馬鹿女の事だから、行方不明でもどうせひょこっと現れるんだろう。そう思っていたのに廊下ですれ違ったハッフルパフ寮生が「First name、ずっと帰ってこないね。」「先生は心配無いって言ってたけど心配だよね。本当に行方不明だったら…」なんて会話をするもんだから嫌でも頭の中は最悪な状況を考えてしまう。



アイツ馬鹿だから、変な事に巻き込まれたんじゃないか?それで、自分が危険な目にあってるのも気付かないで馬鹿な事をして……ああああ!!!僕らしくない!なんで僕がアイツの心配なんかしなくちゃいけないんだ!そうだ、僕は清々してるんだ。やっと五月蝿い馬鹿女に振り回されなくて済むんだから。

そう何回も自分自身に言い聞かすのに気がつけば頭の中はあの馬鹿女の事ばっかりだ。


「パーキンソン、僕は医務室に行ってくるから先に授業に行ってろ。」

「…わかったわ。」


少し不機嫌そうに返事して、絡んでいた腕を放したパーキンソン。目線を合わせれば“いかないで”と言われているようだったが気づかないフリをして医務室に向かう。


今はアイツの事でいっぱいな頭で授業なんか受けれるわけがない。どこに行ったんだ、あの馬鹿は。


「らんらんるーっ、秘密のお手伝いはっ楽しいなあー」


聞き覚えのある声に急いで顔をあげると、曲がり角を曲がる見慣れたアイツの後ろ姿があった。ちょ!なんで居るんだ!!
急いで追い掛けるが、僕の目の前で爽快なスキップをしながらどんどん離れていく。「まて!」そう言いたいのに今は追い掛ける事しか頭に無くて、 目の前にアイツが居ることが嬉しくて、無我夢中で走った。


「…はぁ…はぁ…馬鹿女…今此処に入ったよな……」


目の前に見える禁じられた森に足がすくむ。正直すごく近寄りたくない場所だ。嫌な思い出しかない。けど、アイツを追い掛けたい。そう思う感情の方が強くて、彼女を追い掛けた。


相変わらず薄暗くて気味の悪い場所だ。こんな所で何やってんだアイツは。
そう思いながら辺りを見渡したら、遠くを見ているあの馬鹿女を見つけた。ここまで僕を走らせたんだ…驚かしてやる!


そろり、そろりと近づき、彼女を後ろから抱き締めようとした。


「あ、見つけた!」

「お、おい!!うわぁあああ」


いきなりしゃがみこんだ馬鹿のせいで、僕は抱きしめる標的を無くし、体が前に急降下していく。しかもここ崖じゃないかぁあああ!!!!


「ウィンガーディアム・レヴィオーサ」


落ちていくばかりと思っていた体はぷかぷかと宙を浮き、目の前で杖を向けている馬鹿女は嬉しそうに目を輝かせていた。

「ドラコだ!何やってんの?」

「関係ないだろ…」

「言わないと落とすよ?」

「お前を捜してたんだ!!さっさと僕を地面におろせ!」


僕の言葉を聞いたアイツは更にうれしそうに微笑んで、僕を地面の近くに移動させた。


「おい、待て」

「なに?」

「あと一歩の所なのになんで止めるんだ。」

「私の手に捕まるふぉい!」


僕に手を伸ばし、輝かせる目は確実にこの現状を楽しんでる。というよりその言葉を使いたかっただけだろう!!僕はお前の中でまだそのブームが続いていたのに驚きだ。


「誰が捕まるか。早くおろせ」

「照れ屋さんなんだから」

頬を膨らませて拗ねた彼女は、僕を地面におろすと「久々に会ったのにそんな冷たい態度は傷つくなぁー」なんて言いながら近くの石を蹴っていた。そんな様子が懐かしくて、つい口元が緩む。


「First name。」


名前を呼ぶと、さっきまで拗ねたいた表情が一変して目を大きく開いてこっちを見てきた。おい、口まで開いてるぞ、だらしないなあ。その間抜け顔を写真に撮って部屋に飾りたいぐらいだ。


「…な、んで…」

「前に言ってた質問の答え。名前だろ?お前も僕に名前を呼んでもらいたいなら素直にそう言えばいいの…」

「ドラコってやっぱり変態なのね!!!」

「は?」

僕の言葉を遮ったデカい声に今度はこちらが目を大きく開いてしまった。なんて言った?この馬鹿女は


「なんでいきなりそういう話になるんだ!!!」

「質問の答えは合ってるけど、私ドラコに名前教えてないもん!教える前に知ってるなんて、ドラコの場合のみ変態だわ!」









「なんで僕の時だけ変態になるなんだ!おかしいだろう!しかもここは少し甘い展開に」


“なるはずだろう!”そう言おうとしたけど、そっぽを向いてる彼女の頬が赤くなっていたのを見て言葉が止まった。

(なんだ、意外と素直じゃないか。)


もう一度彼女の名前を呼んで、ぎゅっと後ろから抱き締めた。


「…行方不明とかじゃなくて安心した。」


耳まで赤くした彼女の反応に、やっぱりコイツは僕の事が好きなんだと、そう思った。





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