眠れない!眠れない!
こないだロンが言った有り得ない事に少し頭を悩ませた時もあったけど、今はこの目の前の宿題が終わらない=眠れない!
どんなにうめいてみても着々と時間は進んでいくし、朝日が差し込んできそうな窓が憎い…!
「あ、朝が……」
とうとうきてしまった太陽を睨みながら、一向に終わる気配のない魔法薬学の宿題を見た。何故たった一問の問題に夜から取りかかり、朝までかかっているのだろう。
溜め息をつきながら、とりあえず着替えて大広間に向かうことにした。頭使いすぎてお腹ペコペコだ。
お腹をさすりながら廊下を歩いていると、前方に私を朝まで悩ませた宿題を出させた張本人が悠々と歩いてきていた。
睨んでしまおうかと思ったけど、相手にするのはよそう。絶対良い事無いって嫌というほど体験したし。
「おい、先生に挨拶も無しとは、礼儀も知らないのか?」
あともう一歩。
そうすればこのバカ教師の横を通り抜けてダッシュ出来たのに…!
呼び止められた方へ振り返れば、人を馬鹿にした顔でこちらを見ていた。
「おはようございますさようなら!」
「おい、待て!」
走り出そうとしたその瞬間に腕を掴まれ、思わず平手打ちをあの青白い頬にくらわせていた。パチンと鳴り響いた後の沈黙が痛い…。
「あー…あのですね…」
「………。」
「私、男の人に触られるのとかゾワッてするんです。激しく遠慮なんです。」
「…へぇ。とりあえず、さっきぶった所をさすれば許してやる。」
「人の話聞く気ないだろ。触るのもイヤなんです。セクハラで訴えますよ。」
「お前の男嫌いを僕が治してあげるだけさ。」
「は!?」
「魔法薬学も勉強出来て、男嫌いも治る。素敵な居残りだな」
な、なに言ってるんだこの男は…!しかもなんか居残り確定!みたいな言い方してるし。じょ、冗談じゃないわ!
馬鹿にしないでよ、ね!
「なんで居残り決定なの!?ありえない!」
「ありえないってお前…どうせ宿題終わってないだろう?」
「うっ……」
(不器用な僕等は素直になれないまま少しずつ歩き出す)
03.end