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何とか鷹嗣を立たせた豹呀さんが頭を掻きながら帰ってきた。
お疲れ様です。
「くそっ、このままじゃいきなり生徒会にリードされるかもしれねぇな」
「それは困るな」
フィールドに立ったけど全くやる気が無いな。
いきなり生徒会に1位取られんのは確かにヤバイ。
鷹嗣は足早いしやる気にさえなってくれりゃ清隆寺相手でも勝てそうなのに…!
「奥の手に取ってたけど…仕方ねぇか」
ぶつぶつ呟いて豹呀先輩はジャージのポケットから取り出した紙を俺に渡した。
「汰狼、意味とか何も考えんな。ただその紙に書いた言葉を全力で叫べ。お前の声が鷹嗣に届いたら…勝てる!」
しっかりと俺に紙を握らせて真剣な表情で見つめてくる。
もしかして、鷹嗣への声援が書いてんのか?
確かに俺に懐いてる鷹嗣なら俺の声援に反応するかもしんねぇ。
「分かったっす。頑張ります!」
「汰狼、お前にかかってんだからなっ」
「それを叫ぶだけで良いぞっ」
2年の先輩達に期待されたら断るなんて出来ねぇよ。
実熊さんが心配そうに見てるけど声を出すぐらいなら俺にも出来る。
紙を開いて言われた通り叫べ俺!
「鷹嗣ーっ!1位になれたらご褒美にキスしてやるからなーっ!って、はぁぁぁあっ!?」
『おぉーっとぉっ!!ここで剣道部から熱烈なエールだぁっ!これはもしかして恋人からのラブコールなのかなぁっ!?』
「はいっ!汰狼君と僕はマジで結婚秒読みですぅっ!!ハニーっ!頑張るでぇぇっ!!」
「嘘つくんじゃねぇぇぇっ!!」
何で先輩達が意味を考えんなって念を押したのかよく分かった。
こんな内容だったら叫んでねぇよっ!
さっきまで煩かった声援が違う意味で煩くなってきた。
先生の控え席で虎威先生暴れてるし。
あああ、久し振りに胃が痛ぇっ!
「汰狼、お前の尊い犠牲は忘れねぇからな」
「豹呀さん…」
すんげぇ良い笑顔で言われても…。
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mokuji]