おみあげ、はい」
「まぁ、ありがとうね」

母はイイ子だと頭を撫でまくっていた。
あ、ちょっと嬉しそうで……何故か腹が立った。

「おかーさーん、リヴァイ君の部屋はどうすんの」

台所から声だけ返ってきた。

「私の部屋? しょうがないなぁ……」

口ではそう言いながらも、内心「やった」と連呼して、荷物を持った。

「行こうか」
「あぁ……」

手を繋いで二階へ行った。
ちっちゃくて柔らかい手に、にやけてしまう。

部屋に入って……衝動が抑えられない私は、ベッドに座らせて……ウサギのぬいぐるみを持たせた。

「はい、これ持ってみてー!」
「……?」
「ぎゅーってしてみて?」

(あぁぁぁ……ダメっ萌え死ぬ……)

写真を撮りまくった。クマちゃんも持たせて……お着替えまでさせちゃった。

撮影会は1時間続いた……

「もぉ、ややっ!」

リヴァイ君はぬいぐるみを投げ、着せたゴスロリの服も脱ぎ捨てた。

「ごめんねっ、可愛いからつい……」
「オレわオトコだー!」

うわぁっと、座っている私の肩の辺りをポカポカと叩いている。ごめんねと……ぎゅっと抱き締めた。
ちょっと苦しかったのか、もがいているんだと思うんだけど……な、何か胸を揉まれている様な……?

「ん……」
「あれ? 眠くなっちゃったの?」

胸に寄りかかったまま、眠っちゃった。
抱っこしたまま、ベッドに寄りかかって……私も眠ってしまった。



何か胸を弄られている気がして起きると、寝ぼけたのか……リヴァイ君が撫でたりしていたので、しょうがない子ね……と、コツンと頭を叩いてみた。

「人の胸で遊ばないの!」

怒られたと思ったのか、今度は強く弄られて……な、何か変……?

「んっあっ……やんっ」
「……?!」

ちっちゃい子相手に……何だろう? もっとしてほしくなった。

(そ、それはまずいよ……)

あ、危ない大人にはなりたくない……

「もう、なにやってるのよ……」

起き上がった私は、誤魔化すように笑ったら……キスをされた。

(え? なに? わざとなのー?)

絶賛パニック中の私に、してやったりといった顔をしている。

母が、タイミング良くご飯だと呼んだ。

「お、お腹すいたね、行こうか」
「……あぁ」

早く部屋を出たくて歩き出したら、腰まである髪の毛を引っ張られた。

「いたた、どうしたの?」
「……くな」
「え?」
「おいていくな……」

しょうがないわね……と、笑って手を広げた。

「おいで、一緒に行こうね」

自分の言葉と一緒に、違う声が聞こえた気がした……

『早くおいでよ、リヴァイ! 一緒にーーの果てまで行こう……』
『あぁ、共に行こう』

ハッとして、リヴァイ君を受け止めて、抱き上げた。

(今のは一体、何だったの……?)

首を振っているリヴァイ君を見て、何か聞こえたのは私だけじゃないのかな?って思ったけど……何でもないと言われた。
そのまま、黙って下に降りた。




食事の後は……お風呂に入った。当然の様に……リヴァイ君が付いてきた……!
父は凄く残念そうたっだが、リヴァイ君は譲らなかった。

「あらってやゆ」
「え?」

タオルを奪われて、背中をこすって……ち、ちょっと待て……お尻はやらなくていいと怒った。

散々遊んで疲れたのか、リヴァイ君はお風呂から出たら、凄く眠そうにしていた。

「ナマエ……いっしょ……ねゆ……?」

パジャマの裾を引っ張ってベッドに連れていかれる。
なんだ、この半端ない可愛さは……

「しょうがないなぁ」
「ちなう、オレがいっしょ、ねてやゆんだからな……」

どう見ても、半分夢の中だよね?
でも、こういうところは、小さくても男の子なのかな……?

「そういうことにしてあげるよ。お休み、リヴァイ君」

ちゅ、と、おでこにキスをして、柔らかい感触と暖かさを抱き締めた。

「明日もいっぱい遊ぼうね……」
「ん……」



何だか大変な……夏休みは始まったばかりだ……

End



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