「ねぇドラコ、箒乗せて!」

「は?」


また始まった。First nameの唐突なお願い。こいつ、目がおかしいんじゃないのか。それか頭。どこからどう見ても僕は今課題をやっていて箒どころではない。だというのにこいつは笑顔で「箒乗せて」などと抜かしやがった。



「僕がそんな暇に見えるか」

「私が退屈じゃなさそうに見える?」


ため息混じりに訊ねれば、質問で返してくるFirst name。たまったものじゃない。何がたまったものじゃないって、おねだりするときはいつも僕の隣に来て擦り寄ってくるんだ。そんなことされたら断れるわけないだろ(無駄に密着してくるから当たってるんだよ!)。


はあ、とため息をついたらそれを了承だと受け取ったらしく、たちまち嬉しそうな笑顔ではい、と僕の箒を差し出してきた。準備がよすぎる行動に、また一つため息をつく。


「ちょっとだけだからな」

「ええー」

「拗ねたって僕は聞かないぞ」


至極つまらなそうに口を尖らすFirst nameにそれだけ言って、校庭へ向かう。課題で忙しい中乗せてやるだけでも感謝してほしい。


「ちゃんと掴まれよ」

「わあっ!ちょ、ドラコ待って待って!」


First nameがちゃんと乗ったかどうかも確認せずに勢いよく地面を蹴った。いつもFirst nameがしっかり抱きついてくるものだから、まあなんというかその、よこしまな感情が沸いてくる前に、と思って急いで飛び始めたのだが、どうやら失敗だったようだ。いきなりのことに驚いたらしいFirst nameが思いきり僕にしがみついてきて、結局はいつもどおり理性と闘うことになってしまった。


「もうドラコ、びっくりするじゃない!」

「うわっ」

「…うわ、って何よ」

「いきなり耳元で叫ぶなよ!」


というか、耳にかかるお前の息がくすぐったいんだよ!もしかしてこいつ、全部わざとなんじゃないのか。なんだか無性に腹が立ってきて、恐がらせてやろうと思ってさらにスピードを上げたのに、First nameは呑気に「はやーい」などと喜んでいた。くそ、こんなの僕ばかりいいように振り回されてるだけじゃないか!



「…ココア飲みたいな」

「は?」

「ココア飲みたい。ねードラコ、厨房行こ」

「な…!First nameが箒乗りたいって、」

「まあいいからいいから。厨房行こうよー」

「(こいつ…!)」


殴ってやろうか!でも怒りに任せて勢いよく振り向いたら幸せそうに笑っているFirst nameと視線がぶつかって、その怒りも尻すぼみになって風に攫われていった。いつもいつも突拍子もないことを頼まれて、でも結局は断れないから僕も困ったものだ。


「…今日だけだからな」

「やった!」


でもやっぱりムカつくから、ココアはもう少しだけ遊覧飛行デートを楽しませてもらってからにしよう。








‐‐‐‐‐‐‐‐
「拝啓」のあおいさんから頂きました!!振り回されるドラコ最高です(^q^)2人とも可愛くてみててすごくデレデレしちゃいました…!あおいさんのお話大好きです^^本当に素敵な相互記念ありがとうございました!これからも宜しくお願いします^^


「#年下攻め」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -