SSS置き場 | ナノ


 朔楽と山吹と弾と楠瀬と舞

 昼休み、いつものように昼寝をしている楠瀬くんの横で、特にすることもなく適当にスマホをいじっていたら、ふとトランペットの音が聞こえて、ふと顔を上げる。梓くんだった。
 もしかして、今日の合奏は1stを梓くんが担当するんだろうか。トランペットパートでは毎日1stが違うのは日常茶飯事らしい。うわさによると、じゃんけんで決めてるとか、なんとか。

 梓くんのイントロが終わると、それにつなげる形で茅ヶ崎くんがアルトサックスでメロディを吹き始める。……このアルトサックスソロの後のAメロにはフルートが途中で入るんだけど、ちょっと入りたい……でも……と悩んでいたら、隣からフルートの音が聞こえて、危うく変な声が出るところだった。
 音の主はいつの間にか起きていた楠瀬くん。梓くんは僕と同じくかなりびっくりした様子だったけど、茅ヶ崎くんは特に動じる様子もなくメロディを奏でていた。……あ、楠瀬くんはホルンだけど、中学生の時はフルートだったらしい。

 かと思えば今度はクラベスの音が聞こえて梓くんと僕はまたびっくりするはめに。とっさに音が聞こえたほうに目をやると、菊池先輩だった。僕の視線に気付いた菊池先輩が、にやりと笑う。

 少し悩んで、僕もピッコロで混ざることにする。吹奏楽部で時々自然発生する、こういうプチ合奏みたいなのは、飛び込むのに勇気がいるけど、嫌いじゃない。
 梓くんも悩んでる様子だったけど、サビの前からまた入り始める。サビの前のウィンドチャイムと、時々聞こえる菊池先輩の鈴の音がよりいっそう和の雰囲気を醸し出してくれて、心地いい。

 ところどころ、メロディを担当する楽器がいないところは茅ヶ崎くんがメロディを吹いてつなげて、しんと静まり返ったら僕の出番、ピッコロソロ。そして梓くんにメロディがつながる。

 そしてエンディングを迎えたら、ぱちぱちとまばらな拍手が聞こえた。

「僕もハープで混ざりたかったなぁ」
「俺もー! ドラムやりたかったー!」
「残念でしたー」





「劇場版 名探偵コナン から紅の恋歌」より「渡月橋 〜君 想ふ〜」

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