「ドッラドラにしてあげる〜♪世界中の誰だれより〜♪」
前の事を思い出し、嬉しくて、ついつい鼻歌を歌いながら廊下を歩いていたら、前方からしかめっ面の君が見えた。
「不愉快だ。やめろ」
近付いてくるドラコについつい嬉しくなって頬が緩む。すると呆れた顔をした君がため息をつくように口を開いた。
「こんな所で何してるんだ。」
「迷子してる。」
「は?」
「迷子。」
嘘はついてない。本当に迷っちゃったし。完璧に道を覚えたつもりだったのになあ、ちょっと悔しいかも。
するとドラコは私のフードを引っ張りながらスタスタ歩き始めた。ちょ!首!首絞まる!!!
「え、ちょ、変な所掴まないでよ!」
「ハッフルパフの寮まで送ってやる。」
「ドラちゃん…」
「その呼び方はやめろ。」
優しさに感動する気持ちに浸る間もなく、私のフードから手を放し前を歩き出すドラコの後を追いかける。
「ドラちゃん待って!」
「…。」
「ちょ、待ってってば!」
「…。」
「ドラコ!!」
「なんだよ!」
名前を呼んで振り返った君が好きで好きで、どうしよう。こんなにも嬉しくなるのはきっとこの先もずっと君だけなんだって思えるよ。
「本当はね、このクッキーを渡そうと思ってここまで来たんだけどね、全然会えなくて迷子になってたの。」
「普通ここまで来ないだろう。」
「すぐに渡したくて。」
パンジーに焼きたてを食べてもらいたいのと、ドラコに会いたかったっていう下心もあってね。本当に会えるとは思わなかったけど
「本当に馬鹿だな。」
「けど、結局会えなかったから、優しくしてくれたドラコにこれあげる!」
「仕方ないから食べてや…」
ドラコの動作が止まり、いぶかしげな顔で私を見てくる。あれ、私変な事言ったっけ?
「…いや、普通に会えただろう?」
「え、いつ?」
「今。」
「今…?」
今目の前に居るのはドラコで、
けしてパンジーではないわけで、
ドラコ…頭おかしくなった?
「お前は僕に会いに来たんだろう?」
え、ちょっと待って
もしかしてドラコ………
「私、パンジーに会いに来たんだけど。」
口に手を当てて必死に笑いをこらえる私に、顔を真っ赤にする君の姿が留めをさしそうになる。
「笑うな!!」
「いだっ!!!い、今頭ぶったわね!?」
「お前が笑うのが悪い」
「だって相変わらず自信過剰なんだもん」
とうとう笑いが堪えきれず笑い出すと私の頭を再度叩き、手に持ってたクッキーを奪って早歩きで歩き出すドラコ。
「僕は自分の寮に帰る!」
「あ、待ってよ。最後まで送っていって。」
「無理だ!」
「照れ屋さんなんだからー」
「照れてない!」
確実にあなたの虜なのは私なのでした
(ちゃんと送ってくれる君ににやけ顔がとまらない)