声に乗せて | ナノ
全ての始まり

 



今日は第三金曜日
俺が総長に就任して初めての集会だ


そんな大切な日にも関わらず、今日は初代に呼ばれて何処ぞのクラブに来ている
呼び出した内容も伝えずにただ『来い』とだけ伝えられた
代替わりをしてもあの人の横暴な性格は変わらねぇ


入り口で貰ったドリンク券を瓶ビールに換えてホールの隅に佇む
辺りを観察していると明らかに男の方が多い
それもクラブに集まるような派手じゃない奴もいる
いつもなら俺に群がってくるような男や女は居ない
ただ、皆同じように前の暗幕を見つめている


あの人は一体何する気だ…



そう思った矢先に室内が暗くなり耳が潰れるかと思う程の歓声
異様な光景に眉間に皺を刻み閉じていた暗幕が開いた先に視線を向けた

俺を呼び出した張本人とその側近達
ライトを当てられ初代が観客を煽る
歓声の中、各々にステージにいる人物の名前を叫んでいる
その時、聞き慣れない呼び名に違和感を感じた

正直、代替わりをしても未だ初代達は絶大的な指示率を持つ
俺がまだガキなのもあるかもしれないがそれを抜きにしても初代達のカリスマ性は凄い
自然と人を惹き付ける魅力がある
そんな人達を差し置いて繰り返し呼ばれ求められる存在
俺はその人物を探したが見当たらない
疑問からそれは好奇心に変わった
『姫』と呼ばれる存在はどんな人物なのか




ライトの色が変わると今度は一斉に静まり返るホール
室内に響き渡るのはギターにベース、ドラムが奏でるメロディ

そして、其処に存在していない人物の歌声


高く透き通るようなその声は
姿が無い事も疑問に感じない程の存在感があって
無理矢理耳に入り込むのではなく鼓膜が自然と求める程心地好い声だった
心に届く歌声
俺は此処まで聴き入る程の歌声を知らない








気付いた時には持っていた瓶を床に落とし歌声に聴き入っていた


「姫……」





姿が分からない『姫』に俺は心を奪われた





 


[*prev] [next#]
[mokuji]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -