好きなのに、彼には彼女がいて。

好きなのに好きな人の幸せを願えない私は最低なのかな。





青空がとても綺麗な今日。季節は夏。

私は社会の点数が赤点だったためクーラーでキンキンに冷えた教室で補習を受けていた。

外との温度差で風邪引きそうだなぁ。 私は補習なんて真面目に受ける気なんかなくて、ふと視線を校庭に移すとそこには、暑そうにラケットを持って立っている彼がいた。


あぁ、好き、好き。この願いがあなたに届くといいな。


柳くんの全てが好き。本を読むしぐさも、テニスをして頑張っているところも。全部全部。

幸村にそのことを言ったら、「蓮ニと喋ったことないのによく人を好きなれるね」なんて嫌味っぽく言われた。

惚れてしまったのだからしょうがない。どうしようも無いよ。私が言うと幸村は黙ってしまったのだか。

はじめて彼と会ったときに私は彼に愛されたいと思った。隣にいる彼女のように、私もみてほしい。そう心から思った。

でも、私は柳くんが幸せならそれでいい。私は幸せな2人を壊したいなんて思わない。

彼の笑っていられる場所は私の隣じゃなくて彼女の場所なのだから。どうかこのままずっと、幸せに。






あなたをみれるなら、補習も悪くないかも知れない。

パコーン、パコーンとボールが跳ねる音が蝉の鳴き声と一緒に私の鼓膜を刺激する。授業なんか聞いていられない。





………

……




速いことで季節は夏も終わり、秋になった。

私は相変わらずの毎日を送っていた。中学2年ももうすぐ終わるなぁなんて考えてる私は気が早い。

そういえば、柳くんは彼女と別れてしまったらしい。そう噂で聞いた。理由は、柳くんが部活動に専念しすぎて彼女の相手が疎かになってしまったから…らしい。

詳しいことは知らない。他にも理由はあるのだろう。それは、本人たちにしか分かり得ないことである。

…あんなに幸せそうだったのに。もう柳くんが彼女に微笑むあの顔がみれないのかと思うとなんだか寂しくなった。





「今度は自分が彼女になろうとか思わないわけ?」





幸村が言う。速く部活に行けばいいのに。私の相手なんかしないでさ。


「私、柳くんに愛されてる自分が想像できないの」

「なにそれ?」


意味わかんなーい。そう言って彼は背伸びしながら椅子の背もたれに寄りかかる。

私もあんたが部活に行かない理由が意味わかんなーい。そう言ってやりたかったけど止めた。殺される。


「好きなら好きって蓮二に言えば良くない?なんでめんどくさい方めんどくさい方に行こうとするのかなお前も蓮二も」

「は?」

「ふふ、ねぇ、面白い話してあげようか?あるところに〜」

「聴くなんて言ってない」

「あるところに計算高い男がいました。計算高い彼には彼女がいます。そして、2人を羨む女がいました。羨む女は2人をみているだけで満足できる変な女でした」


「……」


「ある夏の暑い日。計算高い男は、彼女がいるのにも関わらず、教室で補習を受けているある女に一目惚れしました。

ですが、一目惚れした彼女とは言葉を交わしたこともありません。それに、男に彼女がいます。

でも男は計算高い男なので彼女と別れるまでの行程も計算していたのです。…あぁ、なんて、馬鹿なんだろうね君たち」





「…う、嘘だ」

「嘘じゃないよ。本当は黙っておこうかと思ったけどそれもなんか癪だし」

「……」

「…なんで泣くわけ?「私、柳くんに愛されてる自分が想像できないの!」って言ってたのに」





「分かんない。嬉しいんだと思う」

「ふーん、じゃあ俺は部活に行くね。ついでに蓮二も呼んでくる」

「えぇ!」

「めんどくさいよ君たち。ちゃっちゃとくっつけや!じゃあね〜」






その後私が方針状態でいると慌てた様子で教室に柳くんが入ってきて、私が泣いてるのを何も聞かずに慰めてくれて、お互いにはじめましての挨拶をしてメアドを交換しました。





恋の始まり。



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