「なあなあ左ー門っ!」
「なんだなんだ?」


「左門、ちょっといいか」
「ああ、いいぞ!」


「委員会お疲れ左門!」
「ありがとうなっお前もお疲れ!」


ふう、と僕は息をついて忙しそうに動きまわる左門を黙って見つめた。
人気者の、彼。
常に傍には誰かがいて、いつも彼は笑っている。僕はそんな彼を黙って観察して、ジュンコたちと戯れる。それが日常。

「明るい奴だ…なあジュンコ」

耳元でしゅっ、と肯定の意が聞こえた。
僕は窓から目を逸らして机に突っ伏す。冷たい木の温もりを感じながら、ぼんやりジュンコと見つめあった。

「ねえジュンコ。今日はね、その彼が放課後に、生物委員会の仕事を手伝ってくれるっていう約束の日なんだ」

ゆったりと乾いた頭に触れると、ジュンコはくすぐったそうに目を細めた。釣られて僕も目を細めて木漏れ日の中でまどろむ。
心地の良い、けれど何かがもの足りない、暖かな時間。

「…でも彼はね、僕と違って忙しいから多分一緒には出来ないんだ」

冷たい風を感じて目を開けば仏頂面のジュンコ。ささいな変化さえも悟られていたらしく、顔色を伺わせて見つめてくる。
そんなに僕は分かりやすい表情をしていたのだろうか。

「…約束したのはずっと前だし、今は夜通しの会計が終わったばかりだから、疲れてるだろうし…まあいいんだ、別に」

静かにジュンコは僕の頬にすり寄ってくる。慰めてくれている気がして僕は笑みを浮かべた。
開け放たれた窓から気持ふわりと気持ちの良い風が吹く。
もう直ぐ、放課後。



まだ青い草木を掻き分けて目的の小屋へ向かう。首に寄りかかるジュンコは眠たいのか目を閉じていた。その姿を微笑ましく見つめながら、土を踏みしめて行くと網目ごしにざわざわとした生き物の息づきを感じた。
…きっと多分、少しだけ期待していた。彼は約束を覚えていて、遅いぞ!なんて笑ってくれるのだと。



小屋の薄戸を開けると、当然ながら彼の姿はなかった。
代わりにみんなが僕の登場を迎えて寄り付いてくる。
その静かさになんだかとても、泣きたくなった。

「あ、あ…分かってる。分かってる」

彼が居ないことぐらい。
彼が来ないとジュンコに話したのは誰だ?…僕だ。こうなることぐらい分かっていた筈なのに。今まではいつも一人だったんだ、何を残念がる必要がある。



約束だなっ!と笑顔を浮かべた彼の顔が頭に浮かんだ。




(僕はずっとその言葉に縛られている)



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企画「毒虫野郎と方向音痴」様に提出させて頂きました!
こういってはなんですが、左門は約束を破らない子だと信じています。


広がれ孫さもの輪!



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