※現パロ年齢操作、左門の女体化有




「伊賀崎くん、」

呼ばれて振り向くと、名前は覚えていないけれど確か同じクラスの女子が居た。
制服のチェックのスカートは明らかな校則違反の短さで、不自然な髪の色とうねりもきっと違反だろう。
顔はよく分からない。
どうでもいいと思いながら、僕はなに、と返した。

「2組の神崎さんと付き合ってるって本当?」

その質問に僕は顔をしかめた。
この質問を受けるのは初めてじゃない。
そのことが尚更僕を不快にさせる。

「付き合ってるけど、なに、」

眉をしかめたままそう言うと袖を掴まれた。
細い指のその爪はピンクと白で彩られていて、ラインストーンがキラキラと光る。
振りほどこうとする前に彼女の顔がぐっと僕に近付いた。

「私、伊賀崎くんが好きなの」

近付いた顔に、目尻まで見えるアイライン、それを縁取るマスカラ、ピンクでてかてかとされた唇がそう告げた。
その瞬間に僕の頭はふっと冷静になる。
彼女が言いたいことが言わずとも知れたからだ。
こんなやり取りは初めてじゃない。何度も繰り返したことがあるやり取りだ。

掴まれた袖にかかっている手を少し乱暴に振り払って、僕は彼女と距離を取った。

「悪いけど、僕には左門が居るから」


少し近付いただけの彼女の残り香が僕には不快だった。
きっとブランド物か何かの、香水の匂いだろう。それが僕には不快でしかなかった。

僕の答えを聞いた彼女の、表情が変化する。

その瞬間、僕にはよく分からなかった目の前に居る彼女の顔が初めて見えた気がした。
つり上がった眉から、大きく見せてる目に、鼻に、唇に。

あぁ、これは威嚇―――人間でいう怒りの表情だろう。

肩を怒らせてこちらを睨みつける彼女を無視して、僕は用はそれだけ?と返した。

「―――神崎さんなんて、伊賀崎くんに釣り合わないじゃない、」

僕に好きだと告げたピンクの唇は、声を怒りに震わせて、今度はそう告げた。











腕時計を見るとすでに時間は五時になろうとしていた。
生物室へと歩む足を急がせる。

生物室は、僕と左門が待ち合わせしている場所だ。
あそこはとても居心地が良い。
僕が家で飼えない生物は全部あそこで飼っていて、放課後に左門と僕で世話をする。

程なく着いた生物室の扉を、くだらない用事で遅くなったと思いながら開けると、見えたのは左門の小さな背中だった。


「―――左門、」

呼び掛けても返事はない。
近付くと、左門は机にうつ伏せになり寝ているようだった。
下になっている腕の隙間から見えるのは穏やかな寝顔と、小さな寝息が聞こえる。

その様子に何だかほっとして、僕は左門を後ろから抱き締めた。

本人も気にしているけれど小さな左門は、やっぱり僕の腕の中に簡単におさまってしまう程小さい。
そのまま首筋に顔を埋める。
香水の匂いも化粧品の匂いもしなくて、ただ左門が使っているシャンプーの匂いがした。


「―――ん、まごへーか…?」

身じろぐ気配がして僕の耳元で起き上がったらしい左門の寝惚けたような声がする。
顔を動かせば案外近くに左門の顔があった。

「すまない―――孫兵を待っていたら眠ってしまった」

目を擦りながら言う左門の、顔が至近距離ではっきり見える。
彼女の顔は近付いてもあまりよく分からなかったのに、左門の顔ははっきりと分かった。
ちょっと太めの眉も、くりくりとした目も、ちっちゃいけれど高い鼻も、大きめな口も、全部僕が好きなものだ。


「孫兵…どうかしたのか?」

訝る左門が下からこちらを覗き込む。
その仕草に先ほどの不快な出来事を思い出して、僕は左門の体へ回している腕に力を込めた。


「人間なんて―――嫌いだ、」



僕は昔から人間が大嫌いだ。
何にでも優劣をつけて、誰かを卑下し陥れたり騙し合うのが得意な、人間が。

頼まれてもいないのに、勝手に僕と左門が釣り合わないと決めつけて、左門を悪く言い私を見ろとばかりに言ってくる。

その度に僕はお前に何が分かると叫びそうになる。
醜い人間の癖に、
外面ばかりにかまけて、他人を陥れることばかり考えて、


悪い癖だとは思いながら僕の思考がぐるぐる回り始めたとき、僕の腕を左門がぎゅっと掴んだ。
視線を落とすと、さっき僕の袖を掴んだ手とは違う、それより一回り小さな、綺麗に切り揃えられた爪の手だった。

「―――でもな、私は、」

手から、落としていた視線をあげれば左門が笑っていた。
口を大きく開けてからからと。


「孫兵の人間嫌いなところも全部ひっくるめて好きだぞ!」

何もかも吹き飛ばすようなその笑顔に、僕は更に力を込めて左門を抱き締める。
痛いぞ孫兵!と言う声も無視して、大きな器を持っているその小さな体を抱き締めて、耳元に唇を寄せ、僕も好き、とそう――――呟いた。


(好きにならないでいい、嫌いなままでも良いと言ってくれるのは、きっと君の優しさ)

僕が言った途端に真っ赤になって腕の中で大人しくなる体が愛しくなって、今度はキスを贈った。


人間嫌いの僕だけれど、そんな僕を包み込んで愛してくれる君が、どうしようもなく好き、です。



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