10分。
僕が真顔でお前を待った時間。きっともう少しで来るはずだ。



30分。
僕の眉が少し寄り始めながら、お前を待った時間。きっと寝坊したんだろ。あと1分ぐらいしたら来るさ。



59分。
とりあえず我慢の限界だ。




「セーッフ!!!ドラコ、おはよう!」

「どこがセーフだ!!待ち合わせに1時間も遅れてくるなんてお前はどんだけ馬鹿なんだ!!」



彼女の両ほっぺをつねりながら怒ると、へにゃりと笑い再度“おはよう”と言ってきた。ったく、笑ってれば全て許されると思うなよホント。



「にしてもちゃんと約束守ってくれてるんだね。」

「…ふん。約束は守らないといけませんと母上に言われたからな。」



そう、有り得ない事に試験でコイツに負けてしまったのだ。コイツ一応頭は良いかもしれないが…、

チラッと横を見て再度思った。



コイツは只の馬鹿だ。




何でも言うことを聞いてやると言ったのに「毎朝私を迎えに来て一緒にご飯食べれたらそれでいいよ」だけなんて拍子抜けもいいところだ。もっと他に
「宿題をやれ」とか「語尾にフォイを付けて喋れ」とか「私と付き合って」なんかがくると思ったのに。馬鹿は欲が無いらしい。



「今日はカボチャジュース飲み過ぎるなよ」


「だって美味しいよアレ」


「この間必死の形相で僕にお腹さすって下さいって言ってきた馬鹿は誰だろうな。」


「ドラコなら治せると思って。」


「はあ…、とりあえず飲み過ぎるなよ。」



溜め息を付けば、斜め後ろから嬉しそうな声で「10杯までにしとくね」なんて聞こえてきた。全然分かってないだろ。




「あっ!パンジー!!」


「あらFirst name…とドラコ?」


「聞いて!聞いて!これからドラコが毎朝迎えに来てくれることになったんだよー!」


「何ですって!?」



キッとした視線を感じ、渋々そちらの方に顔を向けると、やはりパーキンソンがこちらを睨んでいた。



「First name、先に食べてろ。後ですぐ行く。」

「はーい。」



去っていくFirst nameはスキップをしながら大広間に入っていった。僕が他の女と2人っきりで話すのは意外と気にしないらしい。嫉妬とかしないのかアイツは。
First nameの姿が見えなくなってから、パーキンソンにもう一度目をやると、少し涙目でずっとこちらを見ていた。




「…アナタどれだけFirst nameの事が好きなの。」

「パーキンソン何を言ってるんだ?」

「さっきもずっとFirst nameを目で追って、First nameにしか見せないような顔をしたり……」

「落ち着け、パーキンソン。僕がアイツを好きなんじゃなくて、アイツが僕の事を好きなんだぞ。」


「嘘よ!!」


いや、まて。嘘じゃない!
なんで僕がアイツを好きな設定なんだ。違うだろ。アイツが僕を好きで、それで、告白でもしてきたら付き合ってやらないこともないという僕が優位な立場なハズだ!



「誤解だ。………まあ最近考える事といえばFirst nameの事だが(あの馬鹿さは天然記念物レベルだ)。」

「……。」


「しかも、アイツが側に居ないと落ち着かない(また変な事でもやらかしてるんじゃないかと不安になるからな)。」

「……。」

「ああ、でもそう思うのが既に日常化しているからあまり気にしていない。だから安心してくれ。けして僕がアイツの事を好きなわけじゃ…………ん?どうしたんだパーキンソン?」


「…………。」








(僕がアイツに恋してるだと!?)

(無自覚って恐ろしいわ…)




06_end.
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